少し前のことなのだが、知人がTwitterで、外国人による神社仏閣への放火が増えていると主張するツイートをRTし、言及していた。
昨今、文化財が焼失したときに、その要因が外国人の放火のためであるという主張が頻繁に、それどころか常時行われるようになっている。
たとえば「中国人やイスラム教徒が文化財を燃やしている」というような主張である。
しかし、わたしはその主張は正しくないと考えている。
そして、その友人にそのような意見を持ってほしくないと考えている。
そこで、神社や寺院への放火は外国人の放火が原因ではないということを、データをもとに主張してみた。
※これは、その友人に対してデータをもととした主張がもっとも伝わると判断したから行ったことである。一般的には、初手でデータを切り口に説得を試みるのは有効ではないことが多いので注意が必要。
消防庁の消防統計(火災統計)をソースとした
ソースとしては、日本の総務省消防庁の「消防統計(火災統計)」を用いた。
以下のページで各年のデータを閲覧できる。
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/
データをまとめたのは2026年8月だったが、その時点で2016年(平成28年)から2025年(令和7年)までが公開されていた。
ただし、2025(令和7)年は概数である。
2024(令和6)年以前は確定値。
このデータの中から
- 「都道府県別及び建物用途別建物火災件数」の「神社・寺院等」
- 「放火火災の発生状況」にある「神社・寺院等」
を比較した。
「神社・寺院等」の火災件数と放火件数を示すグラフ
「神社・寺院等」の火災件数と放火件数をグラフにすると以下のようになる。
火災件数
これによれば、神社・寺院等の火災件数は2018~2024年まで例年60件前後で大きな変化がない。
つまり、統計上は「神社や仏教寺院の不審火は増加していない」といえる。
「60件前後」から外れる年は、以下の理由が考えられる。
2025年(令和7年)の件数が少ない理由
2025(令和7)年の件数が少ないのは、建築物の分類方法が理由の可能性が高い。
2025(令和7)年は確定値ではなく概数であることが要因と思われる。
「その他用途の建物火災」が938件→1,998件(+113.0%)に増加しているほか、「幼稚園等」も-38.1%と大きく減少している。
2016(平成28)年、2017(平成29)年の件数が多い理由
2016(平成28)年、2017(平成29)年の件数が多い理由は不明である。
2016年の超過分はほぼ放火であるのに対して、2017年は放火件数が少なく、超過する理由が異なる。
ただしどちらにせよ「外国人の神社・寺院等への放火が増えている」という主張とは関係がない。
放火件数
神社・仏閣等への放火件数も、例年10件前後で、特段増加していない。
2025(令和7)年の件数が少ないのは、こちらも同様に建築物の分類方法が理由の可能性が高い。
2016(平成28)年、2017(平成29)年、2018(平成30)年の件数が多い理由は不明。
Claudeがまとめてくれたグラフ
わたしはあまり、こういったAIがまとめたイラストというのは好きではないのだが、勝手にClaudeがまとめてくれたので、これも友人へ提示した。
神社や寺院への放火が増えたと感じる理由
統計上、増加していないにもかかわらず神社や寺院への放火が増えたと感じる理由は、ニュースバリューがSNSの影響で高まり、より多く報道されるようになり、それによりさらに注目が高まっていることだと思われる。
以前、少年犯罪が実際には減っているのに、多くの人が「増えている」という印象を持ったのと同様のことである。
このデータで反駁できる場合とできない場合
このデータで反駁できるのは、統計上減っていると主張したら納得してくれる人だけである。
もしも相手が、総務省や消防庁の公開しているデータなど信用できないと主張する人の場合は通用しない。
また、データや統計を用いて説得することが、相手にマウントやロジハラと捉えられた場合も反駁できない。
「中国人やイスラム教徒が文化財を燃やしている」という主張の源泉は、日々の鬱憤を晴らすことであり、日々の鬱憤を晴らす手段を頭ごなしに否定された人間は怒るだけである。
しかし、それでも反駁しなければならないのだが。
元データのスクリーンショット
総務省消防庁のページで公開されているものであり問題ないと考えられるので、今回の分析に用いた元データのスクリーンショットを貼る。
