Konica FS-1 フィルム自動装填を実用化した一眼レフカメラ

Konica FS-1 フィルム自動装填を実用化した一眼レフカメラ

みなさんこんにちは!
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は一眼レフカメラの、Konica FS-1について話します。

Konica FS-1

Konica FS-1の外観とスペック

Konica FS-1

Konica FS-1

Konica FS-1

Konica FS-1

Konica FS-1

レンズマウント:コニカマウントII(通称ARマウント)
シャッター: コパルスクエア EM-573 B、2~1/1000秒
巻き上げ:自動巻き上げ(巻き戻しは手動)
露出計:TTL開放測光(SPD?)
カウンター:順算式、自動復元
フォーカシング:マニュアル
電源:単3乾電池 x4
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1979年
発売時価格:56,300円(ボディ?)
製造元:小西六写真工業

参考文献:
コニカの歩み 1978-79 | コニカミノルタ製品アフターサービス – 株式会社ケンコー・トキナー(2021年12月22日閲覧)
『クラシックカメラ専科 No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.70, 78

Konica FS-1とは

Konica FS-1

Koncia FS-1は小西六、のちのコニカが1979年に発売したフィルムカメラです。
コニカミノルタ製品アフターサービスのページ(上掲)によれば、世界で初めて、フィルムの自動装填と自動給送機構、つまり自動巻き上げを内蔵した一眼レフカメラ、ということです。

という説明の通り、このカメラの最大の特徴はモーターで自動でフィルムが送られることなんですよね。

モーターで自動でフィルムが送られる

1980年代後半や1990年代のカメラだと当たり前になった機構ですが、1979年という時代には非常に先進的だったわけです。

スペックと特徴

それじゃあ、まずはスペック面から特徴を見ていくと、

シャッターはバルブと2秒から1/1000まで、コパル製の縦走りのフォーカルプレーンシャッターです。

シャッター

コニカの一眼レフということでシャッター優先AEがついています。

シャッター優先のためということもあると思うのですが、シャッターダイヤルは大きく、軽くてとても回しやすいです。

ファインダーにはこうして、左側にLEDで絞り値が表示されます。

左側にLEDで絞り値が表示

レンズのマウントは、ARマウントと通称されることも多いコニカマウントIIです。

コニカマウントII

レンズを外すとミラーがとても大きいのがさすが1970年代後半のカメラという感じですね。

巻き上げは自動ですが巻き戻しは手動です。

巻き戻しは手動

※巻き戻しについては、後述する書籍 内田康男 『商品開発のはなし』 pp.69-70に、開発時点で内蔵可能なモーターでは手で巻き戻すほうが早かったためだったということが言及されています。

シャッターボタンにはレリーズをねじ込む穴はなく、そのかわりこの部分(カメラを構えたとき左手側)に5芯のコネクターがあって、リモートコントローラーなどのアクセサリを繋げられます。
これもウリだったようです。

5芯のコネクター

コネクタについて参考文献:『クラシックカメラ専科 No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.70

外観のデザインは角ばっていて、1980年前後の最先端っぽさがあります。
ただ一箇所、裏蓋の開閉ロックが古い形状をしているのだけはアンバランスな感じがします。

裏蓋の開閉ロックが古い形状

ストラップ金具は片側はAF一眼レフのような平坦な形状、反対側は金具をつけて使う伝統的な形をしています。
左右で違うのはちょっと珍しいですね。

ストラップ金具形状が左右で違う

ストラップ金具形状が左右で違う

撮影した写真

さて、今回はちょっとマニアックな話をするので、先に撮影した写真を見ていきます。

取り付けたレンズはHEXANON AR 50mm F1.7。

HEXANON AR 50mm F1.7

ちょっと前玉の内側にクモリがあります。

使用フィルムはKodak GOLD 200です。

レンズは描写良好、ボディはミラー精度ズレあり

はい。
夕方の撮影だったのですが、このようにいい感じに写っています。

Konica FS-1 撮影した写真

まずは少し絞っているカットから見ていきますが、このように普通にきれいな写真という感じです。

Konica FS-1 撮影した写真

50mm F1.7の標準レンズなので写らないほうがおかしいというのはそうですが、こうやって危なげなく使えるのって、本当にいいことですね。

もう少し陽が落ちて、絞りを開いていってからの写真を見ていきます。
ちょっとピントがきてないですが、このカットとか個人的には好きです。

Konica FS-1 撮影した写真

背景のボケ、人によってはちょっとうるさいと感じるかもしれないですけど、わたしは全然アリです。

ただ、じつはカメラのボディのほうに問題があって、ちょっとピントがズレ気味なんですよね。

Konica FS-1 撮影した写真

できる範囲で調整もしてみたのですが、どうもミラーの位置かどこかが経年劣化でズレてしまって、絞り開放だとちょっと後ピン気味になってしまっているようです。

Konica FS-1 撮影した写真

つくりが悪いカメラではけっしてないのですが、このカメラのように電動化が進むくらいの年代になってくると、どうしてもそういった経年変化がつきものになるのは仕方ないようです。
今回、撮影自体は問題なくできたのですが、シャッターチャージが滑って連続で巻き上げ音がすることも何度かありました。

Konica FS-1 撮影した写真

Konica FS-1 撮影した写真

Konica FS-1 撮影した写真

このあと、このカメラがどういう工夫をしているのかについて話すのですが、使いやすくするすることと壊れやすくなることはトレードオフ、ということなのだと思います。

自動装填・自動巻き上げのカメラ

さて。
後回しになりましたが、このKonica FS-1の最大の特徴、自動装填と自動巻き上げについての話です。

自動巻き上げ(ワインダー)とは

自動装填と自動巻き上げ

自動巻き上げというのは言葉の通り、シャッターを切るとすぐにモーターでフィルムが1枚分巻き上げられるということです。
それまでもゼンマイやモーターによる自動巻き上げはあったし、一眼レフでも、外付けのワインダーやモータードライブというのはありました。

ゼンマイによる巻き上げの例:リコーオートハーフS

OLYMPUS OM-1Nのワインダー

このFS-1が新しかったのは、それを内蔵したということだったんです。

新しかったのは一眼レフにワインダーを内蔵したこと

とだけいうと、自動巻き上げの内蔵は、スポーツとか乗り物のような被写体を連写する、みたいな「機能の向上」が目的だったと想像すると思うんですよ。
実際、1970年代、1980年代の外付けのモータードライブって、プロカメラマンの道具とか、スポーツカーみたいにパワーの象徴、みたいなイメージがありますよね。

ところが、このFS-1の目的はそうじゃなかった、というのが面白いところなんです。

ワインダーではなく「自動装填」のほうが主な目的だった

ハイテクが目的ではなかった

結論からいうと、Konica FS-1が電動モーターによる巻き上げを内蔵したのは、フィルムを入れやすくするためでした。

自動巻き上げ(ワインダー)というのはあくまでも、フィルムを入れやすくする「自動装填」(オートローディング)の副産物にすぎなかったんです。

フィルム装填のミスとそれまでの試行錯誤

35mmフィルムカメラの時代、カメラに慣れていない人がいちばんやりがちな失敗というのは、フィルム装填のミスでした。

それを防ぐために、インスタマチックやポケットインスタマチック(110フィルム)のようにフィルムカートリッジそのものを新しくしたり、

110フィルム

ラピッドフィルム

Canonのクイックローディングのように、35mmフィルムカメラを簡単に入れるための工夫というのがいろいろと行われたのですが……

Canonのクイックローディング(QL)

結局どれも決め手にはなりませんでした。

フィルムがうまく入らない原因で多いのが、フィルムの先端を巻き上げの軸に入れるのを失敗することでした。

フィルムの先端を巻き上げの軸に入れるのを失敗

それから、フィルムを入れた直後に手動で空シャッターを切る必要があるというのも面倒でした。

空シャッターを切る必要があるというのも面倒

わたしのチャンネルには使い方解説の動画もありますけど、たしかに、フィルムカメラに慣れていない人に「空シャッター」という概念をうまく説明するのって難しいんですよね。

自動装填の実現に挑戦

じゃあ、なぜこのカメラがフィルムを入れやすくするための新機構を取り入れたのかというと……

Koncia C35EFの動画でも参考にした、コニカの技術者、内田康男さんという方が書いた『商品開発のはなし ピッカリからジャスピンへ』には、FS-1の開発エピソードも記されています。

内田康男 『商品開発のはなし ピッカリからジャスピンへ』

ここから参考文献:内田康男 『商品開発のはなし ピッカリからジャスピンへ』1991年、日科技連出版社、pp.60-71

それによれば、このカメラの開発が始まったのは1974年。
FSというのは「未来のシステム」という意味ということです。

FSというのは「未来のシステム」という意味

Future Systemということですね。

内田 p.61より引用:
「FSという意味は、「未来のシステム」を表していて、全員の意気盛んであった」

この開発は、当時ちょうど実用できるようになったマイクロプロセッサを使ってそれまでにないカメラを作ろうということではじまったとのこと。

そこで、マイクロプロセッサ=コンピュータ制御という新技術があれば実現できるかもしれない! ということでフィルム装填の失敗を解決する「自動装填」に挑戦することになったのです。

自動装填の方法

基本的な発想はとても簡単です。
フィルムを巻き上げる軸にシリコンゴムを巻きつけて、摩擦力で巻き上げる

シリコンゴムの摩擦力で巻き上げる

そうすることで、こうやって、フィルムの先を引き出して、軸の上に置くだけで巻き上げられるようになる。

フィルムの先を引き出して軸の上に置くだけでいい

というものです。

1枚目まで自動で巻き上げられる(空写し不要)

さらに、フィルムを入れると、それまで空写しをしていた分が自動で巻き上げられるという機構を実現するために、おのずと巻き上げは電動のモーターによるものになりました

自動で1枚目まで巻き上げられる

特許と実用新案について

特許と実用新案

と、言葉にすると簡単なのですが、それまでの製品になかった機構なので開発はかなり難しかったようです。

今回、このカメラが開発された前後の特許や実用新案を調べてみたのですが、このFS-1に関連する出願がかなり多く行われていました。

いくつか具体的に見ていきましょう。

裏蓋と巻き上げ軸のローラー

裏蓋と巻き上げ軸のローラー

まず、裏蓋についているローラー。

それまでのオートローディング機構(例:CanonのQL)ではスプロケットと噛み合わせるためにローラーを前後に2本設けていたのですが、それだけだとフィルムが送られる抵抗が強いとき、フィルム先端と巻き上げ軸が噛み合わず空回りしてしまって、うまく巻き上げられない可能性がありました。

それまでの簡易ローディング機構のローラー

これは、スプロケットにはフィルムが押し付けられていても、巻き上げ軸にはフィルムが押し付けられていなかったからです。

そこで裏蓋に、巻き上げ軸にフィルムを押し付けるためのローラーを新設して、フィルム先端が確実に軸に接触し、巻き上げられるようにしました。

巻き上げ軸にフィルムを押し付けるためのローラーを新設

また、ローラーを支持する部品(画像の黒い板部分)自体も、フィルム先端を軸へガイドする形状になっています。

ローラーを支持する部品自体もフィルム先端を軸へガイドする形状

それから、巻き上げ軸を半周したスプロケット側、内側にもローラーが設けられていてフィルムをガイドしています。

内側にもローラーが設けられていてフィルムをガイド

該当する実用新案

実全昭55-125634
実願昭54-025774
オ-トロ-デイング装置
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-125634/803D1A463057948B41DE7E98216C80461553247A9110F8F7856432ED42D8658C/23/ja

巻き上げ軸の形状

巻き上げ軸の形状も工夫されています。

特許を見て初めて気がついたのですが、FS-1の巻き上げ軸って、下側が少し太くなっているんですよね。

巻き上げ軸の下部が太くなっている

これはフィルムの先端の細い部分が斜めに送られないようにするための工夫ということです。

35mmフィルムの先端はこのように切られていますが、形状はメーカーや銘柄によって異なります。

35mmフィルムの先端形状

特許の文面を見る限り、当時、まだバルナックライカなどを想定した、先端の細い部分が長いフィルムがあったようで、おそらくはそういったものを想定しています(下記注参照)。
(どこかで、Kodakはかなり遅い時期まで先端が細長いフィルムを販売していたというのを見たことがあった気がします)

具体的には、軸の下部を太くしているほか、ガイドローラー部分にも下側へガイドする部品を付け、ボディのダイキャスト内面にもモルトを貼り付けることで、巻き太り、タケノコ巻きを防止するようにしたようです。

特開昭55-161224より図版引用

※上記画像は特開昭55-161224より図版を引用しています

先端部の長いフィルムについて注

特開昭55-161224には「スプロケット4とフィルム看取り部材9との間に張られているフィルム部分(未だ細中部である)の内面に衝き当り」とあり、
巻き上げ軸を1周してもまだフィルム先端の細い部分であることが想定されているので、バルナックライカ等で用いられる形状を前提としていると考えられる

該当する特許・実用新案

特開昭55-156929
特願昭54-064274
フイルム自動巻上げ装置
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-156929/D34894C084C38D30139646950979D2FF92F4CDF1C22BBDD0E618A13B2A95EDFC/11/ja

特開昭55-156926
特願昭54-064120
フイルム自動巻上げ装置における密巻き装置
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-156926/24986AB3DA2775CAC2D72C7419C2C8EF753E98935906CEFD8B0D69EBD630EEFC/11/ja

実全昭55-172925
実願昭54-073584
フイルム自動巻上げ装置の巻取室の構造
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-172925/9B1C2C905890A5DB293A43A5336B56FB6F018CB9B35B652006448EF34681B6A9/23/ja

特開昭55-161224
特願昭54-069240
カメラ用フイムル自動巻上げ装置(「フィムル」はママ)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-161224/18162A491E9EA8668CE919F95AE083E15B5B64B1CE5ADFED11604EE32C3A7F75/11/ja

実全昭55-178126
実願昭54-078062
フイルム自動巻上げ装置のフイルム通路規制装置
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-178126/B41A7057E3D61CDC401B26A1D6B0A9B986538A71CC845329613633836DAFEF57/23/ja

特開昭56-072427
特願昭54-148873
カメラ等のフイルム自動装填装置用の巻取り部材
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S56-072427/0AB8693D315E91F51CE89E0223FFAFAA5EAB872FE1A4725B4D524A0F0F43C4FA/11/ja

スプロケット歯車

スプロケットの形状

それからスプロケットの形状。
パトローネの個体差などでフィルム送りの抵抗が強いときにスプロケットからパーフォレーションが外れてしまうことを、スプロケットの歯車形状を変えることで防止しています。

具体的には、それまで一般的だったインボリュート曲線から、巻き上げ側のみ(後ろから見て右側)形状を垂直に近くして抵抗を増やしています。

巻き上げ側のみ(後ろから見て右側)形状を垂直に近くして抵抗を増加

また、確実に側面に当たるように、上下とも外側の角を面取りしています。

Konica FS-1とC35EFのスプロケットを比較

上記画像ではKonica FS-1の新しいスプロケット歯形状と、Konica C35EFの旧来の形状を並べていますが、違いが伝わるでしょうか。

該当する実用新案

実全昭55-125630
実願昭54-025773
カメラ用スプロケツト歯車
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S55-125630/2BD351A1BFC04D258FF0F61672D37117083DC6466C89D4A1B7DDABFA789B8F1C/23/ja

各部の制御

それから、各部をどうやって制御するかについてももちろん特許が出願されています。

該当する特許

特開昭56-074227
特願昭54-151178
フイルム自動巻上げカメラ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S56-074227/B42F01590511DF191179A20B494D94A60FBA73ACCD46F90A855A8716D7D499E6/11/ja

フィルムカウンター

※この項は動画では割愛した内容です。

あと細かいところとしては、FS-1のフィルムカウンターは巻き上げと連動していますが、ここについても実用新案が出ています。

フィルムカウンターの回転自体が巻き上げ軸と連動しているらしく、その動き自体に、フィルム送りが正常に行われているインジケーターの役割を持たせているようです。

軸と連動しているため巻き戻すときにもフィルムカウンターが逆に動くのですが、こちらについても、最後にフィルム先端を残せるようにする(ベロ残し)ことを考慮しているとのことです。

該当する実用新案

実全昭56-077820
実願昭54-159235
フイルム給送確認装置
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S56-077820/FAAFD2735240D1AA0DCC01DF2C5D2F830238A71B1A0104A2429991669B7DE8D8/23/ja

たくさんの発明が行われた新機軸のカメラ

と、このように非常に多くの特許や実用新案が出願されていて、それだけこのFS-1という機種が力を入れて開発されたものだということがわかります。
結果として、かなりレベルの高い自動巻き上げのカメラが完成したのです。
今回、発売から40年以上経っているのに巻き上げについては問題なく動作した(コマ間もおおむね問題なかった)ことも完成度の高さを裏付けていると思います。

自動装填の副産物として自動巻き上げに

さて、こうして、フィルムの先端を軸の上に置くだけで1枚目までフィルムが自動で送られる、自動装填のカメラができました。

自動装填のために、巻き上げ軸はモーターで動いています。
すると、そのあとの巻き上げも当然モーター行えるわけです。

自動装填の副産物として自動巻き上げに

自動装填のカメラはそのまま、自動巻き上げを内蔵した世界初の一眼レフになりました。
このあと1980年代を通じて、一眼レフのワインダー内蔵はどんどん一般化していきます。

他社のカメラと比べると、自動巻き上げが副産物だったことがわかる

ただ、ほかのメーカーのワインダー内蔵機種と比べると、そもそものコンセプトの違いがわかるんですよね。

たとえばCONTAX 137MAを例に挙げると……
巻き上げ軸はパーフォレーションを引っ掛ける、以前からの形状を踏襲していますし、FS-1のような工夫もありません。

これはCONTAX 137MA(や137MD)の目的が「ワインダーを内蔵すること」だったからでしょう。

CONTAX 137MAのスプロケットと巻き上げ軸

↑同じ「ワインダー内蔵一眼レフ」であっても、ワインダー内蔵を起点としたCONTAX 137MAのスプロケット・巻き上げ軸は旧来の形状のまま

コニカの一眼レフは途絶えたが

コニカの一眼レフは途絶えたが

ただ、コニカの一眼レフカメラは1985年のTC-Xと、特殊機種のFT-1プロハーフで途絶えてしまいます。

『商品開発のはなし』には、オートフォーカス一眼レフの開発を見送ったのが要因だったと書かれています。

内田康男 『商品開発のはなし ピッカリからジャスピンへ』1991年、日科技連出版社、p.76

同書が出版されたのは1991年ですが、その後ミノルタとの合併に至るまで、コニカから新規の一眼レフが出ることはありませんでした。

自動装填のコンセプトは大きな影響を与えた

でも、コニカFS-1が失敗作だったかといえば、まったくもってそんなことはないと思うんです。

1980年代、1990年代、2000年代に作られたさまざまな自動装填、自動巻き上げのカメラ。

それらは多かれ少なかれ、FS-1の開発を通じて生み出された機構を取捨選択しながら取り入れています。

影響:太い巻き上げ軸とローラー

たとえば、太い巻き上げ軸と、そこへフィルムを押し付けるためのローラー。

太い巻き上げ軸と、そこへフィルムを押し付けるためのローラー

裏蓋側と本体側の2つのローラーを使う構造は定番になっています。

ミノルタα-7xiの例

↑ミノルタα-7xiの例

PENTAX ZOOM-70DATEの例

PENTAX ZOOM-70DATEの例

↑PENTAX ZOOM-70DATEの例(パトローネが右側なので裏蓋の先端側にローラーがついている)

影響:ゴム系の軸

軸についてもシリコンゴムの摩擦力を設ける構造のものが散見されます。

PENTAX ZOOM-70DATEの例

↑ゴム系軸 ↑PENTAX ZOOM-70DATEの例(再掲)

ただしこちらについてはパーフォレーションを引っ掛ける小さな爪を設けたものも多いです。

Canon EOS Kiss IIIの例

↑Canon EOS Kiss IIIの例では軸は太いが、パーフォレーションを小さい爪に引っ掛ける形状になっている。
またローラーは裏蓋側のみ設置。

そもそものコンセプトも影響

またそもそも、フィルムの先端を引き出して巻き上げ軸の上に置いて、裏蓋を閉じると自動で1枚目まで巻き上げられるというコンセプト自体が、フィルムカメラが実用品だった時代の終わりに至るまで標準的な機能だったわけです。

FS-1のコンセプト自体がずっと影響を与えていた

コニカの一眼レフそのものはデジタルカメラの時代が来るよりかなり以前に終焉を迎えてしまいましたが、そのコンセプトは、コニカの一眼レフ以外のカメラ、そして他社のカメラによって受け継がれていったといえるのではないでしょうか。

自動装填はFS-1で最初から完成していた

自動装填という機構は、FS-1のコンセプトをもってひとまず完成をみたといえるのではないでしょうか。
ちょっとFS-1を持ち上げすぎかもしれない言い方かもしれませんが、他のメーカーの同様の機構は、この発明の影響下にあるといっても過言ではないでしょう。

ただし。
もちろん、フィルムを引き出して軸に乗せるということは必要です。

フィルムを引き出して軸に乗せるということは必要

それを解決するためにAPSフィルムのような新規格も出ましたが、ご存知の通りAPSは成功したとはいえません。

APSは成功したとはいえない

それ以上の根本的改良がなかった理由

FS-1のような方式が終着点となった理由なのですが、根本的な解決として「そもそもフィルムを入れなくていい」方法が生まれたからだと思うんですよね。
そう、写ルンですなどのレンズ付きフィルムの登場です。

写ルンですなどのレンズ付きフィルムの登場

レンズ付きフィルムなら、いちばん失敗しやすいフィルムの装填自体、行なう必要がありません。
やらなくていいのだから失敗することもありえません。

入れなくていいのだから失敗することもありえない

いっぽう、写ルンですではないカメラをわざわざ使うユーザーにとっては、FS-1のような方法で十分便利だったのでしょう。

写ルンですではないカメラをわざわざ使うユーザーにとっては、FS-1のような方法で十分便利だった

比較対象が、フィルムを入れるのが簡単か難しいかではなくて、フィルムを入れる必要があるか、入れる必要がないか、になってしまったということです。

実際問題として、これ以上便利にするにはAPSのようなアプローチしかなかったのでしょうが、フィルムを入れる必要がある時点でAPSでさえも写ルンですより不便なのに変わりはなかったのでしょうね。

まとめ

ということでコニカFS-1のお話でした。

Konicaのカメラ、C35EFでもストロボ内蔵という流れを作りましたけど、今回のFS-1も、フィルムの自動装填という機能では他に与えた影響が非常に大きかったんじゃないかと思います。
ニコンやキヤノンの一眼レフのような派手なイメージを残したわけではないですが、今回調べてみて、思いのほか重要な機種だったことに驚きました。

コニカのカメラはすごい。
小西六はすごいです。

ありがとうございました。
御部スクラでした。