みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回はCanonのオートフォーカス一眼レフカメラ、EOS 620について紹介します。
(この記事は動画用の没台本をそのまま投稿したものです)
Contents
Canon EOS 620
外観
概要
EOS 620は1987年の5月発売。
定価はボディが108,000円です[1]「EOS620 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日
閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film123.html。
Canonのオートフォーカス一眼レフ、EOSシリーズの最初の機種は同じ1987年3月に発売したEOS 650でしたが[2]「EOS 650 / 650 QD – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日
閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film122.html、このカメラはそれに対する上位機種となります。
スペックや特徴
ではまず、スペック面や特徴からみていきましょう。
EOS 620の操作系(スイッチ等)
CanonのEOSシリーズは最初の時点でかなり高い完成度を持っていました。
初期の機種ではモード切替など操作系が定まっておらず手探りという感じがなくはないですが、ボタンとダイヤルによる操作自体はその後の機種にも通じる使いやすいものになっています。
電源スイッチは左手側の背面にあり、右の緑色のマークに合わせると初心者でも使いやすい全自動に。この状態だとフォーカス音と手振れ警告音も鳴ります。
左に回すと、まずA位置。ここはさまざまな手動設定が可能、かつ音が鳴らないモードです。
突き当りまで回すと音が出るアイコンになっていて、ここはアイコンの通り、手動設定可能かつフォーカスと手振れ警告の音が鳴るモードになっています。
わたしは今回撮影したときは基本的にA位置を使っていました。
撮影モード
撮影モードはプログラム、シャッター優先、絞り優先、マニュアルのフルモード。
これは下位機種のEOS 650も同様です。
モードの切り替えは左手側天面のモードボタンとダイヤルを組み合わせて行います。
シャッター
スペック的なところですが、シャッター速度は1/4000秒まであります。
下位機種のEOS 650は1/2000秒まで、また600番台をさらにブラッシュアップした機種のEOS 630(1989年)もシャッター速度については1/2000秒までに留まっているので[3]「EOS 630 QD – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日
閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film131.html、ここについてはEOS 620の優れている部分だといえます。
シャッターは縦走りのフォーカルプレーンシャッターです。
さて、このシャッターユニットなのですが、1995年くらいまでのEOSシリーズはダンパーゴムが加水分解してシャッター羽根に付着する不具合があることが知られています。
ただ、このEOS 620はその不具合が生じないともいわれているのですよね。
現にこのEOS 620も活きています。
もしかするとシャッター自体が異なるからなのかもしれません。
ただ、この動画をUPしている時点で発売から35年以上も経っているので今後どうなるかはわからないんですけどね。
操作その2
そのほかの操作も、ボタンとダイヤルの同時操作で行います。
例として露出補正は、モードボタンの下にあるボタンを押しながらダイヤルを回すと行うことができます。
また、使用頻度が少ないと思われる操作は背面下部の、蓋がついた部分のボタンにまとめられています。
セルフタイマー、オートブラケット、感度の手動設定などですね。
ここなのですが、さすがCanonというか「よく使う機能」と「よく使わない機能」の取捨選択がとても的確だと感じます。どことはいわないですが機能の優先順位の概念を読み誤ったカメラもありますからね。
AF
さすがはEOSシリーズだけあって、オートフォーカスはとても速く、しかも的確だと感じます。
これが1987年のカメラだとはとても信じられないくらいです。
わたしはもともと実家にあったのがペンタックスの一眼レフだったのでα-7000でも十分速いと感じていたのですが、正直それとも比べ物にならないです。
AFポイントは中央一点ですが、そのことを除けば全然、デジタルカメラの時代に入るまで実用できたと思いますね。
実際たとえばサンダー平山さんが書いた『中古カメラ実用機買い方ガイド』という1996年の本を見ると、EOS 650とEOS 620は発売から9年経った時点でも全然実用機として紹介されてるんですよね。
1996年時点でも、EOS 620は中古でなんと3万円も値段がついていたらしいです[4]サンダー平山『中古カメラ実用機買い方ガイド』1996年、学習研究社、pp.68-69。。
ファインダー自体もとても広く見やすいです。
EOSのジャンク品は、正直この620であってもEOS Kiss系であっても値段はそんなに変わらないですが、ファインダーの見やすさを基準にするならこれを選ぶのはアリだと思います。
ただその代わり、もっと後の機種に比べるとちょっと重いのですけどね。
さまざまな表示はファインダーの下部に出ます。
内容に不足はないです。
電源
電源は2CR5リチウム電池です。
電池はグリップ部分を取り外して入れる構造になっています。
このあたり、もっとあとの時代のカメラに比べてとてもつくりがよく、AF一眼レフとはいえかなり力が入っていると感じますね。
1987年をバブルといっていいのかわかりませんが、コストがふんだんにかかっていてバブリーです。
ストロボ
このEOS 620はだいたいの機能は揃っているカメラですが、唯一ストロボについては外付けする必要があります。
ここについては各社とも、内蔵ストロボが標準装備になるのはもう少しあとの時期なので仕方ないですね。
今回はジャンクで入手したスピードライト300EZを取り付けましたが、このストロボこのように、ズームに応じて照射角が可変します。
液晶
あと、さまざまな状態の表示はボディ上面の液晶に表示されます。
ここには本来、有機ELによる照明がついていて、そのことがこのカメラの売りだったらしいのですが、じつはその部分、経年劣化で不具合を起こしてすぐに電池を使い切ってしまうことが知られています。
これについてググると有機EL部分の配線やフレキ基板自体を切断してしまう対処法が紹介されているのですが、いくらなんでもそれは乱暴なので、今回は画像のとおり配線のハンダを外して対応しました(画像のあときちんと絶縁しました)。
Canon EF 50mm F1.8 II
さて、今回このカメラで撮影したときは、Canon EF 50mm F1.8 II型を使用しました。
言わずと知れた、初めての交換レンズとして定番だった、とても安かった製品ですね。
5群6枚のオーソドックスなダブルガウスタイプです[5]「EF50mm F1.8 II – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日
閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/ef295.html。
このEF 50mm F1.8 IIはジャンクで買ったもので、絞りが動作不良を起こしていたので分解して
あと後玉に少しキズがあります。
ド定番のレンズですが、わたしはニコンとペンタックスを使ってきたので、じつはこのレンズで撮ったことがなかったのですよね。
そこで年代こそあっていないですが、今回このレンズを使ってみました。
Canon EOS 620とEF 50mm F1.8 IIの作例
それではCanon EOS 620とEF 50mm F1.8 IIの作例をみてみましょう。
使用フィルムはLomography Earl Gray 100。
Parodinal 1:50 20℃ 8分で現像しました。
はい。
まあこのレンズについてはさんざん語りつくされているのでわざわざわたしが話す必要もないのですが、もう普通に使えますね。
さっき話した通り後玉にわずかにキズがありますが、それを差し引いても現代的な写りです。
近接で背景がボケているとこんな感じ。
モノクロですけど、現代的な写りであることが伝わると思います。
今回使用したフィルム、Lomography Earl Grayの中身はFomapan 100ですが、ハイコントラストになりやすいフィルムなのでちょっと画の全体がハイキーになりすぎているきらいはあるんですけどね。
EF 50mm F1.8のII型、構成こそ伝統的なものですがコーティングや全体の品質管理といった部分のクオリティが高いことで、こういう危なげない写りになってくれるのでしょうね。
ところで今回、それなりに明るいレンズを使いやすい一眼レフに付けていたので、ISO100で夜間のノーストロボに挑戦してみました。
場所はお茶の水~秋葉原近辺ですがこのように、拡大したらブレてはいますが、画としては全然成立している写真が撮れました。
わたし昔常に一眼レフを持ち歩いていたころはこういう写真よく撮っていたのですが、最近は全然やらなくなっていたんですよね。
この写真、とても懐かしい気持ちになりました。
まとめ
ということでEOS 620の作例でした。
このEOS 620を触ってみて感じたことなのですが、とにかく完成度が高いです。
初手でこれを出してきたCanon、EOSで本気で天下を取りに来たんだなということがよくわかります。
まあ正直、今回については完成度が高すぎてとくに語ることがない、という印象までありました。
製造からの年数こそ経っていますが、安く使えそうなものがあったら全然手を出す価値はあると思います。
CanonがEOSにかけた期待と本気さを感じることができる。
EOS 620はそんなカメラです。
ありがとうございました。
御部スクラでした。
脚注
↑1 | 「EOS620 – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日 閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film123.html |
---|---|
↑2 | 「EOS 650 / 650 QD – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日 閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film122.html |
↑3 | 「EOS 630 QD – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日 閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/film131.html |
↑4 | サンダー平山『中古カメラ実用機買い方ガイド』1996年、学習研究社、pp.68-69。 |
↑5 | 「EF50mm F1.8 II – キヤノンカメラミュージアム」(2022年1月3日 閲覧)https://global.canon/ja/c-museum/product/ef295.html |