神林長平 『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を読んだ

神林長平の『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を読みました。

そもそもは、今年(2021年)に日本語版の最終巻が出た、中国SFの『三体』を読んで、そのあとに伊藤計劃の『ハーモニー』を読んで、ほかにもSFを読みたいと思っていたところ、SFが読みたいなら戦闘妖精・雪風は読んだほうがよいと薦められたのがきっかけでした。

ただ、1冊目(『戦闘妖精・雪風』、文庫版の「改」で読んだ)はピンとこなかった、というのが正直なところなのでした。
最大の要因として、わたしはミリタリーにうといのです。

フィルムカメラというものを好んでいる人間として、ミリタリーネタに興味がないのは趣味人としての教養に欠けると言われても仕方がないですが、生まれつきあまり惹かれないのだからどうにもならないです。
もちろん、ほかの分野の話題から芋づる式に得た知識はありますが、軍事や兵器について体系立った知識はない。
そして、軍隊という舞台設定は読んでいて荷が重いものでした。

じつは1冊目の『戦闘妖精・雪風』は冒頭の数ページで読むのを一度諦めたのでした。
というのは、いきなり戦闘機や戦場についての解説が始まるからです。
たぶん他にもそうやって挫折した人がいたことでしょう。
結局は無理やり最後まで読み切ったのですが、あまり物語の広がりを感じられなかったのでした。

それで、問題は2冊目の『グッドラック 戦闘妖精・雪風』なのですが……。

まず、1冊目とはまったく別の内容でした。
宇宙とか、哲学とか、脳とか、意識とか、そういった、なんとなく深そうな内容について語られているSF。
わたしが三体を読んだあと、友人に出したオファーはそういうものだったのですが、たしかにその条件には合致しています。

ただ。
最後の方で語られる「敵」と「神」というものの話とか、主人公の人格の変化といったものは、たしかに示唆に富んだものではあったのですが、少しわたし自身の求めている要素、わたし自身の問題意識とはずれがあったように感じています。

具体的にいうならば、わたし自身が根源的に悩んでいるのは、人は意味もなく死んでいくことだということ。
『三体』は、その点外に広がっていく小説だったので、そういう悩みを吹き飛ばしてくれる本だった。

いっぽう、今回読んだ『グッドラック 戦闘妖精・雪風』は内へ内へ掘り下げていく内容で、かつ、その掘り下げ方というのは、新たな視点を与えてくれるものというより、もともとわたし自身も知っていたことが描かれて、それに同意していくような内容だったのです。
(と、なんだか上から目線のような書き方になりましたが、それを「明文化」したことは非常に凄いことである)

なので、内容に衝撃を受ける、ということはないのでした。

そして、この『グッドラック 戦闘妖精・雪風』の問題点があるとすれば、正直いって長過ぎます。
文庫版で読みましたが本編は632ページ。
主人公の内面や、意識とか知性とかそういったものを描くにはそれだけのページ数が必要だった。
ということも可能なのでしょうが、本当にそうなのでしょうか?
もっと短いページ数でできなかったのでしょうか?

それから、1冊目の『戦闘妖精・雪風』ほどではないですが、とくに序盤のミリタリー描写が冗長に感じました。

ただ、これは比較対象が『三体』と『ハーモニー』なのがいけないだけなのかもしれないです。
『戦闘妖精・雪風』と『グッドラック』がダメなのではなく、普通に一流のSF小説なのでしょうが、相手にしているのが超一流であるというだけのことなのでしょう。

『戦闘妖精・雪風』には3冊目もあるそうですが、友人いわくとくに読まなくていいということだったので、まあ、もし機会があったら読む、くらいの気持ちでいます。