Mamiya 35 Auto Deluxe 2 おばあちゃんのカメラ

Mamiya 35 Auto Deluxe 2 おばあちゃんのカメラ

みなさんこんにちは。

フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は、日本のマミヤのフィルムカメラ。
Mamiya 35 Auto Deluxe 2(マミヤ オートデラックス2)について話します。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2

Mamiya 35 Auto Deluxe 2の外観とスペック

Mamiya 35 Auto Deluxe 2

Mamiya 35 Auto Deluxe 2

Mamiya 35 Auto Deluxe 2

Mamiya 35 Auto Deluxe 2

レンズ:MAMIYA-SEKOR 48mm F1.7
シャッター:COPAL-SVK B、1秒~1/500秒
巻き上げ:レバー巻き上げ、分割不可
露出計:セレン受光素子による露出計、シャッター・絞りに連動
カウンター:順算式 自動復元
フォーカシング:一眼式の連動距離計
ファインダー:採光式ブライトフレーム パララックス自動補正
フィルム装填:ちょうつがいによる裏蓋開閉
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1962年
価格:22,000円(1963年)
製造元:マミヤ光機

価格の出典:『アサヒカメラ』1963年4月号広告(『昭和10~40年 広告にみる国産カメラの歴史』1994年、朝日新聞社、p.294より)

Mamiya 35 Auto Deluxe 2について

Mamiya 35 Auto Deluxe 2

『国産カメラ図鑑』によれば、マミヤ35 オートデラックス2は1962年の発売。
前の年に発売したオートデラックスを改良した機種のようです。

参考文献:すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』 1985年、朝日ソノラマ、p.180。(No.3390)

おばあちゃんのカメラ

さて。
いままでいろいろなカメラを紹介してきましたけど、実際のところ、ほとんどのカメラはわたしが持っている必然性はなくて、偶然手元にやってきたものばかりだったんですよね。
でも、このマミヤのカメラは違うんです。

なんとワンオーナー品。
それどころか、わたしのおばあちゃんが使っていたカメラだったんです。

おばあちゃんのカメラ

わたしのリアルのおばあちゃんはもう亡くなってしまっているんですけど、もうけっこう前に、わたしがカメラをやっているのを知って、使わなくなったこのカメラをくれたんですね。
ただ、当時は技術がなかったので放置してしまっていたのですが、今回、ちゃんと分解して動くようにした、というわけです。

といっても、やっぱり技術がないのでネジの頭とかはキズだらけなんですけどね。

マミヤ35 オートデラックス2の特徴

では、マミヤ35 オートデラックス2の特徴を見ていきましょう。

まずはスペックから。

大口径のレンズ

スペックでもっとも目を惹くのが大口径のレンズです。

大口径のレンズ

わたしは最近、F2クラスまでのレンズがついたカメラしか使っていなかったので、レンズシャッター機でF1.7は本当に大きく感じます。

レンズはMamiya Sekorの48mm F1.7。
ファミリー向けカメラに大口径レンズをつけるのは、1960年代前半という時代ならではという感じがありますね。

ただ残念ながら、レンズの状態はあまりよくないです。
カビやクモリはないんですけど、前玉に拭き傷が多いんですよね。
こればっかりは、おばあちゃんが使っていたものなので文句は言えないです。

重厚長大なカメラ

レンズもそうですが、カメラそのものも大きくて重いです。
これまたこの時代ならではです。

単体露出計を内蔵

単体露出計を内蔵

機能面では、シャッターと絞りに連動する露出計も内蔵されています。
こちらについては、マミヤの35mmレンズシャッターカメラ自体にはそれ以前から露出計が内蔵されていましたし、EEカメラが登場し始めている時期の製品なので、機能としては標準的なものですね。

※『国産カメラ図鑑』によれば1958年のMamiya Elcaが初
参考文献:すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』 1985年、朝日ソノラマ、p.179。(No.3378)

ただ、今回分解してみたらシャッターと絞りを連動させるために結構複雑な構造をしていて、いまとなっては当たり前に見える露出計連動も、既存のカメラへの建て増しだとこんなにも苦労したんだな、ということがわかりました。

露出計への連動部分が複雑

印象としては、露出計もアピールポイントのひとつですけど、このカメラのウリはどちらかというとレンズだったんじゃないかな、という印象ですね。

ファインダーは採光式ブライトフレーム、パララックス自動補正

ファインダー

ファインダーですが、1960年代初頭のカメラということもあって、採光式ブライトフレームやパララックス自動補正は普通に搭載されています。

また露出計の表示もファインダーで確認できるようになっています。

貼り革にはマミヤのMの字

貼り革

面白いのが貼り革で、マミヤのMの字がかたどられたゴム系の素材になっています。

同じ柄の貼り革は、同時期の二眼レフ、マミヤCシリーズにも使われていますね。

カメラ自体の作りはそれなり

ということで大口径のレンズと露出計を内蔵したファミリー向けのレンズシャッターカメラなのですが、
実際に触ってみてどういう印象を持ったかというと……

作り自体はそれなり

おばあちゃんのカメラなのに申し訳ないですが、作り自体はそれなり、という印象でした。

1960年くらいまでに消えていってしまったメーカーのカメラよりはつくりがいいけれど、キヤノンとかコニカとかそのあたりに比べると、各部の素材があんまりよくないという印象です。
もちろん、マミヤはきちんとした会社ではありますけど、なんだかスペックを盛るために細かい部分の品質を下げたような印象があるんですよね。
このあたり、ちょっと限界があったのかもしれません。

とはいえ、もちろん新品で購入した当時は問題なく家族写真を撮るのに使えていたはずなので、実用上は問題なかったでしょう。
あくまでも、発売から60年も経ってから分解したマニアの意見です。

シャッターの作りは非常によい

品質、ということでいうと、レンズシャッターの作りが非常によくて驚きました。

このマミヤ35 オートデラックス2のシャッターはCopal-SVKというものなのですが、それより前のこういったレンズシャッターに比べて、作りの良さが段違いです。
というか、部品に手作業で仕上げた感がないんですよね。

Copal-SVK

もう少し前のレンズシャッターは機械、という感じがありますが、このCopal-SVKは工業製品! という感じです。
こういうところ、1960年代に入って日本の工業製品のレベルが一気に上ってきたのを感じます。

ライトバリュー方式

触れるのが遅くなりましたが、シャッターと露出の設定はライトバリュー方式です。

今回、ちょっと露出計の精度が怪しいので露出は勘で撮影したのですが、ライトバリュー方式ってやっぱり露出計ありきですね。
以前他の動画(Agfa Silette-L)でライトバリュー方式の良さについて話しましたけど、

Agfa Silette-L紹介とライトバリュー(LV)式シャッターの印象

露出計に合わせて撮るぶんにはとても使いやすいですが、自分で調整しようとするととたんに操作が面倒になります。

とくにわたしは、先にシャッターを1/125秒なら1/125秒で決めて、絞りで露出を調整する癖があるので、絞りを先に決める設計になっているこのカメラのライトバリューはとくに使いにくかったです。

絞りを先に決める設計

でもこれもまた、当時想定されていたユーザーにとってはまったく問題にならなかったと思うので、マイナスポイントとはいえないと思います。
あくまでも、後の時代のマニアの意見にすぎません。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

では、このカメラで撮った写真を見ていきたいと思います。

使用フィルムはADOX Silvermax 100(2019年期限)
Parodinal 1:25希釈、20℃ 8分で現像しました。

はい。
いつもの川で撮影したのですが、ちゃんと写っていますね。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

正直なところ空と日差しが美しすぎて、カメラそのものの性能がわかりにくくなってしまっているのですが、美しいものを美しく撮る能力はきちんと備えているカメラであることがわかります。

シャッターについても、この日はかなり明るかったので最高速の1/500秒まで使ったのですが、露出オーバーになることもなくおおむね問題はありませんでした。

ここからは寄りのカットを映していきます。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

今回分解したとき、距離計のユニットを下ろしたのですが、少し調整するだけで一応ちゃんとピントを合わせてくれています。
ただ、露出計ユニットをネジ止めするときに少し遊びがあって、そのときに合うように固定しないといけなかったのですけどね。
もしかすると正しい調整方法があったかもしれません。

日陰に入って絞りを開放付近で撮影してみるとこんな感じになります。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

構図は日の丸なので周辺がどうなのかはわからないのですが、ぜんぜんちゃんと写っていると思うんですよね。
というか、そこまで高級なカメラではなかったはずなので写りが良すぎるくらいです。
1960年代前半のカメラ、やっぱりよいレンズを積んでいます。

ただ、これはレンズ自体のせいなのか、拭き傷のせいなのかわかりませんが、ちょっとフレアっぽくなることがありました。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2で撮った写真

コバが剥がれているのをそのままにしてしまったのも影響しているかもしれません。

ともあれ、完全にシャッター羽根が張り付いてしまっていたおばあちゃんのカメラで無事こうやって撮影することができて、本当によかったと思っています。

Mamiya 35 Auto Deluxe 2のケース

最後にこのカメラのケースについてちょっとだけ話します。

これが純正の革ケースです。

純正の革ケース

なんか犬みたいな見た目になっていますけど素人仕事で修理したからです。
この肩の部分と、レンズの下の部分がほとんど千切れてしまっていたので茶色い革をあてました。

レンズの下は縫い付けたのですが、肩のところは金属の芯が入っていて縫えないので接着剤で貼り付けただけです。

肩のところは金属の芯が入っていて縫えない

まあ、それなりに保ってはくれると思います。

なんでケースに言及したかというと、カメラ本体と同じくらいこのケースが大事だからです。
中古でカメラを買うとたまにケースの内側に住所や名前が書いてあることがありますけど、この革ケース、おばあちゃんの名前と住所が油性ペンで書いてあるんですよね。
このケースが、カメラ本体の出自を証明してくれるんです。

身バレしてしまうので中身は映せないですが、ケースの話でした。

Mamiya関連書籍

まとめ

というわけで、マミヤ35 オートデラックス2のお話でした。

こういう見た目で露出計がついたレンズシャッターカメラって、いままで全然食指が伸びなかったのですが、こうしてちゃんと直して使ってみると、悪くないものだなあ、と思うようになりました。
たとえばコニカSはそれ以前のコニカに比べて格好悪くなったと感じていたのですが、そういう印象も変わった気がします。

そういう点で、今回このカメラを使わせてくれたおばあちゃんに感謝、と思っています。

ありがとうございました。
御部スクラでした。