みなさんこんにちは!
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は、東ドイツのプラクチカの一眼レフカメラ。
PRAKTICA MTL5Bについて話します。
Contents
PRAKTICA MTL5B
PRAKTICA MTL5Bの外観とスペック
※貼り革はオリジナルではありません。
レンズマウント:M42マウント
シャッター:縦走り メタルフォーカルプレーンシャッター B、1秒~1/1000秒、シンクロ速度1/125秒?
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ
露出計:TTL絞り込み測光、CdS受光素子
カウンター:順算式、自動復元
フォーカシング:マニュアルフォーカス
電源:LR44 x1個
使用フィルム:35mmフィルム
登場年:1987年
製造:ペンタコン人民公社
参考資料:脇田久仁博「プラクチカ一眼レフ」『カメラレビュー クラシックカメラ専科 No.38 プラクチカマウント』 1996年、朝日ソノラマ、p.60-61
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PRAKTICA MTL5Bの概要
PRAKTICA MTL5Bは、いわゆるM42スクリューマウントのフィルム一眼レフカメラで、登場したのが1980年代の後半。
クラシックカメラ専科No.38 p.61(上掲)では1987年とされています。
ベルリンの壁が崩壊するのが1989年、東西ドイツが再統一されるのが1990年のことなので、本当に東ドイツ末期の製品です。
ついているレンズは東ドイツのCarl Zeiss JenaのTessar 50mm F2.8で、もっと年代の古い1960年代の、最近ではゼブラと通称されるものです。
最初にことわっておくと、いま写っているカメラは貼り革がオリジナルではないです。
オリジナルは分厚い合皮の貼り革がついています。
PRAKTICA MTL5Bの機構面
ということで旧共産圏のフィルムカメラであるわけですが、旧ソ連や東ドイツといった東側のカメラ、品質がイマイチという意見も多いです。
そのあたり、実際のところどうなのか見ていくと……
じつは、設計とか精度そのものは、そこまで悪いものじゃないんですよね。
とくに設計自体はしっかりしています。
今回、解説のためにミラーボックスを外したんですが、とくにワッシャーが入っていることもなく、カメラ本体のフレームは精度良くつくられていることがわかりました。
組立に問題あり?
ただ、ですね。
じつはわたし、PRAKTICA MTL5Bを分解したのはこれが2台目なんですけど、同じ場所が不具合を起こしていたんですよ。
最初に入手したPRAKTICA MTL5Bも、この2台目も、どちらも巻き上げができなくなってしまっていたんですが、まったく同じ場所が故障の原因でした。
場所は巻き上げレバーの真下で、まったく同じ場所のビスが緩んで抜けてしまって、動作を阻害してしまっていたんです。
ビスの抜け方も引っかかり方も同じだったので、設計がどうというよりも、品質管理に問題があったんじゃないかと予想しています。
このあたり、旧共産圏の末期の製品ということで、設計自体はちゃんとしていても製造が追いついていなかった感じがあります。
ストラップ金具も片方、カシメが傾いています(おそらく最初から)。
プラクチカ独自の縦走りフォーカルプレーンシャッター
では性能面はというと、まずシャッターはバルブと1秒~1/1000秒まで。
メカシャッターのカメラとしては至って標準的なスペックです。
このシャッターが非常に興味深い作りをしています。
シャッター幕は金属で、縦走りのフォーカルプレーンシャッターなのですが、日本製の縦走りシャッターのカメラとまったく違う構造をしているんです。
ご覧のように、コパルスクエアのような日本製品とは独自に発展したものであることがわかります。
シャッター幕自体がボディのフレームに組み込まれていて、ダイキャストにネジ止めされた金属板にあるX字型のレールがシャッター羽根をガイドしています。
↓参考:日本製のコパルスクエア(画像はコパルスクエアS、Nikomat FTnのもの)
このシャッター、かなり堅牢な構造をしています。
カタログスペックはペンタックスSPとほとんどかわらないですけど、ペンタックスSPの布幕シャッターよりも確実に頑丈だと思います。
ちなみにこのシャッター自体は、1969年にプラクチカLシリーズとして登場したときに開発されたものだと思われます。
参考文献:脇田久仁博「プラクチカ一眼レフ」『カメラレビュー クラシックカメラ専科 No.38 プラクチカマウント』 1996年、朝日ソノラマ、pp.60-61
1980年代としては保守的なスペック
もちろん、ペンタックスSPは1964年の製品なので、1980年代後半のカメラとしては保守的すぎるスペックなのはそうなのですが、camera-wiki.orgによればRevue MLとして西側に供給されていたので、廉価なカメラとして需要はあったのだと思います。
同時期にはペンタックスのK1000やコシナCT1系のカメラも普通に売られていましたし。
参考文献:「PRAKTICA MTL 5 B」camera-wiki.orgより(2021年7月9日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/PRAKTICA_MTL_5_B
また、実際にどれくらい市場に受け入れられたかはともかく、プラクチカにはすでに1978年に発表されたプラクチカBシリーズがあったので、どちらかといえば廉価なラインの製品だったのでしょう。
脇田久仁博 『プラクチカB物語』より「’78年登場のBシリーズ」(2021年7月9日閲覧)
http://mediazone.tcp-net.ad.jp/MISO/PRAKTICA/praktica2.html
その他の特徴
そのほかの機構的な特徴で目を引くのは斜めのシャッターボタン。
これは別に特別な構造をしているわけではなく、(ペトリを連想して壊れるのじゃないかと不安になるのですが)ここが故障の原因になることはなさそうです。
※ペトリが壊れやすいのも斜めのシャッターボタンとはたぶん関係ないはず。
露出計は絞り込み測光ですが、測光範囲については文献が見つかりませんでした。
シャッターボタンの横に絞り込みスイッチがあって、押し込んでいるときだけ露出計が作動します。
ファインダーには、リコーXR500のような斜めのスプリットプリズムがあります。
露出計はファインダー右側に定点合致式で表示、左側には巻き上げられていないときだけ黒い警告表示が出ます。
電池はLR44 x1個です。
camera-wiki.orgの記事と参考リンク先によれば、PRAKTICA MTL5やMTL3はPX625、つまりMR9水銀電池だったようなので、ここは改良点だといえますね。
参考文献:camera-wiki.orgより(2021年7月9日閲覧)
「PRAKTICA MTL 3」
http://camera-wiki.org/wiki/PRAKTICA_MTL_3
「PRAKTICA MTL 5」※関連リンクの説明書に電池についての記述あり
http://camera-wiki.org/wiki/PRAKTICA_MTL_5
外装は銀色ですがプラスチック製です。
ただ、質感が悪いという感じはそこまでありません。
使用感は……
とまあ、東側のカメラという印象に反して、けっして作りが悪い製品ではないです。
それじゃあ、実際に使ってみたらどうだったかというと、うーん、という感じなんですよね。
というのが、ミラーショックがめちゃくちゃ大きいんですよ。
日本製の一眼レフカメラで、こんなにミラーショックを感じるカメラを触ったことはなかったと思います。
少しでもホールディングに気を抜くと、シャッターを切った瞬間に「あっ、これはブレたな」とわかるくらいです。
今回、24枚撮りのフィルムを1本通してみたのですが、正直失敗写真を量産してしまいました。
では写真を見ていきましょう。
PRAKTICA MTL5Bで撮った写真
使用フィルムはKodak GOLD 200です。
Auto Amazon Links: プロダクトが見つかりません。
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はい。
曇りの日ということもあるんですけど、ちょっと撮った写真が冴えない感じなんですよね。
もちろん、これみたいにブレてないカットはいいんですけど、
デジタル化して大きい画面で見ると、なんか微妙にブレてるよね、というカットが多くて……。
せっかくのCarl Zeiss Jenaのテッサーなのに、もったいない写真が多いなぁ、という結果になってしまいました。
ところで、今回取り付けているCarl Zeiss JenaのTessar 50mm F2.8は、マクロレンズではないのにとても寄れるレンズです。
最短撮影距離は0.35mで、花を撮るとマクロレンズ顔負けな感じの画になります。
曇りだったので絞りは基本的に開放だったんですが、露出が厳しくない日に、ブレにくいボディで使ってみたいなーと感じました。
まとめ
というわけで、praktica MTL5Bについて話してきました。
触ってみた感想としては、作りについては非常に興味深いし真面目、ただし組立の品質に難があったかもしれない。
そしていくらなんでもミラーショックが大きすぎるという感じです。
見た目には日本製の一眼レフカメラとそこまで変わらないのに内部が見たこともない構造をしていて、本当に東ドイツのカメラは面白いなあ、と思いました。
ありがとうございました。
御部スクラでした。