Minolta 35 II解説&梅鉢SUPER ROKKOR 45mm F2.8の作例紹介

Minolta 35 II解説&梅鉢SUPER ROKKOR 45mm F2.8の作例紹介

みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は日本のミノルタのフィルムカメラ。
Minolta-35 Model II(以下、ミノルタ35 II型)について話します。

Minolta 35 IIについて

Minolta 35 II

ミノルタ35は1948年のI型から1958年のIIB型まで作られた、L39マウントの連動距離計カメラです。
なかでもこのミノルタ35 II型は『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』によると1953年の8月にアサヒカメラで新製品として報じられています。[1]『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.369

ミノルタ35 II型には前期型と後期型の違いや付属するレンズによるバリエーションがあるようなのですが、このミノルタ35 II型は買ったときからご覧のSUPER ROKKOR 45mm F2.8がついていたので、おそらく前期型のようですね。

状態が悪い&オリジナルではない部分について

さて、すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、このミノルタ35 II型は、さまざまな箇所がオリジナルではありません。

まず、セルフタイマーは欠品だったのでジャンクのSR-T101のものをつけています。

セルフタイマーは欠品だったのでジャンクのSR-T101のもの

またファインダー窓の部品は3Dプリンタによる造形品です。

ファインダー窓の部品は3Dプリンタによる造形品

それから、シャッターボタンもオリジナルではないです。
あと貼り革も代用品ですね。

というのが、このミノルタ35 II型を買ったのはレンズが目的で、ボディはオマケだったんですよね。
でも一応はなんとか撮影できる状態に整えたのでした。

各部特徴

ということで状態は最悪なのですが、各部の特徴を見ていきましょう。

マウント

最初に話したように、このカメラはL39マウントのレンジファインダーカメラです。

L39マウント

マウントはこういう感じで、当然ですが距離計アーム先端はちゃんとコロになっています。

ファインダー

外観の通りファインダーは一眼式。
対物側の窓は、このミノルタ35 II型は代用品が付いているのですが、オリジナルも別体パーツになっています。オリジナルはギラギラしたメッキでちょっと浮いた見た目です。

ファインダー

ファインダーを覗いてみるとこんな感じです。
二重像の見え方はまあ、こんな感じかな、という感じで、使えますがそこまでのものじゃないです。

ファインダーの倍率もかなり低いです。
紙の資料がないのでネット上からの引用となりますが0.7倍らしいです[2]トプ・ガバチョさんのWebサイトより「World Leica Copies – Japan – Minolta」(2022年12月5日閲覧)
http://www.topgabacho.jp/WLC/Japan/Minolta.htm

さまざまなところでこのファインダーはレンズシャッターカメラと同程度と記述されていて、わたしも正直そう思います。

ライカマウントとしては安い機種だったらしい

そう、ミノルタ35 II型というカメラはもともと、レンズ交換式の連動距離計カメラとしてはかなり安い製品だったみたいなんですよね。

そのあたりについて当時の広告をもとに見ていくと――

1955年の広告によると、45mmか50mmかわかりませんがF2.8付きで39,800円。50mm F2付きでは49,000円。
いっぽう他のメーカーの1955年の廉価なラインの製品を見ると、

Canon IID50mm F2付きが58,000円。F2.8付きだと48,000円になりますがミノルタよりレンズの明るさは一段下がります[3]『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.134よりアサヒカメラ1955年6月号広告

ニッカは値段が不明なのでレオタックスを見ると、
1955年5月にスローが付いたレオタックスF型はトプコール50mm F1.5付きが65,000円、F3.5付きだと38,500円
1955年9月のレオタックスK型の広告ではトプコール50mm F3.5付きでなんと26,000円の値段が付いているのですが、こちらはスローが付いていないのですよね[4]『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.211よりアサヒカメラ1955年5月号、9月号広告

同時期にこれより安いものを探すと、あとはライゼ 5cm F3.5がついたチヨタックスIIF型が28,300円なくらいです(チヨタックス、スローがついて28,300円というのはいくらなんでも異常な値段なのですが)[5]『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.148よりカメラ毎日1955年5月号広告

長々と値段について話しましたけど、ようするにミノルタ35というシリーズは比較的低い価格帯の製品だったということです。
といっても、レンズ交換式、フォーカルプレーンのレンジファインダーカメラというのは、当時の日本人からしたらそれだけで高級品なんですけどね。

廉価でもシャッターなど独自性は強い

でも、安い値段だからといって単なるライカコピーではなく、いろいろな独自性があるのがミノルタ35の面白いところなんですよ。
一眼式のファインダーもそうですが、たとえばフォーカルプレーンシャッターも、バルナックライカの3軸ではなく独自性の強い4軸の構造であることが知られています。

ご覧の通り、シャッター幕へ裏蓋側からアクセスする設計も含めてバルナックライカとまったく構造が違います。

シャッター幕へ裏蓋側からアクセスする設計

ちなみにこの後ろに外れるフィルムアパーチャーの部分、単なる真鍮の板ですし画像のようにシムが入っているので、精度はそれなりだと思います。

このフォーカルプレーンシャッターは話した通り4軸、布幕の横走りで、シャッター速度はBと1秒から1/500秒。

布幕の横走り

シャッターダイヤルは回転式、高速側とスローは分かれています。

高速側の回転するダイヤルですが、これもバルナックライカとは回転方向が逆です。
あとシャッター速度を変えるとき、バルナックライカに比べてかなり高いところまで持ち上げる必要があります。

シャッターダイヤルをより多く持ち上げる必要

ただ、シャッターダイヤルを持ち上げるときの重さはとても軽く、操作はそこまで不便ではありません。

巻き上げの感触について

軽いといえば、このカメラ、フィルムが入っていないときの巻き上げの感触がとても軽いんです。
ではフィルムを入れるとどうかというと、ゴリゴリ感はなくて、微妙に重めではありますが巻き上げはスムーズ、というか巻き上げの感触はしっかりしていて非常に良いです。

思うのですが、このカメラが華奢だと思われがちなのは、フィルムを入れずに空打ちするときの感触が軽すぎるからだと思うんですよね。
こういうところからも、カメラの感触って空打ちじゃわからないと感じます。

画面サイズは34mm x 24mm

画面サイズは34mm x 24mm

話が前後しますが、フィルムの画面サイズはバルナックライカに由来する36mm x 24mmではなく、34mm x 24mmです。
これは当時のカメラによくある理由で、最初のミノルタ35が32mm x 24mmのいわゆるニホン判だったことの名残りとされています。

これがこのミノルタ35 IIで撮ったネガですが、画面幅が狭いだけで1コマごとの送り量は同じなので、他のカメラで撮ったネガに比べてコマ間が広くなっていますね。

他機種のネガと比較

この画面サイズはミノルタ35の最終機種、ミノルタ35 IIBで36x24mmにやっと広がることになります。

細部の造作も独自

あとは、細かいところとして、巻き戻しへの切り替えや、裏蓋開閉キーの形状も独自性が強いですね。

セルフタイマーの問題点

そして、セルフタイマー。
バルナックライカにセルフがついたのは(希少なIIIdを除くと)IIIfの途中からですが、ミノルタ35シリーズは最初からセルフタイマーがついていました。

セルフタイマー

ですが、最初に話したようにこのミノルタ35 IIのセルフタイマーレバーは欠品していてオリジナルではありません。
このセルフタイマーレバーが外されてしまった理由、部品取りの可能性もありますがほかにも理由が考えられるんですよね。

それが、指掛けのついたレンズが干渉するということです。

もともとついていた、このスーパーロッコール45mm F2.8はいいんですよ。

純正品は干渉しない

純正品なので指掛けが少し高い位置についていて干渉しません。

いっぽう、これは旧ソ連製のインダスター50ですが見てのとおり指掛けが当たって取り付けできません。

指掛けのついたレンズが干渉する

これが当たるということはエルマーもダメですし、多くのレンズが付かないことでしょう。
ということでセルフタイマーレバーを外してしまうという選択肢は十分にあり得たと思うのですよね。
ここはミノルタ35シリーズのあまりよくない点です。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8

さて。
今回取り付けているレンズは、ミノルタ純正のSUPER ROKKOR 45mm F2.8です。

「梅鉢」とは?

SUPER ROKKOR 45mm F2.8

ご覧の通り独特な見た目をしていて、梅鉢レンズという通称で呼ばれている……のですが、梅鉢っていってもなんのことやら、ですよね。

梅鉢というのは家紋などに使われる伝統的な文様で、ようはピントリングが飛び出る形状が梅鉢の文様に似ているのでそう呼ばれているようです。

梅鉢

※フリー素材サイト 発光大王堂様より
「加賀梅鉢」のeps素材を使用させていただきました。
http://hakko-daiodo.com/kamon-c/cate1/ume/ume4.html

変な写りをするレンズ

あとで作例を出しますが、このレンズはかなり変な写りをします。
全体的に線が太くて、ボケているところはこってりした感じになります。

ほかのレンズにはない写りをするのは構成が特徴的だからのようで、このレンズは3群5枚。
なのですが前玉が3枚貼り合わせのほかに例を見ない設計なんですよね[6]「「帝国光学研究所」について8(千代田光学 ロッコール 45mm f2.8) – 写真レンズの復刻「無一居」」
http://www.photo-china.net/column/minolta.html

光学設計については素人ですが、見るからにへんな写りをしそうです。

小さいのに重いレンズ

あと、こんなに小さいレンズなのに非常に重いです。
鏡筒は金属の塊ですし、なんでこんな豪勢なつくりにしたんでしょうね。

後玉の後ろにはバッフルがついていて、真面目なつくりであるとはいえます。

作例

それでは、ミノルタ35 II型とスーパーロッコール45mm F2.8の作例を見ていきましょう。

使用フィルムはKodak ColorPlus 200です。

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

撮影はたしか、2022年の2月ごろです。
ウマ娘のキャンペーンをやっていた頃ですね。

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

日陰での撮影なので絞りを開いているのですが、ピント面はまあ普通に写っています。
ちょっとこれだと全体の写りという点ではわかりにくさもあるかもしれないのですが、

ちょっと絞っていますがこういう写真だと、

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

なんかこのレンズ、写りがちょっと変だぞというのが伝わらないでしょうか。
全然なんてことのない写真なんですけど、なんか、写りに濃厚さがあるんですよね。

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

この写真なんかも、全体のコントラストが強いはたしかにそうなのですが、それ以上に勝手に写真をドラマチックにしてしまってるんですよ。

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

一方、これは別の日の撮影ですが、こういうふうに絞って、そこまで画面に明るい部分がないと普通な感じです。

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

空が入っているとちょっとフレアっぽい場合もありますね。

Minolta 35 II + SUPER ROKKOR 45mm F2.8作例

このレンズ、デジタルでも十分に癖が楽しめるので単体で買う価値も全然あります。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

さて、ここまで出してきた2022年のはじめに撮った写真があまりよくなかったので、このスーパーロッコールを他のボディに付けて撮った写真も紹介します。
わたしが持っているボディでいちばん信頼している幕交換済みのゾルキー1に付けて撮ったもので、フィルムはこちらもKodakのColorPlus 200です。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

秋の夕方といういちばんエモーショナルな光線条件での撮影ではあるのですが、とにかく、やっぱり雰囲気がいいんですよ。
絞り込んでいますけど、とても雰囲気ある写りをしていますよね。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

さて、それじゃ開放だとどうなのかというと、はい。
これが開放での写真です。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

こうして見ると、アウトフォーカスの部分がぞわわーっとなっていて、まあはっきりいってボケがきれいとはいえないです。
でも、その感じがいいんです。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

手持ちのレンズだとゾナーが元になったJupiter-8も開放だとちょっとボケがぐるっとするのですが、それよりもさらに、ピントが合った部分を浮き上がらせる感じがある。

このあたりのカット、ちょっとアンダーですけど浮き上がっている感じというのが伝わるんじゃないかと思います。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

あと、ミノルタ35は34x24mmで画面サイズが横に狭いカメラですが、36x24mmのいわゆるフルサイズ、フルフレームのカメラで撮ると、ちょっと周辺部がケラれている感じがありますね。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

これ、いままでこのレンズを使ったときは気がつかなかったです。

ミノルタのスーパーロッコール45mmは、けっしてよく写るレンズではないです。
でもこのレンズにしかない写りがある。そういうレンズです。

SUPER ROKKOR 45mm F2.8追加作例(ボディはZorki-1)

まとめ

ということでミノルタ35 II型のお話でした。

紹介でも話したように、このカメラはけっして作りがいい製品ではありませんし人気もありません。
シャッター幕が死んでるジャンクだと、下手をすると2000円くらいで見つかったりします。
ゾルキーより安いです。

実際、このボディに実用性があるかというとあえてこれを選ぶ理由はあまりないのですが、シャッター幕へのアクセスが容易なので、フォーカルプレーンシャッターの構造を理解するのにはうってつけかもしれないですね。

あとレンズですが、スーパーロッコール45mm F2.8は見た目だけのレンズじゃないです。
このレンズにしかない写りがあります。
今回の作例は正直あまりよくないので、検索してほかの方の作例もぜひ見てみてください。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

脚注

脚注
1 『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.369
2 トプ・ガバチョさんのWebサイトより「World Leica Copies – Japan – Minolta」(2022年12月5日閲覧)
http://www.topgabacho.jp/WLC/Japan/Minolta.htm
3 『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.134よりアサヒカメラ1955年6月号広告
4 『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.211よりアサヒカメラ1955年5月号、9月号広告
5 『昭和10~40年 広告に見る国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.148よりカメラ毎日1955年5月号広告
6 「「帝国光学研究所」について8(千代田光学 ロッコール 45mm f2.8) – 写真レンズの復刻「無一居」」
http://www.photo-china.net/column/minolta.html