最近、自転車のホイールを立て続けに手組みするようになったのだが、日本語圏にはロクな情報がないので、
Roger Musson著『Wheelbuilding Book』という本を買った。
著者は英国人。
PDF頒布で、以下のサイトから買える。
https://www.wheelpro.co.uk/wheelbuilding/book.php
さて、自分は中国製の自転車をいじっているわけだが、解説動画に中国語字幕をつけるにあたって、「JIS組み」と「イタリアン組み」の訳語で困ってしまった。
中国語の訳語が見当たらないので、まずは英語の訳語を探してからそれを起点に中国語の訳語を見つけようと思い、「JIS組み」と「イタリアン組み」に相当する用語を探そうと、『Wheelbuilding Book』の内容を見ていたのだが……
すると、JISとイタリアンに相当する言及箇所はあったのだが、そもそも、JIS組みを行う理由自体が否定されていることに気付いた。
具体的には、Jobst Brandtの発言の引用として、
> ブレーキトルクは自転車に静的に座っているときの放射状の負荷と比較して、重要なスポーク負荷をもたらさない
ということが書かれている(p.46)。
さらには、JIS組みを行う理由は、20世紀において、工場でのホイール組み立てがわずかに時間短縮できたからだろうという内容も書かれていた。
Jobst Brandtは、自転車ホイールについての伝説的な著作、『The Bicycle Wheel Book』の著者である。
上記の引用発言でも、『The Bicycle Wheel Book』に、一般的にJIS組みのメリットとして挙げられるハブブレーキでの強度向上という狙いには意味がないということが書かれているということだ。
さらに著者の手でも、シマノが推奨するディスクリアのJIS組みや、フロントの逆イタリアンは意味がないということが書かれている。
自分は今回すでにJIS組みでハブブレーキ(唐沢のサーボブレーキ)の後輪を組んでしまったが、本書によると意味がないようだ。
ホイールの権威であるJobst BrandtとRoger Mussonが書いているから信じる、というのは工学を学んでいない自分にとって信仰でしかないが、それでも、日本で素人が書いている海千山千のblogに比べればはるかに信頼できる。
日本の趣味界隈というのは非常にレベルが低く、世界を見ていないということはさまざまな分野で見てきているので、たぶんそうなのだろう。