広中一成 『傀儡政権』『後期日中戦争』『後期日中戦争 華北戦線』を読んだ

広中一成『傀儡政権』『後期日中戦争』『後期日中戦争 華北戦線』の書影

中国関連に強く興味を抱いたことがきっかけでさまざまな書籍を読んでいるが、そのなかで、愛知学院大学の広中一成教授の日中戦争三部作を読んだのでメモ。

書誌情報は以下の通り(リンク先は角川書店公式)。

日中戦争三部作が言っていること

広中一成の日中戦争三部作が言っていることは、まず、日本では一般的に「アメリカに負けた」と思われているが、普通に中国に負けていたということである。

この三部作の後半2作のタイトルは「後期日中戦争」である。

この概念を提唱した理由が、太平洋戦争の開戦後に、中国での戦争がどうなったかが軽視、または無視されているという問題意識にある。

実際、これらの書籍の存在を知るまで、学校の授業で習ったように「盧溝橋事件から日中戦争がはじまりました」→「真珠湾攻撃で太平洋戦争がはじまりました=日中戦争はその前までです」という意識しかなかった。

2冊目『後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線』の序文によれば、そもそも、右派左派問わず、そもそも旧日本軍の中にいた人が日本軍を擁護しようとする書籍でさえも、太平洋戦争開戦後の中国戦線についてはスルーしているという。

各書籍の簡単な感想

『傀儡政権 日中戦争、対日協力政権史』

日本が満州事変以降に中国に立てた主要な傀儡政権について概略。

冀東防共自治政府、中華民国臨時政府、中華民国維新政府、中華民国国民政府(汪兆銘政権)についてそれぞれ章を立てて解説している。

本書は比較的読みやすく、すんなりとそれぞれの傀儡政権がどのようなものだったか頭に入ってくる。

単体で読んだときによくわかっていなくても、ほかの書籍を読んだとき、ああ、この本で出てきたな、となるために最初に読んだ方がいい。

『後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線』

非常にわかりやすい。

本書は中国で旧日本軍がさまざまな失敗を続けていたことを、もっとも明瞭に解き明かしている。

『後期日中戦争 華北戦線』

本書については読んでいて少し困惑した。

とくに1章「八路軍との容赦なき戦い――河北省」と2章「戦争犯罪の戦場――山東省」が、細かいエピソードが多く頭がついていかないのと、言葉足らず、というか、どうしても中国政府の公式見解に沿った文書のみをソースとせざるをえないことから、論理展開に苦しんでいるようなところを感じた。

(これは、だからといって信用できないと言っているわけではない)

3章以降、とくに4・5章の山西・閻錫山についての内容については、内容がシンプルでわかりやすかった。

文体が読みにくい件について

広中一成教授の書籍のレビューをAmazonなどで見るとよく書かれているのが、文体が悪い、読みにくいということだった。

実際、とても読みにくいというか、癖の強い文体だと感じる。

『傀儡政権』はですます調で書かれているが、不要な箇所でむやみやたらに「~のです」という言い回しが出てくるし『後期日中戦争』の2冊でも「~のか。」という問いかけやハム太郎のように「~のだ」という言い回しが多用されているのが鼻につく。

「~のです」や「~のだ」は、ここぞというところで使うならいいが、不要なところで使われているのでとても読みにくい。

しかし、このblog記事を自分で打ち込んでいて感じたのが、それは仕方ないことなのではないかということだった。

日本と中国の戦争、というか日本の中国侵略というテーマは、国粋主義者の声が大きくなったインターネットで袋叩きに遭うようなテーマである。

そういう内容について書こうとしたときに、キーボードを打つ手に力がこもってしまうのは仕方がないことなのかもしれない。

実際、自分はこの記事に着手したとき、普段のようにすらすらと文章を書き連ねることがなかなかできなかった。

個人的なこと

中国関係のことに興味を持ち、中国関連のサイトやサービス、文章にいろいろ触れたことで「インテリ(もしくはインテリ崩れ)が中国に興味を持つとコロっと左になる」というやつを、自分自身に対してとても実感している。

80年前の戦争についての見方や立ち位置についてだけいうならば、正直、中国が言っていることのほうが明白に「理」がある。

自分はインテリでさえなく、文学部出身のインテリくずれにすぎないが、どちらに正義があるかといわれたら、80年前の戦争については、日本には一切の正義がない。

このようになったのは、中国に興味を持つ以前、韓国製カメラについての調査をしたときに、ついでに韓国の他のことについても書籍をいろいろと読んだことにも遠因があるかもしれない。

お前はWokeだといわれそうだが、ろくでもないことをやったことは、素直に認めるほかない。

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