早川書房から文庫版が出たので、アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(上下巻)を買って読んだ。
前情報一切なしで、作者が『火星の人』と同じであることも知らなかった。
※『火星の人』は既読。映画は見たことがない。
読もうと思ったきっかけは、ネット上で『三体』に比肩する作品だと持ち上げられていたため。
結論としては、本作は三体とは方向性の異なる、エンターテイメントの佳作だと感じた。
今回、映画化にあわせて文庫化したが、たしかに映画にしやすい作品である。
というよりも、映像にしたときの見栄えも考えて書かれている部分があるのではないか?
作品内容としては、科学の要素はエッセンスで、メインとなるのは友情の話である。
あくまでも、宇宙を超えた友情の美しさを描いた小説である。
もちろん、これを若い人が読んだときに科学に興味をもつきっかけになることはあるかもしれない。
ただ、本作において科学は舞台装置にすぎない。
非常に面白く、購入初日に熱中しながら一気に読んでしまったが、そうやってエンターテイメントとして人を引き込む力はあるが、それで世界観が変わったかというと、うーん、という。
SF小説でいうと『三体』とか伊藤計劃の『ハーモニー』のような、人生観を変えるような作品からすると一段落ちる、というよりも、そのような立ち位置の作品ではない。
これは酷評ではない。
本作はエンターテイメントであり、世界についての記述を行う小説ではないという意味だ。
本作の評価を検索したところRedditで酷評されているものがヒットしたのだが、エンターテイメントとしての本作を好まない人がいるのもうなづける。
とても面白い作品。
しかしエンターテイメント。
舞台装置を愛でるのが好きなオタクの心をくすぐるのがうまい作品(『火星の人』も同様)。
そういう感想である。
