PENTAX auto110(オート110) 110フィルム使用のフィルム一眼レフカメラ

PENTAX auto110(オート110) 110フィルム使用のフィルム一眼レフカメラ

みなさんこんにちは!

フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回はペンタックスのフィルム一眼レフカメラ、auto110(オートワンテン)について話します。

PENTAX auto110

PENTAX auto110の外観とスペック

PENTAX auto110

PENTAX auto110

PENTAX auto110

PENTAX auto110

レンズマウント:専用のバヨネットマウント
シャッター:電子プログラムAE ビハインドシャッター
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ 専用ワインダー取付可能
露出計:TTL中央重点測光(プログラムAE専用)
カウンター:110フィルムの番号窓を使用
フォーカシング:マニュアルフォーカス
電源:LR44 x2個
使用フィルム:110フィルム
発売年:1979年
発売時価格:34,000円(24mm F2.8付)
製造元:旭光学工業

参考資料:『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』p.49

PENTAX auto110について

PENTAX auto110

1979年のカメラです。

発売年参考:「デジタル一眼の進化系。ナノ一眼、はじまる。PENTAX Q | RICOH IMAGING」(2021年6月17日閲覧)

このauto110は、見ての通りとても小さな一眼レフカメラです。
わたしが持っているペンタックスの一眼レフカメラのなかで発売時期の近いPENTAX Super Aと比べるとこんなに違います。

35mmフィルムカメラとサイズ比較

※ただしPENTAX Super Aと同時期に後継機のauto 110 SUPERが登場しています

110フィルムとは

このauto110がこんなに小さいのは、110フィルムという小型のフィルムを使うカメラだからです。
110フィルムというのはフィルムメーカーのコダックが開発した規格で、ポケットインスタマチックとも呼ばれます。

110フィルム

コダックというメーカーはさまざまな規格を開発したメーカーですが、単に営業上の理由だけでなく、カメラに慣れていないユーザーが、フィルムを入れるのに失敗しないことを重視していたんですね。

そういう使いやすいフィルムとして、1963年にインスタマチック、126フィルムという、幅が35mm、画面サイズが28x28mmの正方形の、カートリッジ式フィルムの規格を登場させたわけですが、

参考:camera-wiki.org「126 film」(2021年6月17日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/126_film

その小型版として1972年に登場したのが、auto110で使う110フィルム、ポケットインスタマチックとなります。

これは空のカートリッジなのですが、フィルムの巻き上げる側と巻き上げられる側、両方ともカートリッジの中に入っている構造になっています。
巻き戻す必要はありません。
カメラへは、こうやってカートリッジを入れて使います。

カートリッジを入れて使う

このカートリッジの構造自体は1963年のインスタマチックと同様なのですが、大きく違うのが画面サイズ。

フィルム自体が小型化されていて、フィルムの幅は16mm、画面サイズは縦13mm x 横17mmです。

参考文献:「イーストマン・コダック社 ポケットインスタマチック60」『カメラレビュー 最新カメラ診断室』 1996年、朝日ソノラマ、p.196
※アサヒカメラ1973年2月号収録記事の再録

今回実際に撮影したフィルムを35mmフィルムと比べてみると、画面サイズがこんなに小さいです。

35mmフィルムと画面サイズ比較

唯一の110一眼レフ……ではない

さて、PENTAX auto110はそんな見ての通り超小型の一眼レフカメラであるわけですが、110フィルムを使う一眼レフカメラは、このauto110が唯一……
というわけではなく、ミノルタもminolta 110 Zoom SLRとminolta 110 Zoom SLR-Mark IIという機種を出しているのですが、そちらはレンズが固定式なんですね。

ミノルタの110一眼レフについて参考文献:
すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.284
(No.5093、No.5094)

レンズ交換式で、110フィルムを使う一眼レフというのは、このauto110と、後継機のauto110 SUPERだけです。

機構

では機構的にはどんな感じかというと、
露出はプログラムAE。
電池はLR44を2つ使います。

LR44

シャッターは絞りと兼用で、電子制御のビハインドシャッターです。

電子制御のビハインドシャッター

シャッターについて参考:「光学機器とカメラ・レンズ付属品類」より26.ペンタックス オート110・24mm F2.8付 解説
『平成22年度 特別秋季展 「板橋と光学」 Vol.2』図録 2010年、板橋区立郷土資料館、p.68

巻き上げはレバー式で2回巻き上げ。
ちなみに後継機のauto110 SUPERでは1回巻き上げに変わったということです※。
auto110SUPERの1回巻き上げについて:「光学機器とカメラ・レンズ付属品類」より64.ペンタックス オート110スーパー・ペンタックス110 18mm F2.8付 解説
『平成22年度 特別秋季展 「板橋と光学」 Vol.2』図録 2010年、板橋区立郷土資料館、p.74

システムカメラ

auto110と交換レンズ

さて、このPENTAX auto110というカメラのすごかったところとして知られているのが、交換レンズや専用ストロボ、ワインダーまで用意されたシステムカメラだったということなんですね。

具体的には、まずレンズ。

わたしの手元には標準レンズの24mm F2.8と望遠レンズの50mm F2.8しかないのですが、

標準レンズの24mm F2.8と望遠レンズの50mm F2.8

そのほかにも、広角レンズの18mm F2.8のヘリコイド付きと、ヘリコイドなしのパンフォーカス版※。

※参考:「光学機器とカメラ・レンズ付属品類」より
27-1.オート110用交換レンズ 18mm F2.8 解説
27-2.オート110用交換レンズ PF18mm F2.8 解説
『平成22年度 特別秋季展 「板橋と光学」 Vol.2』図録 2010年、板橋区立郷土資料館、p.68

それから、手持ち資料に載っていないのでソースがWikipediaになってしまうのですが、
望遠の70mm F2.8と、20-40mm F2.8のズームレンズもあったとのことです。

出典:Wikipediaより「PENTAXの写真レンズ製品一覧」(2021年6月17日閲覧)

レンズですが、絞りがボディ側に設けられている関係上、F値がF2.8で統一されています。

レンズマウントは専用のバヨネットマウントで、90度回転させて着脱します。

専用のフロントキャップ、リアキャップ、フィルターまで用意されています。

専用のフロントキャップ、リアキャップ、フィルター

専用アクセサリ

フル装備の状態

次に、わたしの手元にある専用のアクセサリ。

専用ストロボ AF100P

まず専用ストロボ AF100Pです。

専用ストロボ AF100P

ボディ上面の端子に直接ねじ込んで固定します。

ボディ上面の端子に直接ねじ込んで固定

カメラ本体もそうですが液漏れしているジャンクなのですが、一応発光します。

ストロボ取り付け状態

ワインダー

それから、専用のワインダー。

専用のワインダー

こちらは壊れていて動かないです。
プラスチックの爪が折れてしまっていて、電池蓋も固定することができないです。
三脚穴にねじ込んで固定します。

ストロボ・ワインダーの画像

AF100Pとワインダー

AF100Pとワインダー

とまあ、こういう感じで、110カメラとしては類を見ないくらいにアクセサリーが充実していたのでした。
ペンタックスLXが出たのもauto110の翌年、1980年ですし、この時代、本当にペンタックスのいちばんよい時代という感じがありますね。

PENTAX auto110で撮影した写真

フィルムカメラではデジタルカメラに比べて画面サイズと画質が直結するので、当然画質は下がるわけですが、どんなものでしょうか。
撮影した写真を見ていきましょう。

使用フィルムはLomography Color Tiger 110 ISO200です。

Lomography Color Tiger 110 ISO200

はい。
こちらが撮影した写真です。

PENTAX auto110で撮影した写真

PENTAX auto110で撮影した写真

PENTAX auto110で撮影した写真

曇りの日ということもあるのですが、やっぱりちょっと画質面では厳しさがあるかなーという感じです。

わたしが動画制作に使っている21.5インチのディスプレイで最大化して見ると、その時点ですでにアラが見えている感じがあります。

PENTAX auto110で撮影した写真

ただ、撮影した写真を見て気づいたことがあるんですね。

いま写している写真は、どちらかというとメインの被写体が大きく写っています。

PENTAX auto110で撮影した写真

PENTAX auto110で撮影した写真

そういう写真だと、案外見られなくもない気がするんです。

いっぽう、こういう、どちらかというと遠景がメインの被写体だといくらなんでも厳しい感じになってしまうんですよね。

今回紹介するPENTAX auto110は、110カメラとしてはイレギュラーな、マニアックな機種なのですが、
110フィルムを使うカメラのほとんどは、小型で簡単に使えることを目的とした、簡易的な機種でした。
そういうカメラが主に撮影する被写体がなにかというと、やっぱり、家族とか友達とかが真ん中に大きく写った写真だと思うんですよね。

たぶんですけど、そういったメインの被写体が明確で、大きく写っている写真では、110フィルムの画質というデメリットはいま感じるほど大きなものではなかったかもしれないな、と思いました。

PENTAX auto110で撮影した写真

PENTAX auto110で撮影した写真

まとめ

というわけで、PENTAX auto110のお話でした。

この時代の一眼レフ全般にいえることですが、まさに合体メカ、という感じがあります。
デジタルガジェットみたいな「ガジェット」という言葉がありますが、フィルムカメラ全般のなかでも、とくにガジェット、愛玩物という言葉が良い意味で似合うカメラですね。

画面サイズが近いマイクロフォーサーズでauto110用レンズを使うアダプターもあるのですが、2021年現在、Lomographyブランドのフィルムも手に入るので、ぜひボディと合わせて使ってみてほしいな、と思いました。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

参考:110とフォーサーズの画面サイズについて

「Four Thirds│マイクロフォーサーズ│規格説明│ホワイトペーパー(規格の概要)」
https://www.four-thirds.org/jp/microft/whitepaper.htmlの2020年11月4日時点のアーカイブ(Internet Archive)より(2021年6月17日閲覧)

上記に書かれている「対角長21.63mm」を三辺の比3:4:5にあてはめると縦12.978mm、17.304mmとなり、
110フィルムの画面サイズ13mm x 17mmとほぼ同じになる。