Смена-35 スメナ35 トイカメラブームの一翼を担ったロシアカメラ

Смена-35 スメナ35 トイカメラブームの一翼を担ったロシアカメラ

みなさんこんにちは!

フィルムカメラ系Vtuberの御部スクラです。

今回は旧ソ連のフィルムカメラ、スメナ35について話します。

SMENA-35(Смена-35 スメナ35)

SMENA-35(Смена-35 スメナ35)の外観とスペック

SMENA-35(Смена-35 スメナ35)

SMENA-35(Смена-35 スメナ35)

SMENA-35(Смена-35 スメナ35)

SMENA-35(Смена-35 スメナ35)

レンズ:T-43 40mm F4
シャッター:ビハインドシャッター B、1/15秒~1/250秒(手動チャージ)
巻き上げ:背面ノブ
カウンター:背面、順算式、手動リセット
フォーカシング:目測
ファインダー:逆ガリレオ式
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1990年?
製造元:БелОМО(BelOMO)

スメナ35とは

スメナ35

スメナ35は、ロシア語版Wikipediaの記事によれば1990年から生産されたモデル。
旧ソ連末期からソ連崩壊後にかけて作られたようです。

参考文献:「Смена (фотоаппаратура) — Википедия」(ロシア語版Wikipediaより、2021年9月8日閲覧)

スメナ35とトイカメラの流行

さて、このスメナ35をはじめスメナというカメラは、2000年代前半にあった、いわゆるトイカメラのブームのときに人気を集めたカメラなんですね。
スメナという名前のカメラにはいろいろな種類があるのですが、いちばん有名なのはスメナ8M、通称スメハチというカメラでしょう。

スメナ8M

↑スメナ8M(Wikipedia Commonsより引用、著作権表記は下記)

This work, “Smena-8M-cropped-20210908.jpg”, is a derivative of “File:Фотоаппарат “Смена-8М”.jpg” by Богдан68, used under CC BY-SA 4.0. “Smena-8M-cropped-20210908.jpg” is licensed under CC BY-SA 4.0 by obscura_ch.

スメハチは、LOMO LC-Aと同じくらいトイカメラ文脈で人気があったカメラですね。

そしてこのスメナ35は、スメハチに続いて、スメナのなかで2番目に有名な機種といって間違いないと思います。

と、したり顔で話していますけど、実はわたしは2000年代前半のトイカメラブームのことを、ブーム末期のウェブサイトでしか知らなくて、しかもリアルタイムのときはこういうカメラを実際に使ったことはなかったんです。

使わなかった理由は2つ。
まず、まだカメラ初心者だったので露出計のないカメラに抵抗があったということ。
そして、インターネット通販に慣れていなかったので、ロシアカメラに強いお店で買い物をしたり、ebayで個人輸入するのが怖かったからです。

なので、当時使いたくても使えなかったカメラを触ることができて、実は今回けっこうテンションが上っています。

スメナ35の特徴

では、スメナ35というカメラの特徴を見ていきましょう。

スペック

まず数字であらわれるところから。

レンズはT-43 40mm F4というものがついています。

T-43 40mm F4

これはスメナ8Mのレンズと同じものです。
ピント合わせは前玉回転ではなく、ヘリコイドによる繰り出しです。
絞りは古い沈胴レンズのように、レンズの前玉の周りのリングを回す形式になっています。

シャッターはレンズシャッターでビハインドシャッターなのですが、ボディの上から見るとお天気マークが印刷されていてシャッター速度がわかりません。

お天気マーク

なのですが、じつはカメラをひっくり返すとシャッター速度の数字もプリントされています。

シャッター速度の数字

シャッターはBと1/15秒~1/250秒までです。

さて、このシャッターなのですが、シャッターチャージは巻き上げと連動していません。
というか、多重露光防止の機能もついていないので、間違えて二重写ししてしまう可能性があります。

セルフコッキングではない

このあたりはかなり簡易的な構造だといえますが、逆に、トイカメラのブームが起きた頃というのは、実用として用いられているフィルムカメラで(カメラ愛好家が使うもの以外では)多重露光ができるものは少なかったので、こういうところが新鮮だと受け止められたのかもしれないですね。

フィルムカウンターは手動設定で順算式です。

つくりはかなりチープ

と、カタログスペックを見てきただけでもかなりチープなのですが、カメラ自体のつくりもかなりチープです。

カメラ本体はプラスチック製ですが、プラスチックの素材自体があまりよくありません。
落下させたら簡単に割れそうですし、裏蓋の爪なんてすぐに折れてしまいそうです。

ツメが簡単に折れそう

しかも全体的にはチープなのに、変なところに頑丈な部品が使われているんです。
まず、巻き戻し軸は金属製。

巻き戻し軸は金属製

おそらく他のカメラと共通の部品を使っているのでしょう。

そしてシャッター。
今回、例によって分解したのですがボディからシャッターを外すと、なんと重厚な金属製のレンズシャッターがごろんと外れるんです。

重厚な金属製のレンズシャッター

シャッターを分解してみると、1990年のカメラとしては非常に伝統的な作りをしていることがわかります。

昔ながらのレンズシャッター

ようするに、カメラ自体の機能はそれ以前の旧ソ連製コンパクトカメラと同じで、外観だけを1990年という時代に合わせて作り直したカメラだったのでしょう。

改修箇所

それではスメナ35で撮影した写真を見ていくのですが、その前に、今回撮影したスメナ35はオリジナルの状態ではなく、撮影に使用するにあたって少し手を加えています。

まず、フィルム室内に反射防止の植毛紙を貼り付けています。

植毛紙を貼り付け

専用の製品も市販されているようなのですが、今回は自分で現物合わせでカットしました。

それから、裏蓋に光線漏れ防止のモルトを貼り付けています。

光線漏れ防止のモルトを貼り付け

なので、オリジナルの状態より多少は描写がよくなっていると思うのですが……。

スメナ35で撮った写真

では撮影した写真を見ていきます。

使用フィルムはKodak GOLD 200です。

スメナ35で撮った写真

スメナ35で撮った写真

写りそのものについていうと、こういうチープなつくりのカメラとしては非常にまともだと思うんですよね。
トリプレットのレンズですが解像感もまともです。

ただ、今回撮影した写真、どれも色が鮮やかな感じになってしまっています。
別の動画でも話したのですが、今回撮影したネガをデータとして取り込んで、Photoshopでいい感じのコントラストに調整しようとすると、勝手にこういうヴィヴィッドな感じになってしまうんですよね。

スメナ35で撮った写真

スメナ35で撮った写真

これはわたしの勝手な想像ではあるのですが、もしかすると、当時のDPEでプリントするとき、いい感じにすると勝手にヴィヴィッドになってしまうようなカメラだったということが、面白いカメラとして受け取られた要因だったのかもしれないですね。

ともあれ、写りそのものは非常にまともです。
普通によく写るカメラといって差し支えないと思います。

夏の晴天の日で絞り込んでいるということもありますが、ピントさえ合っていればこうしてかなりきりっとした写真を撮ることもできました。

スメナ35で撮った写真

Smena35は普通によく写るカメラである。
じつは、このことがスメハチやスメナ35が人気を博した要因なんじゃないかと思っています。

スメナ35で撮った写真

スメナ35で撮った写真

スメナ35で撮った写真

次はそのことについて話していきますね。

一般人が使うのは写りの悪いカメラだった

写りが良いからウケたのでは?

スメナやLOMO LC-Aがウケたのはよく写るカメラだったからなんじゃないか。

というのはどういうことかというと。
2000年くらいの、デジタルカメラが一般的になる直前って、当然ながらフィルムカメラが実用として使われていました。
ですが、マニアではない人が使うカメラって、ズームレンズのついたコンパクトカメラか、写ルンですのようなレンズ付きフィルムのどちらかだったはずです。

いまではフィルムの味としてプラスに捉えられていますが、実用として考えたとき、写ルンですは写りが悪いカメラです。

いっぽう、ズームレンズのついたコンパクトカメラも、最近では再評価されていますがレンズの写り自体はよくありません。

しかも、写ルンですはピントが固定だし、普通のコンパクトカメラはオートフォーカスでピントを外すことが普通にあった時代です。
一般の人が使うカメラというのはそういうものだったわけです。
デジタルカメラをマニアしか持っていなかった頃は、「フィルムカメラしかなかった」んです。

そんなとき、スメハチやスメナ35、LOMO LC-Aというのは、玩具的な面白さがあるというだけじゃなくて、普通にレンズの写りがよいカメラとして受け入れられたんじゃないか、そう思うんです。

相対的に写りの良いカメラだったのでは?

もちろんマニアからすれば、旧ソ連製のこんな作りの悪いカメラをどうして崇め奉るのか理解に苦しんだと思います。
わたしも、もっと後の時代のLomographyのカメラは値段が高すぎると感じています。

でも、そういうカメラであったとしても、旧ソ連製の単焦点レンズというのは、写ルンですのレンズやズームコンパクトのレンズよりずっと写りがよかったのでしょう。

さらにいえば、新品の一眼レフやコンパクトカメラより小さく、軽く、そして廉価だったのも大きな理由だったのではないでしょうか。
サイズや重さは写ルンですと大差ありません。

そういうトータルなバランスとして、写ルンですと高機能なカメラの間のニッチを埋めたカメラ。
時代の要請にハマったカメラというのが、スメナ8Mやスメナ35、LOMO LC-Aだったのではないかと思います。

トイカメラという用語について

ところで今回の動画ではトイカメラという用語を使いましたが、もちろんこの言葉がざっくりとした、未定義の言葉だということは理解しています。

また、スメナやLOMO LC-A、それどころかHolgaに至るまで、もともと玩具として作られたのではないカメラをトイカメラと呼ぶことに抵抗がある方もいるでしょう。

ですが、トイカメラという言葉でこのあたりのカメラがジャンルとしてくくられた歴史がある、ということを重視して、わかりやすい用語として使用しました。
このあたり、念のためあらかじめおことわりしておきます。

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まとめ

ということでスメナ35について話してきました。
全体的なつくりはチープ、でもシャッターやレンズはきちんとしていて、奇跡的なバランスの上に成り立っている。
そういうカメラがスメナ35なのだと思います。

すでにトイカメラのブームというのは歴史上の出来事になりかけていますけど、ブームが起きた理由がいまの目から見ても十分にわかる、魅力的なカメラだな、と感じたのでした。

ありがとうございました。
御部スクラでした。