佐藤亮一 『北京収容所』という本を読む

佐藤亮一 『北京収容所』

中国関係に興味を持ったのがきっかけでたまたま買った、佐藤亮一 『北京収容所』という本を読んだ。

1986年、サイマル出版会、おそらく初版(奥付が扉の裏側にあり日本における標準的なフォーマットと異なる)

未決の戦犯として北京に捕らわれた著者の、1946年春から1947年夏にかけての回顧録。

目を盗んで書いたメモを服に縫い付けて日本に持ち帰ったものを元としている。

劣悪な監獄の環境や食事、多くの人が死んでいく風景。

著者は生きて日本の土を踏むことができたが、救いのない内容である。

最近中国関係のことに興味を持った人間としての視点としては、著者が見た北京は国民党が支配していた時期だったわけだが、国民党への失望と、実際に相見えていない共産党への期待が書かれていることが興味深かった。

実際に歴史上どのような事実があったかは別に評価する必要があるが、それはそれとして、著者の主観としては、実際に酷い目に遭わされたのは国民党側によるものであった。

戦後、中華人民共和国と国交が回復する以前にも少なくない人が、大陸の共産党に好意を持ったことの要因のひとつを、そのような主観から感じたのだった。

自身のスタンスについて

この本はあくまでも著者の主観である。

ちょっと、そういうものを自分が読むのは危険かもしれない(同じサイマル出版会の『八路軍の日本兵』もだが)。

自分は現状、つまみ食いのような形で中国関係の本を読んでいる。

安田峰俊や広中一成の新書など……。

だが、文学部出で、本を読むべき若いころに政治や経済を遠ざけていたために、そのような分野への基礎体力がない。

ということでまずは大学の学部生向けの政治史などを読むことにした(教科書として使われている類の)。

しばらくは、学んでいないところの基礎教養をつけることに注力したいと思う。

アニタ・チャン他 『チェン村 中国農村の文革と近代化』読書感想

最近中国の近現代について興味を持っている一環で、『チェン村 中国農村の文革と近代化』という本を読んだ。

チェン村

アニタ・チャン リチャード・マドスン ジョナサン・アンガー 『チェン村 中国農村の文革と近代化』
小林弘二 監訳
1989年 筑摩書房 初版
原著”Chen Village”は1984年 University of California Press刊

『チェン村 中国農村の文革と近代化』

1970年代~1980年代初頭にかけて、中国本土から香港へ移住した元住民からの聞き取りをもとに、広東省のとある村が文革下にどのような出来事があったかを書いたノンフィクション(固有名詞は特定できないよう仮名となっている)。
ノンフィクションと呼んでよいと思うが、半分小説のように読むこともできる。

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香川孝志 前田光繁 『八路軍の日本兵たち』(1984年、サイマル出版会)を読んだ

香川孝志 前田光繁 『八路軍の日本兵たち』(1984年、サイマル出版会)

最近、中国のミリタリー関連に興味を持ったので、そのなかで、この古い本を読んだ。

香川孝志 前田光繁 『八路軍の日本兵たち』、1984年にサイマル出版会から刊行された書籍である。

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次世代デジタルライブラリーのカメラ・写真関連メモ

国会図書館の次世代デジタルライブラリーで、カメラ・写真関連で面白そうなものをメモ。

著作権がすでに切れた著者

面白そうな本

広告図版

メーカー名で検索が可能なので、戦前のカメラについて広告図版が必要な場合、調達が非常に容易。

無職転生 コミュニケーションを学びなおすためのアニメ

人生が(自分の思い込みでドツボにハマって)終了するたびに、なぜか、そのときの自分に与えられるべき作品と出会ってきました。
まさに、神のようなものがそのように備えて与えてくれたかのような。

前回は伊藤計劃の『ハーモニー』だったのですが、今回はアニメの『無職転生』でした。

(Amazon Prime Video)

結論からいうと、素晴らしいの一言でした。

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書籍紹介 『佐藤評論 番外編 知らなくても困らない韓国カメラの世界』

みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は同人誌の紹介。
『佐藤評論 番外編 特集:知らなくても困らない韓国カメラの世界』です。

もう一ヶ月も過ぎてしまったのですが、東京の神保町で開催された「おもしろ同人誌バザール11@神保町」というイベントに行ってきました。

おもしろ同人誌バザール11@神保町

もちろん最大の目的は、この佐藤成夫さんの同人誌。
韓国カメラというこれまで陽のあたってこなかったものに注目するという、とても好奇心をそそられる内容です!

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いまさら『ニューロマンサー』を初読した(雰囲気で)

いまさらすぎるのですが、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』を初めて最後まで読みました。
以前にも何度か読もうとしたことはあったのですが、毎回序盤、千葉から出るあたりで離脱してしまい、なかなか最後まで読み進めることができなかったのでした。

それが、『三体』を読み伊藤計劃を読んである程度SFへの耐性ができた今なら読めるのではないかと思い、再び手を出してみたのですが……

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韓国製カメラについての文献 覚え書き

佐藤成夫さんが同人誌で韓国製カメラについて扱っていることに関連して、少し自分でも韓国製カメラについて調べてみました。

その覚え書きです。

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田中穣 『日本洋画の人脈』

田中穣 『日本洋画の人脈』

100円の古書で買った、田中穣 『日本洋画の人脈』という本を読みました。
初版は1972年、新潮社から出た本で、わたしが買ったのは1975年の2刷です。

内容としては、読売新聞の美術記者である著者が、同紙の朝刊に「日本の人脈」の「洋画」編として連載したものをまとめたもの、とのことです(あとがきより)。

本書を読もうと思ったのは、東京都美術館や国立新美術館で年間にわたり開催されている公募展、団体展というものについて知りたいと思ったからでした。
そこにさまざまな問題があることはさておき、数多くの団体が存在し、現在まで存続していること自体は注目に値すると思ったのです。

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