みなさんこんにちは!
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は、旧ソ連製のフィルムカメラ、FED-2について話します。
Contents
FED-2
FED-2の外観とスペック
レンズマウント:ライカマウント(L39マウント)
シャッター:横走り 布幕フォーカルプレーンシャッター B、1/25秒~1/500秒
巻き上げ:ノブ巻き上げ
カウンター:順算式、手動設定
フォーカシング:一眼式の連動距離計
使用フィルム:35mmフィルム
登場年:1955年
製造:フェリックス・ジェルジンスキー記念工場
FED-2について
FED-2(フェド2)は、レンズ交換式でフォーカルプレーンシャッターの、連動距離計カメラ(いわゆるレンジファインダーカメラ)です。
Camera-wikiによると最初に登場したのが1955年ということです。
参考:camera-wiki.org 「FED 2」(2021年5月28日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/FED_2
愛好家によって6種類に分類されている、ということなのですが、わたしの持っているこの赤いフェド2は、シンクロがダイキャストの側についていて、シャッターに1/30ではなく1/25がついているので2b型に相当するようですね(公式の分類ではありません)。
FED-2の特徴
ではカメラ本体について見ていきましょう。
最初に話したとおり、フェド2はライカスクリューマウントのレンズ交換式のカメラなのですが、なかなか完成度は高いです。
まずファインダーが一眼式、つまり距離計とフレーミングが1つになっているのですが、こういうタイプのファインダーを持っているカメラのなかではもっとも廉価な部類なので、それだけでも価値があると思います。
それから、フィルムの装填もバルナックライカタイプと違って、Contaxのように裏蓋が外れます。
主にこの2点が、バルナックライカに比べて改良された点ですね。
このフェド2というカメラ、バルナックライカの不便な点を旧ソ連なりに改良して、使いやすくしたカメラ、という正当進化系という感じがあります。
シャッターダイヤルは回転式です。
スローシャッターはついていなくて、低速側が1/25秒から、高速側は1/500秒まで。
バルナックライカコピーのゾルキー1やフェド1とおおむね同様ですね。
シャッター幕が生きていることが多い印象
ということでスペックを見てきたのですが、スペックに現れない点についても話していきます。
このフェド2というカメラの印象なのですが、すごいタフそう、なんですよ。
実際にタフかどうかはわからないのですが、タフそうに見える。
フレーム自体のダイキャストが頑丈そうなのもそうですが、
たとえば、フェド2ってジャンクで売られていても、シャッター幕が生きていることが多いです。
旧ソ連のゾルキーとかにしても、日本製のレンズ交換式連動距離計カメラにしても、1950年代のものって、往々にしてシャッターの布幕が劣化しきっていることがあります。
いっぽう、旧ソ連のカメラではフェド2くらいから、幕が一応はしなやかさを保っていることが多いんですよね。
日本の布幕フォーカルプレーンシャッターのカメラでも、たとえばペンタックスS2やSVは確実に幕がダメになっているけど、ペンタックスSP以降はシャッターとして機能している、みたいな事例があります。
おそらくは布幕の素材が改良されたのでしょうけど、フェド2は幕の素材がよい、というのはアドバンテージといえるのではないかと思います。
ただし、いま映しているフェド2は整備していないのですが、明らかにシャッターが油切れっぽい音がしているので、幕が生きているからといって完全に調子が良いわけじゃないんですけどね。
巻き上げが軽い。アイレットが便利
それから、フェド2って巻き上げがすごく軽いんですよ。
本物のバルナックライカより軽いです。
このあたり、1950年代のソ連の工業力って悪くなかったんだな、と感じます。
また、アイレットがついているのもよいところです。
旧ソ連のレンズ交換式の連動距離計カメラ、これ以前のたとえばフェド1にはストラップ金具がないし、もっと後のゾルキー4とかでは省略されてしまって不便なんですよね。
フェド2はその点便利です。
ゾルキー4との比較
↑Zorki-4:貼り革が浮いているので今後きちんと整備する予定です。
いっぽう、このフェド2というカメラは、旧ソ連製のこういったカメラとしては廉価なラインの製品でもありました。
どうやら、上位機種がゾルキーで、下位機種がフェドだったようです。
なので、ゾルキーと比べると、多少使い心地が劣るところがあります。
たとえば、1956年に最初の機種が出たゾルキー4。
旧ソ連製のレンズ交換式連動距離計カメラで、中古でもっとも頻繁に見かけるのは、このフェド2とゾルキー4だと思いますが、じつはファインダーが全然違います。
参考:camera-wiki.org 「Zorki 4」(2021年5月28日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/Zorki_4
動画だとうまく伝えにくいのですが、ファインダーの見えが全然別物なんです。
ゾルキー4はファインダーの倍率が高くて(等倍)非常にクリアーなのですが、
いっぽうフェド2は倍率が低く、見えもゾルキー4には劣ります。
トップカバーを外してみると、その理由がわかります。
↑左:FED-2 右:Zorki-4
ゾルキー4は、トプコン35-Sにも匹敵する大きなプリズムがおごられているのですが、フェド2も、プリズムは使われているのですがゾルキー4に比べると小さいです。
ゾルキー4は、ブライトフレームこそないですがとてもお金のかかったつくりです。
こういうところ、高級機種と廉価な機種の差が典型的にあらわれているよなーと思います。
FED-2とZorki-4はまったく別の道を歩んだカメラ
今回、説明のためにFED-2とZorki-4を同時に分解して気がついたのですが、両者は、起点は同じくバルナックライカコピーでも、まったく別々に改良が行われたカメラなんですよね。
というのがたとえばファインダーの構造はまったく異なります。
Zorki-4は、距離計調整がトップカバーを外さないとできないかわりに、トップカバーを外すこと自体は、シャッターダイヤルと巻き上げノブ、あとはネジ数本を外すだけで簡単にできます。
いっぽうFED-2は、トップカバーを外すだけでも相当たくさんのパーツを外さないといけません。
また内部写真を見ればわかるとおり、距離計の機構もまったく異なります。
書き忘れましたがゾルキー4はそもそもスローシャッターがついています。
どちらが優れている、というよりも、立ち位置が本当に異なったのだと思います。
FED-2は沈胴レンズが引っかかる
それから、これは全部のフェド2がそうなのかはわからないんですけど、
ゾルキーでは沈胴レンズが沈胴できますが、フェド2ではできません。
わたしはゾルキーは1と4しか持っていませんが、旧ソ連製のインダスターも、ライカレンズのズミターも沈胴できました。
いっぽう、フェド2は引っかかって沈胴できません。
これは距離計連動アームの構造が微妙に違うためです。
ご覧のように下側に出っ張りがあるんですよね。
そもそもアームが出てくる方向も違うので、フェドとゾルキーが別物のカメラということもよくわかります。
なので、もしフェド2を使う場合には、廉価機だったということもあるので、インダスター26Mやインダスター61あたりが似合うんじゃないかな、と思います。
もちろん、ジュピター8もいいですね。
ジュピター8はこんなによく写るレンズです。
※ボディ:ゾルキー1、フィルム:ADOX Silvermax100 / Parodinal 1:25
旧ソ連製レンズについてはゾルキー1の動画で話したので新しい作例はありませんが、ご覧のように、旧ソ連製レンズってほんとうにいい写りをしてくれますよ!
関連書籍
田中長徳 『ロシアカメラがむせぶ夜は』
田中長徳氏による読みやすいエッセイ。
じつはわたしがカメラをはじめた最初の頃に読んで、旧ソ連のカメラというものに興味をいだいたきっかけになった本です。
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ハラショー! ロシア&旧ソビエトカメラの世界
旧ソ連のカメラについての話題でよく名前が上がるムックです。
(なぜかAmazonの商品ページがダブっています)
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まとめ
というわけで、旧ソ連製のフェド2のお話でした。
どうしても、きちんと整備して売られることの少ないカメラなのですが、非常に真面目に作られた機種なので、普通に撮影に実用できると思います。
少なくとも、幕交換が必須なゾルキー1に比べればずっと実用向きです。
クラシックカメラブームのとき日本にたくさん入ってきていて入手性もよいので、旧ソ連製のカメラに興味を持った方が最初に買ってみる機種としてもいいんじゃないかな、と思います。
旧ソ連製カメラ、これからも取り上げていくつもりなのでよろしくお願いします。
ありがとうございました。
御部スクラでした。