みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は、東京光学のフィルムカメラ、トプコン35-S(TOPCON 35-S)を紹介します。
トプコン35-Sは、レンズが固定された、レンズシャッターの連動距離計カメラ(レンジファインダーカメラ)です。
Contents
TOPCON 35-S
TOPCON 35-S 外観とスペック
レンズ:Topcor 4.4cm F2
シャッター:SEIKOSHA-MX B、1秒~1/500秒
巻き上げ:レバーによる2回巻き上げ
露出計:なし
カウンター:逆算式 手動リセット
フォーカシング:連動距離計内蔵
ファインダー:アルバダ式ブライトフレーム パララックス自動補正
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1956年
発売時価格:33,200円(革ケース付)
製造元:東京光学
参考資料:『アサヒカメラ1956年8月号広告』(『昭和10~40年 広告にみる国産カメラの歴史』1994年、朝日新聞社、p.256より)
トプコン35-Sとは
Topcon 35-Sは昔のクラシックカメラブームのときから非常に評価が高かったらしいのですが、少し触っただけで本当にいいカメラだとわかりました。
レンズはトプコール(Topcor)の4.4cm F2。
ライカスクリューマウント用のトプコール5cmをもとに設計されたということがいわれているレンズですが、本当にものすごく写ります。
トプコン35-Sの作例
まずは、実際に撮影した写真を見ていきます。
使用フィルムは富士フイルムの業務用100です。
※製造中止のためプレミアがついていることがありますが、中身はフジカラー100と同じです。
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まず、いつも撮影している河川敷で撮影したものから。
いやー、本当にいい写りです。
冬の空気みたいなものがよく写し取れていると思います。
撮れば撮っただけ、いい感じの写真が撮れてしまうカメラという感じで、
そして、距離計がきちんと信頼できるというのがうれしい。
被写体まで近寄って、絞りを開き気味のときでも距離計のとおりにピントを合わせたらピントが合っているというのは、1950年代のカメラとしては偉大です。
あとでファインダーの中身について触れますけど、本当にお金の掛かっているファインダーで、距離計はとても合わせやすいです。
こちらは、板橋区立郷土資料館で開催されている、板橋と光学Vol.3に行ったとき、道中で撮影したカット。
わたしが行った日はあまり天候がよくなかったのですけど、それでもいい感じの写真が撮れました。
この紅葉のカットとか、開放のときのボケの感じがよくわかると思います。
本当によいレンズを積んだカメラです。
トプコン35-Sは。
トプコン35-Sの機構面について
さて、次にメカ的なところなんですけど、
わたしのトプコン35-Sは、いつもの通りジャンク品を買ってきて、自分で直したものでした。
カニ目に盛大にキズがついていたり、アタリがあったり、アクセサリーシューのネジがなかったので適当な代用品を使っていたり、見た目は悪いのですがレンズが非常にきれいだったので、これはいけると思って買ってきました。
特大のファインダープリズム
そのときにトップカバーを外したんですけど、見てください、この大きなファインダープリズム。
トプコン35-Sは、等倍の見やすいファインダーで有名ですが、このプリズムを見て、なるほど、お金がかかっているとはこういうことか、とわかりました。
もちろん、距離計の調整もやりやすかったです。
そして、1956年のカメラとしては先進的な、ブライトフレームのパララックス自動補正もあります。
このファインダー、非常に見やすくて、驚くことにアイポイントをかなり離れても見えるんですよ。
しかも、かなり斜めまで傾けても、ブライトフレームの外側が見える。
本当にオーバースペックなファインダーです。
クラシックカメラ選書の『トプコンカメラの歴史』でトプコンは営業力が弱かったので他メーカーに勝てなかったということが書いてありましたけど、たしかにこれは、営業的なことを考えていたらできない設計だよな、と思いました。
巻き上げの感触が最高
巻き上げはレバー巻き上げで、これも感触がとても評判が良いです。
ジャリジャリしたりカリカリしたところが一切ないんですよ、この巻き上げ。
巻き上げは、レバーの2回巻き上げです。
以前このチャンネルで取り上げたネオカ2Sも2回巻き上げでしたけど、レンズシャッターのカメラ、本来なら2回巻き上げにしたほうが、設計上無理がないのかもしれないですね。
チャージレバーが飛び出ている
ネオカ2Sと同じく、レンズシャッターの横に、チャージレバーが飛び出ていて動いているのが見えます。
ただ、このチャージレバーは注意が必要で、カメラを下から支えるように持ったとき、一眼レフのように鏡筒を掴んでしまうと指に当たってしまうことがあります。
↑こうやって持つとチャージレバーが指に当たってしまう。
この写真は、今回撮影のとき指が当たってシャッター速度が遅くなってしまうミスをしたカットです。
↑指に当たるミスをしたカット
ボディが軽量だったネオカ2Sでは気にならなかったんですけど、トプコン35-Sは作りが良くてボディが重いので、一眼レフみたいな持ち方をしたくなっちゃうんですよね。
ピントノブの位置
もうひとつ、これは些細な点なんですけど、ピントノブを無限遠にしたときにファインダー窓の真下に来るので、ファインダー窓に指紋の跡をつけてしまいがちです。
ピントノブの位置と回転方向、反対じゃだめだったのかなぁ、と思います。
名機中の名機
でも全体的に、このトプコン35-Sは国産のレンズシャッター機のなかでは、名機中の名機だと思います。
評価の高い機種が、なぜ評価が高いのか、ということを、実際に触ってみて理解することができた気がします。
まとめ
というわけで、東京光学のトプコン35-Sについて話してきました。
東京光学、トプコンというメーカー、いままであまり詳しくなかったのですけど、先日板橋と光学の展覧会を見てきて、ちょうどこのカメラを修理したばかりだったこともあって、急に思い入れができた気がします。
同じ東京光学のプリモフレックスも手元にあるので、ぜひ積極的にトプコンのカメラを使っていきたいと思います。
もうひとつ思ったことがあって、1950年代から1960年代にかけて、カメラに求められるレベル、上がりすぎでは、ということがあります。
このトプコン35-Sと同じ日にヤシカエレクトロ35Gも持ち出して撮影したんですけど、1950年代にはこういう高級機にしかなかった、明るくてよく写るレンズとか、高級な距離計やファインダーというものが、1960年代には当然の水準になっちゃってるんですよ。
まあ、工業製品がそういうものというのはそうなんですが、1960年代から70年代にかけてさまざまなメーカーが淘汰されていったことを思うに、せちがらいなあ、と感じました。
というわけでトプコン35-Sについての紹介でした。
ありがとうございました。
御部スクラでした。
トプコン35-Sの関連書籍
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↑トプコン元社員の方による回顧録です。多少主観的なきらいはありますが、トプコンのカメラ製品の歴史について知るうえでまず読みたい一冊であることは間違いありません。