【没台本】Canon AE-1 カメラ業界のゲームチェンジャーとなった一眼レフ

Canon AE-1

みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回はCanonの一眼レフカメラ、Canon AE-1を紹介します。

【この記事は没台本をそのまま投稿したものです】

Canon AE-1とは

Canon AE-1は1976年の4月に発売したフィルムカメラです[1]「AE-1 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film93.html

値段ですが、今回取り付けているレンズとは異なるのですが50mm F1.4 S.S.C付きで81,000円[2]「AE-1 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film93.html
それから、このカメラを語るうえで重要なアクセサリーのパワーワインダーAは25,000円だったということです。

さて、AE-1は当時としては思い切った電子制御化やコストダウンを行い、カメラという市場を根本的に変えたエポックメイキングな製品といわれています。

これから初めてマニュアルフォーカスの一眼レフカメラを使いたいという方にはいまでも人気がある一方で、カメラというものが精密機器から電気製品になるきっかけとして、この機種が苦手だという愛好家の方も多い印象です。

それじゃあ実際にはどうなのか、このCanon AE-1について見ていきたいと思います。

Canon AE-1の性能面・特徴

Canon AE-1は、ざっくりいうとシャッター優先AEを搭載したマニュアルフォーカスの一眼レフカメラです。

シャッター

シャッターは布幕の横走りフォーカルプレーンシャッター。
電子制御です。

シャッター速度はBと2秒から1/1000秒まで。
スローシャッターが1秒ではなく2秒まであるのが、電子制御だぞ! というアピールのようにも感じます。

このシャッターは布幕横走りながら高度にユニット化されているということで、このAE-1のコストダウンに一役買っているらしいです[3]『クラシックカメラ専科No.30 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.45

シャッター優先AEとマニュアル露出、露出計

はじめにも話したように、露出制御、いまでいう露出モードはシャッター優先AEとマニュアル露出です。

このAE-1は基本的にはシャッター優先AEで使うことを前提としたカメラで、レンズの絞りリングをAの位置にして、シャッターダイヤルを任意のシャッター速度(露光時間)に合わせると自動で絞りの値が決まる、という仕組みになっています。

具体的にどういう値が求められたのかは、シャッターボタンを半押しする、もしくは左手側のこの黒いボタンを押すと、絞りの値がファインダー右側に針で表示されます。

絞り値が設定可能な範囲外になった場合は、ファインダー右下で赤いLEDが点滅して警告してくれます。

いっぽうマニュアル露出にした場合ですが、シャッター速度を設定したあとに、シャッターボタンを半押し、もしくは左手側マウント脇の黒いボタンを押すと、ファインダー右側の針が絞りの数字の上で止まります。
この針が示した値通りに絞りリングで絞り値を設定すると、露出計が示した値に設定される、という流れになります。

ほかの多くの一眼レフカメラのように露出計の針がシャッターと絞り双方に連動する仕組みではなく、ここはかなり不便です。
このあたりが、Canon AE-1があくまでもシャッター優先AEで使うことを前提としたカメラだといわれる部分です。

いっぽう、シャッター優先AEを前提としているだけあってシャッター速度の変更はとても行いやすく、シャッターダイヤルは大きく指掛かりもとてもよいです。

シャッターダイヤルの縁がカメラの右側面や右前側に飛び出ているので、右手の親指をダイヤルの側面に添えて簡単に回すことができます。
これならファインダーを覗いたままシャッターダイヤルを回すこともできますね。

露出補正

AE、自動露出を前提としたカメラなので逆光などの場合は露出補正が必要になるわけですが、このAE-1には、のちのカメラに搭載されるような露出補正ダイヤルは設けられていません。
そのかわり、カメラを構えたとき左手側、レンズマウントの側面に逆光補正ボタンがあります。

この銀色のボタンです。
このボタンを押し込むと絞りが1.5段分開かれる。
つまりプラス1.5段分の露出補正が行われます。

そのほかにも当然、フィルム感度の設定を手動で変更して露出補正を行うことも可能ですが、その操作を理解している方はマニュアル露出に設定しなおしたほうが早いと思うので、基本的にはAE-1の露出補正はこのプラス1.5段の露出補正のみ、と考えるのがよいのではと思います。

電源

電子制御のシャッターということで使用には必ず電源が必要です。
電源は4G-13型酸化銀電池、つまり4SR44もしくは4L44アルカリ電池を1つ使います[4]「AE-1 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film93.html

Canon AE-1は電池食いだといわれることがありますが、ちょっと今回については長期間使ったわけではないので評価できません。
ただ、4LR44という微妙に高めな電池を使ううえ、1976年当時の一眼レフとしてはイレギュラーな電池が切れるとまったく写真が撮れなくなるカメラだったということで、よりその印象が強くなったというのもあるんじゃないか、と思います。

巻き上げ

続いて巻き上げについて。

巻き上げはレバー巻き上げで、分割巻き上げも可能です。

巻き上げの感触はかなり良好な部類だと感じます。
重さが巻き上げの最初と最後で変わらず、ゴリゴリした感じもないです。

それから巻き上げといえば、巻き上げ軸がフィルム先端のパーフォレーション(フィルムの穴)を引っかけて装填する普通の形式なのもポイントが高いです。

Canonのカメラはもう少し前の時代だとQL(クイックローディング)という独自の方式を採用しているのですが、そちらのほうがむしろ癖があって使いにくいのですよね。

ワインダーを普及させたカメラ

さて。
今回の動画は残念ながらひとつこのカメラの大事な要素が抜け落ちています。
それが、ワインダー、つまり電気モーターによる自動巻き上げを大々的に宣伝、普及させたということです。
このCanon AE-1には、ボディ下部にパワーワインダーAというアクセサリを取り付け可能です。
ボディ下部のこの銀色の蓋はワインダーの接続部分ですね。
ワインダー自体はそれまでも存在したアクセサリだったのですが、AE-1の発売にあたっては「連写一眼」というキャッチコピーで大々的に宣伝。
実際のところ一眼レフのワインダーをどれくらいのユーザーが同時に購入したかはわかりませんが、ワインダーというものを一般ユーザーが使うアクセサリとして一気に認知させたのは間違いありません。
「連写」という単語はいまでは普通に使われていますが、『クラシックカメラ専科No.30 キヤノンハンドブック』の記述によるとこの広告で初めて使われた造語だということです[5]『クラシックカメラ専科No.30 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.45

パワーワインダーAの巻き上げ速度は毎秒2コマでそこまで速くはないのですが、電気モーターで巻き上げができるということ自体に意義がある、そして、この数年後にはカメラ自体にワインダーが内蔵されるのが当たり前になるわけですが、いまからみるとそういう時代の伏線となったことこそが重要だと感じます。

セルフタイマー

電子制御のカメラだなぁ、ということを強く感じる部分がセルフタイマーです。
セルフタイマーを使うには、シャッターボタン脇の飛び出ている部分をカメラの前側へ止まるまで回します。
この状態でシャッターボタンを押し込むと、セルフタイマーが作動し始めてLEDが点滅します。
作動時間は10秒。
電子制御だけあってぴったり10秒です。
このLEDですが、シャッターが切れる直前に点滅が早くなるなどの仕掛けはなく、同じ速さで点滅するだけなので、そのことだけ覚えておきましょう。

このセルフタイマーのスイッチ部分ですが、反対側に回すとシャッターボタンのロックにもなります。
カメラを構えたとき手前側を見るとロック部分にはLと刻印されています。
Aの表示が撮影可能な状態です。

ファインダー

ファインダー視野は広くとても見やすいです。
ピントの山もとてもつかみやすいと感じます。
ファインダースクリーンは中央部にスプリットイメージ、その周りにマイクロプリズムがある、これくらいの年代の一眼レフとしてはとても一般的な形式です。
あとに出たA-1やAE-1 Programといったカメラはスクリーン交換ができるのですが、このAE-1はスクリーン交換はできません。

レンズマウント

レンズマウントはFDマウントで、各種のFDレンズ、New FDレンズが使えます。
マウントの脇には絞り込みスイッチがあり、押し込むと固定されます。
この状態にすると絞り込み測光ですがFLレンズも使用できます。

レンズを取り付けた状態だと絞りのプレビューを行うことができますが、絞りの位置がAの場合は絞りプレビューは使用できません。

こういうのでいいんだよ。中国ブランドレンズベスト3

ジャンクばかり漁るような人なので買えなかったのですが本当はこういうのが欲しかったというレンズランキングです。

1位:TTArtisan 50mm F0.95 ASPH

クラカメブームも今は昔、カメラ趣味の本場はもはや中国なんじゃないかと思わせるブランド、銘匠光学。 MマウントでF0.95のレンズは趣味のための存在にほかならないのですが、それをいま作るというのは本当に粋だなあと感じる商品です。

2位:TTArtisan 28mm F5.6(Mマウント)

35mm一本よりも50mmと28mmという人だったので、28mmレンズは好物でした。 ライカMマウントの28mmは安いレンズの決め手に欠ける焦点距離なので、中国製のこのレンズはありがたい存在だといえます。

3位:FUNLEADER CAPLENS 18mm F8

何考えてるんだ! といいたくなるような広角レンズ。 昔だったらWaiWaiワイドのレンズを移植したりしてたのに。 もうこういう商品は中国の人に任せておけばいいんじゃないかな。

カメラの電子化

さて。

機能やスペック面について見てきたわけですが、このAE-1というカメラが歴史に名前を残しているのは、単純にそういう数字とか、ワインダーが使えることだけが理由ではないのですよね。

このAE-1というカメラが歴史上なぜ重要なのか。
それはカメラの電子化を進めたことと、大幅なコストダウンを実現したということが理由なんです。

まず電子化ということ。
よくカメラ好きは機械式シャッター、メカシャッターと電子式シャッターということを二分して考えがちですが、電子式シャッターといっても、シャッターが電気の力で制御されているというだけでいっしょくたにできるものではないようです。
考えてみれば当たり前で、1960年代のヤシカエレクトロ35のシャッターと現代のデジタルカメラのシャッターはどちらも電気で制御されていますが同じなはずがないですよね。

ヤシカエレクトロ35の内部

↑ヤシカエレクトロ35の内部

Canon AE-1が重要なのは、その点でエポックメイキングなカメラだったからです。
具体的にいえば、カメラ内部にマイクロコンピュータを組み込んで制御させた、ということです[6]「AE-1 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film93.html

わたしはこういう分野が素人なので「デジタル」という単語を安易に使うことはできないのですが、当時の文献を見る限り部分的には制御がデジタル化されている、と受け取ってよいようです[7]山中寅清 瀧島芳之 相澤紘 「高度の電子技術との結合による一眼レフカメラの開発」『精密機械』第44巻3号、pp.81-86
ただし、翌々年の1978年に登場したCanon A-1では「完全デジタル制御」がうたわれているので、AE-1の時点では完全に制御がデジタルであるというわけではないようですね。

AE-1とコストダウン

ともかく、当時としては最先端のICやLSI、そしてCPUを用いた電子制御が行われているのですが、これは単純に高度かつ高精度な制御を行うためだけじゃなかったんですよ。

電子制御のメリット。
それが部品点数を減らしてコストダウンが可能になったということ。
それにより、それまでのAE、自動露出の一眼レフに比べて大幅に低価格になった。

Canon公式サイトのCanonカメラミュージアムの短い文章に「部品点数を従来機種より300点も減らした」とアピールされているくらいなので、Canon的にこのカメラのもっとも重要なポイントだといって差し支えないと思います[8]「AE-1 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film93.html
それから生産も自動化を大幅に取り入れたということです。

Canonといえば当時もいまも最大手のカメラメーカー、かつ当時すでに多角化が進んでいた会社であるわけですが、そういうちゃんとしたメーカーが作るカメラなので性能も信頼性も兼ね備えています。
そういうクオリティの高いカメラがそれまでよりも安く手に入るようになった。
Canonのカメラにはほかにも初代CanonetやEOS Kiss、最近ではEOS Rシリーズなど高性能かつ安い商品で勝負をかけたものがいくつもありますが、このAE-1はそういうえげつないカメラの代表格なのは間違いありません。

AE-1とオイルショック

あと、安いカメラが求められていたのは当時の時代背景も反映されているようですね。
そう、オイルショックです。
リアルタイムのときまだ生まれていなかったので実感しにくいのですが、1970年代、オイルショックというのは後の時代から想像する以上に大きな事件だったようです。

このあたり参考にしたのが専門的な文章ではないのですが 、第一次オイルショックでトイレットペーパーが買い占められたのは1973年の秋らしいです[9] … Continue reading

ちょうどそのころ、1973年の11月に、AE-1と似たスペックのCanon EFというカメラが、50mm F1.4 S.S.C付きで89,500円で発売しています[10]「EF – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film88.html

最初に話したようにAE-1の値段は、1976年に50mm F1.4 S.S.C付きで81,000円。
あれ、コストダウンしたっていうけど、たった8500円しか安くないのか、と感じてしまいますが、実際にはそれ以上の差があったようなのですよね。

当時「狂乱物価」という単語があったとのことですが、これソースがWikipediaで申し訳ないのですが消費者物価指数が1973年には11.7%、1974年には23.2%上昇。
ようするにインフレです。
しかもオイルショックの影響で不景気に陥る。

ということでAE-1の81,000円という値段は、単純に価格を比較する以上に安い値段だった、というわけですね。

もちろん不景気なので、カメラを買う人もより安いカメラじゃないと買えないわけです。
その点で、性能がよく、ちゃんとしたメーカーが作っていて、しかも安いカメラが最高の選択肢だったのは間違いないわけです。

AE-1と他メーカー ゲームチェンジャーとなったカメラ

でも、そんなCanon AE-1は他のカメラメーカーからしたらたまったもんじゃない製品なわけです。
自社の製品より安くて性能がいいカメラがライバル企業から出てきたら悪夢です。

Nikon、PENTAX、MINOLTA、OLYMPUSといった大手はそういう時代に対応していったわけですが、オイルショック後のこの時期、実際、ペトリやミランダといった企業が倒産。
トプコンのようにカメラ事業から撤退するメーカーも出てきました。

ペトリ、ミランダ、トプコンといったメーカーが脱落したのが直接的にAE-1の影響だといいたいわけではもちろんありません。
でも間接的には、このAE-1や、その後Canonや各社から続々と登場する電子化されたカメラに太刀打ちできなかったことが理由なのは間違いないでしょう。

そう、Canon AE-1はゲームチェンジャーだったんです。

じつは、いまでは古めかしいカメラを作っていたと思われがちなペトリやミランダといったメーカー、1970年代前半まではそこまで遅れた製品を作っていたわけではないと思います。
それどころか、旧ソ連のZENITや東ドイツのPrakticaでさえ、日本の一眼レフのメーカーとの差が致命的なレベルにまでは達していなかったのではないでしょうか。

これは業界紙の「週刊カメラタイムズ」に1973年に掲載された広告なのですが、いちばん大きく扱われているMEPROZENIT-PROはもちろん当時としても時代錯誤なカメラです。

「週刊カメラタイムズ」に1973年に掲載された広告

※広告についてはインターネットに掲載している方が多いので掲載して問題ないと考え貼っています。

でも、機械的な部分だけでいえば使えてしまうし、値段を大幅にディスカウントすれば商品として成り立つ余地があった。
また日本のメーカーでいうと、つくりが悪いとされるメーカーの代表格とされるペトリの一眼レフでさえも、1980年代の東ドイツのPrakticaの一眼レフよりずっと作りがいいんですよね。
ようするに、機械部分と単純な電気露出計くらいなら、トップメーカー以外でもついていく余地があった。

でも、Canon AE-1のような集積回路が使われたカメラが一気に当たり前になるとそうもいっていられなくなるわけです。
しかもそういうカメラは性能がよいうえに安い。

これ、ペトリの最後の時期の一眼レフのトップカバーを開けたところですが、ご覧の通りAE-1とは大違いで、ひとつ前の時代の内容です。
集積回路を用いたカメラには、これとはまったくレイヤーの違う技術が必要だった。

↑上記部分画像素材なし

一眼レフカメラという製品を作るうえで、それまでにない技術を必要とするようにしてしまった。
それこそがCanon AE-1がゲームチェンジャーだというゆえんなのです。

AE-1とネーミング

ところで細かい点として、AE-1はカメラのネーミングにも影響を与えたことが知られています。

PENTAX MV-1やFUJICA AZ-1。
この時代、競合他社の廉価なグレードのカメラに類似の名称が散見されるのですよね。

もちろんそれぞれちゃんとした会社の作った、きちんとした製品ではあるのですが、なりふり構わずある種類似品のようなネーミングを使わせてしまったことが、AE-1の影響力を物語っていると思います。

カメラ好きにとっての「電子化」

ここまではCanon AE-1というカメラが歴史上どういう立ち位置にあったか、という視点からみてきたわけですが、ここからの内容はカメラ好きからみたAE-1についてです。

ひとくちにカメラ好きといっても、いろいろな立場がありますよね。

たとえば最新のカメラが好きで、飛行機とか電車とかポートレートとか、機材の性能がものをいう被写体を撮る人。
1970年代後半当時の、そういう立場のひとからしたら、Canon AE-1というカメラはとても評価できる機種だったと思うんですよ。
もちろんフラッグシップの機種でこそないですが、若い世代の人がカメラを一台だけ選ぶ、となった場合AE-1は十分以上に満足できるカメラだったはずです。

ただし、そういうユーザーの方は技術の進歩に合わせてカメラを買い替えて、AE-1は徐々に使わなくなっていったはずです。

古いカメラが好きな人にとってのAE-1

では、わたしを含め古いカメラが好きな人にとってはどうでしょうか。

残念ながら、このCanon AE-1はけっして評価が高いカメラではありません。
歴史上、このカメラが重要だったことは万人が認めるところではあると思います。

でも、カメラ内部の電子化、コンピュータ化が行われたいわゆる「家電のようなカメラ」というものは、精密機器としてのカメラが好きな人にとっては、あまり魅力的ではないというのは仕方がないところです。

実際、精密機器として作りの良さでいったら、AE-1の5年前に登場したフルメカニカルの一眼レフであるCanon FTbのほうがメカメカしくて趣味の道具としてはよい、と感じる人は多いでしょう。

あとは、カメラ分解が好きな人にとってはこういう電子化されたカメラは分解が難しい、と思われているのも要因ですね。

トップカバーを開けてみるとこんな感じ。

Canon AE-1内部

いまとなっては昔の電子回路に見えるのは確かですが、それまでのメカシャッターのカメラに比べてハードルが高く感じます。
実際、フレキ基板が壊れたら直せないのはそれはそうなんですよね。

あと細かい点として、AE-1は内部の連動に細いタングステン線が使われています。
素人分解するにあたって、もしこれを切ってしまうと詰みになるのも、カメラ分解が趣味の人には苦手意識を持たれやすいところだと思います。

AE-1って、そんな悪いカメラなのでしょうか?

でも。
実際問題としてAE-1って、そんな悪いカメラなのでしょうか?

今回、わずかですがAE-1を触って、撮影してみて、とても感触がよく、気持ちよく使えるカメラだと思ったんですよ。

前半の紹介では巻き上げの感触がとてもよい、ということを話しました。

ほかにも、こうして何度もシャッターを切っていますがシャッター音がとても気持ちがいい。
一眼レフのシャッターを切っている! という感覚を演出するような軽快な音がする。
このシャッターがいい音だと感じたのはわたしだけではないようで、なんと、あのiPhoneのシャッター音はCanon AE-1の音をサンプリングしたものだということです[11]「Jim Reekes: The Apple sound designer who created Sosumi」(2022年12月28日閲覧)https://www.cnbc.com/2018/03/24/jim-reekes-the-apple-sound-designer-who-created-sosumi.html
ただしあくまでもサンプリング元がAE-1であるだけで編集は行われているみたいですけどね。

そしてファインダーもいい。
とても見やすい。

あと、トップカバーがプラスチック製なことは有名ですが、全体的にそれまでのCanonの一眼レフよりも小型化したことも含め、軽量化されていて取り回しも便利です。

感覚も性能のひとつ

まあファインダーはともかくとして、シャッター音が気持ちいいとか、それはカメラの性能とは関係ないところじゃないかと思うかもしれませんが、それもまた性能の一つだと思うんですよ。
わたしはこれまでニコンとペンタックスを多く使ってきて、判官びいきでCanonをあまり触ってこなかったのですが、このチャンネルをはじめてからCanonのカメラを触ってみて、思った以上に感触の良いカメラが多いことに驚きました。
おそらくCanonは、ユーザーが触っていて気持ちよく感じることを意識してカメラを作っていると思うんです。
安いカメラであっても、たとえばEOS Kissのシャッター音はとても気持ちがいい。
プラスチック丸出しのEOS 10の質感は、プラスチックとしては最高レベルによい。

わたしもその一人ではありますが、カメラマニアをやっているとどうしても、あとの時代の視点でカメラを判断したくなります。
長い年月を経てもメンテナンスできるカメラこそよいカメラだと思いがちです。
でも、たとえば20歳のとき買ったカメラをメンテナンスして50年使い続けている70歳の人がいたとして、その人はいま、普段はスマホかガラケーで写真を撮っているはずなんですよ。

Canonというメーカーはあくまで現在のためにカメラを作っている

という点からいって、Canonというメーカーはあくまで現在のためにカメラを作っている。
新品のときに買ったユーザーのための気持ちよさを重視して、カメラを作っている。

このAE-1というカメラはあくまでも1976年という現在のためにつくられたカメラなんです。
それは当然のことで、どのメーカーだって当然そうなんですけど、その少し前まではオーバーホールしつつカメラを長く使うという思想も存在したわけです。

でも、一般ユーザーにとってはカメラはそういう道具ではなくなってしまった。
メンテナンスして使い続けるのではない、良くも悪くも未来には動かなくなるかもしれないカメラの最初の世代というのがAE-1だったのだと思います。

その代わりに、軽快な動作と高機能と安さを手に入れた。
未来には動かなくなるカメラであることには、プラスの面もマイナスの面もある、ということです。

Canon AE-1&FD 50mm F1.8 S.Cの作例

今回、話が長くなりましたが最後にこのAE-1を使って撮影した写真を見ていきましょう。

レンズはいま付けているFD 50mm F1.8 S.Cを使いました。
ちょっと内部にクモリがあります。

使用フィルムはKodak ColorPlus 200です。

いやー、なんというか「フィルムカメラです!」みたいな写真になって驚いたんですよ。

Canon AE-1&FD 50mm F1.8 S.Cの作例

Canon AE-1&FD 50mm F1.8 S.Cの作例

ちょっとレンズの状態がベストではないので少しフレアっぽさもあります。
でも光の感じとか、色合いとか、とてもすがすがしい感じに出ています。

ただ、わたしはどちらかというと絞り優先AEで育ってきてシャッター優先AEに慣れていないので戸惑った部分もありました。
たとえばこの写真。

Canon AE-1&FD 50mm F1.8 S.Cの作例

寄りで花を撮っていますが背景の玉ボケが絞り込んだ形になっていますよね。
これ、シャッター優先AEなので絞り値は自動で決まります。
なので絞り値を決め打ちで撮るような使い方はちょっと苦手なのですよね。

でも、当時のユーザーからしたらそれよりも手ブレ限界のシャッター速度を明示的に設定できるのはメリットだったはずです。

Canon AE-1&FD 50mm F1.8 S.Cの作例

Canon AE-1&FD 50mm F1.8 S.Cの作例

このネガは2022年の夏前の撮影で、ちょっと動画にするまで間があいてしまったのですが、Canon AE-1は肩から下げていても邪魔にならないし、シャッター音や巻き上げの感触もよいし、使っていて楽しかった記憶があります。

Canonのカメラ、カメラそのものへのフェティッシュな偏愛よりも写真を撮る行為にフォーカスしている印象があるのですが、まさにCanon AE-1というカメラも写真を撮るということをやってこそ、その魅力がわかるカメラなのだと思いました。

まとめ

ということでCanon AE-1のお話でした。

今回Canon AE-1の立ち位置や歴史的意義についての話が非常に長くなってしまいましたが、やっぱりそれだけ、このカメラが与えた影響というのは大きかったのだと思います。

大きく出た言い方になりますが、カメラ業界を変えたカメラ、といっても言い過ぎではないはずです。

それくらい重要なカメラかつ、経年劣化はありますが整備されたものならまだまだ使える機種であることも事実です。
ちょっとAE-1で整備済みといわれているものは玉石混淆ではあるのですが、信用できるお店から買って使うなり、カメラいじりができる人はジャンクを買って使ってみるなり、だまされたと思って一度使ってみる価値はあると思います。

やっぱり、歴史に名を残すカメラは出来がいいな、と今回も感じたのでした。

ありがとうございました。

御部スクラでした。

こういうのでいいんだよ。中国ブランドレンズベスト3

ジャンクばかり漁るような人なので買えなかったのですが本当はこういうのが欲しかったというレンズランキングです。

1位:TTArtisan 50mm F0.95 ASPH

クラカメブームも今は昔、カメラ趣味の本場はもはや中国なんじゃないかと思わせるブランド、銘匠光学。 MマウントでF0.95のレンズは趣味のための存在にほかならないのですが、それをいま作るというのは本当に粋だなあと感じる商品です。

2位:TTArtisan 28mm F5.6(Mマウント)

35mm一本よりも50mmと28mmという人だったので、28mmレンズは好物でした。 ライカMマウントの28mmは安いレンズの決め手に欠ける焦点距離なので、中国製のこのレンズはありがたい存在だといえます。

3位:FUNLEADER CAPLENS 18mm F8

何考えてるんだ! といいたくなるような広角レンズ。 昔だったらWaiWaiワイドのレンズを移植したりしてたのに。 もうこういう商品は中国の人に任せておけばいいんじゃないかな。

脚注

脚注
1, 2, 4, 6, 8 「AE-1 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film93.html
3, 5 『クラシックカメラ専科No.30 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.45
7 山中寅清 瀧島芳之 相澤紘 「高度の電子技術との結合による一眼レフカメラの開発」『精密機械』第44巻3号、pp.81-86
9 参考Webページ:「【日本のエネルギー、150年の歴史④】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁」(2022年12月28日)https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/history4shouwa2.html
10 「EF – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月28日閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film88.html
11 「Jim Reekes: The Apple sound designer who created Sosumi」(2022年12月28日閲覧)https://www.cnbc.com/2018/03/24/jim-reekes-the-apple-sound-designer-who-created-sosumi.html
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