Yashicaflex A2 ベーシックで写りのよい定番二眼レフ

Yashicaflex A2 ベーシックで写りのよい定番二眼レフ

みなさんこんにちは!

フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は日本のヤシカの二眼レフカメラ。
Yashicaflex A2型について話します。

Yashicaflex A2とヤシカフレックスの見分け方

Yashicaflex A2型

ヤシカフレックスといえば日本製の二眼レフカメラのなかでもっともメジャーなシリーズのひとつですよね。
ただ種類がとても多く、見分けるのが難しいのですが、幸い、日本語ではもっとも二眼レフについて詳しいサイト「二眼里程標」さんにヤシカフレックスの見分け方が掲載されています。

それによると、このヤシカフレックスはレンズの周りにフィルターなどを取り付けるバヨネットがなく、シャッターが1/400秒までのシチズンMXVなので、ヤシカフレックスA2型だと判別できるようです。

参考:「情報倉庫:ヤシカフレックスの見分け方 / 二眼里程標」(2022年11月14日閲覧)
http://www.tlr66.com/souko/yashicaflex-miwake.php

Yashicaflex A2の特徴

それでは、このカメラの特徴を見ていきましょう。

Yashicaflex A2の外観とスペック

Yashicaflex A2型

Yashicaflex A2型

Yashicaflex A2型

Yashicaflex A2型

Yashicaflex A2型

レンズ:Yashimar 80mm F3.5
シャッター:CITIZEN-MXV B、1秒~1/400秒
巻き上げ:ノブ巻き上げ、赤窓式
カウンター:赤窓
フォーカシング:ノブによる前板繰り出し
ファインダー:ウエストレベル、すりガラスのみ(本機のピントグラスは非オリジナル)
フィルム装填:赤窓式
使用フィルム:120フィルム
発売年:1956年末~1957年初頃?[1]『昭和10~40年 広告にみる国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.409
発売時価格:不明
製造元:八洲光学工業株式会社

※貼り革もオリジナルではない

Yashicaflex A2の発売年と立ち位置

このヤシカフレックスA2型は、いたって普通の、とくに特徴のないローライコード系の二眼レフカメラです。

巻き上げは赤窓式で巻き止めはついていませんが、

赤窓式

ピント合わせは前板を繰り出す方式なので、だいたい中の下くらいのグレードに相当するわけですね。

ピント合わせは前板を繰り出す方式

『広告に見る国産カメラの歴史』によれば、1956年の暮れのカメラ雑誌に新商品として紹介されているということで、1956年末~1957年初くらいの発売のようです[2]『昭和10~40年 広告にみる国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.409
1956年~1957年というと四畳半カメラのブームはとっくに終わって、すでに一般ユーザーの間で35mmレンズシャッターカメラが普及しつつある時期です。
二眼レフやスプリングカメラのメーカーはこの時期どんどん淘汰されていきます。
ただその分製品としてはこなれているので、ヤシカのような残存した大手メーカーにとっては、まだまだいた二眼レフを求めるユーザーにとってこういう新製品を出す余地は全然あったということですね。

機能解説

さて、性能ですが、
シャッターは先程も話したようにCITIZEN-MXV。
バルブと1秒~1/400秒までです。

CITIZEN-MXV

この年代なのでセルフタイマーとシンクロも普通についています。

レンズはテイクレンズ、ビューレンズともにYashimar 80mm F3.5。

Yashimar 80mm F3.5

日本製二眼レフとしては標準的なトリプレットです。
ただ、このカメラのレンズは前玉にキズがついています。

裏蓋の開閉は底部のノブでロックを解除する方式です。

あとでも触れますがダイキャストの作りも非常によいです。
ただ内面反射防止対策は弱いな、と感じます。

内面反射防止対策は弱い

ウエストレベルファインダーはこんな感じで、

ウエストレベルファインダー

スポーツファインダーもついています。

スポーツファインダー

ただしこのヤシカフレックスはピントグラスはオリジナルではありません。

普通の二眼レフカメラ

ざっくりとスペックはこんな感じで、もう本当に至って普通の二眼レフカメラです。
ヤシカというメーカー自体、ほとんどローライそのままのカメラをものすごく安く作るのが持ち味だったので当然といえば当然なんですけどね。

ただ、わかったような顔で話していますがわたしはヤシカフレックスを使うのはこれが初めてです。
メジャーなシリーズなので使ってみないといけないな、と思っていたところ、このヤシカフレックスA2のジャンクを見つけたので、可能な限り直して撮影してみたのでした。

作例

ということで、続いてはこのカメラの作例を見ていきましょう。
使用フィルムは上海GP3 100です。

上海GP3 100

(現像条件:Parodinal 1:25 20℃ 10min)

はい。

Yashicaflex A2 作例

できるだけ日陰で開放気味で撮ってみたのですが、かなりよい結果になりました。
あとでこのカメラを分解したときの話をするのですが、しっかりとピントを出したかいがありました。

Yashicaflex A2 作例

もちろんトリプレットなので周辺部はそれなりなのでしょうが、少しでも絞ればそれも改善します。
もはや神格化されている富岡光学ですが、このYashimar 80mm F3.5、トリプレットの廉価なレンズとしてはいちばんよく写るもののひとつでしょうね。

Yashicaflex A2 作例

こんなに状態の悪いカメラがこんなによく写るのだから、状態がいいヤシカフレックスはどれくらいいい写りをするんだろう、と感じます。

いっぽう、空が入っていたりするとちょっとフレアっぽくなります。

Yashicaflex A2 作例

これはちょっと、植毛紙を貼ったりするべきだったかもしれないですね。

この写真はウエストレベルファインダーで果敢にも動いているハトを撮ろうとして玉砕したものです。

Yashicaflex A2 作例

これはこれで面白い写真なんですが、左右反転のウエストレベルで動体はぶっつけ本番だと無理でしたね……。

とにかく、ヤシカの二眼レフが売れたのって安くて作りが良いだけじゃなくて、写りがいいというカメラにとっていちばん大事なところを満たしているからなんだということがわかったのでした。

Yashicaflex A2 作例

今回の分解とわたしの技術の限界

さて。

このヤシカフレックスですが、購入したときめちゃくちゃ状態が悪かったんですよ。

これが購入直後の写真です。

購入直後の写真

購入直後の写真

購入場所は秋葉原のジャンク屋通りの店で値札の通り500円。
レンズのカニ目に滑ったあとがあるし、前玉に傷があるし、ピントグラスは割れてました。

↓レンズだけ拭いた写真

レンズだけ拭いた写真

なので二眼レフを分解する練習台として買ってみたわけです。

今回の分解で初めてやってみたことのひとつが、外せるパーツを全部外してダイキャストを洗うということです。
見ての通りホコリだらけだったので、それを洗剤で洗って、ドライヤーで乾かしてピカピカにしたんですね。

ジャンクのカメラやレンズって外観や光学系がきれいでも中にホコリやカビが入っててカビが再発する原因になるので、できればそこまでやりたいと思っていて、自分の技術だと複雑な設計の機種は無理なのですが、これくらい単純な構造の二眼レフならできるかも、と思ってやってみたのでした。

ただ結果として感じたのは自分の技術不足でした。
たしかにきちんとパーツを組み付けて撮影できるようにはなったのですが、いろんな部分のパーツをキズだらけにしてしまって、理想とする美しい状態にすることはできなかったのですよね。
ピントグラスが割れていたので他のジャンク二眼レフから流用したのですが、ビューレンズの固定位置でうまく調整できず、ピントフードとボディの間にシムを入れて調整するハメになってしまいました。

前玉にキズがあるとはいえ、バラしている最中は故障を怖がらずに使える第一線のカメラにできるかも……と思っていたのでちょっと悔しさがあります。

わたしはフォーカルプレーンの幕交換もまともにできないし、カメラの分解というのは難しいものだなぁ、と今回も感じたのでした。

ダイキャストのレベルがとても高いことはわかった

ただ、今回そこまで分解してわかったこともあって、ヤシカフレックスのダイキャストは非常にレベルが高いです。
薄くて軽くて精度もよくて、この年代の日本製カメラとしてはかなり品質がよい。
さすがヤシカは当時の二眼レフトップメーカーだっただけあります。

この年代のリコーフレックスニューダイヤあたりもそうですが、1955~1956年くらいともなると廉価な機種でも全体的にかっちりとするんですよね。
このあたり、日本のカメラの平均レベルが四畳半ブームの時期からわずか数年で一気に上がったのを実感します。

まとめ

ということでヤシカフレックスA2型のお話でした。

ヤシカフレックス、至って普通の二眼レフで華はないのは事実なんです。

でも、全体的にそつがなくて写りがいい。
実用を考えるならこれ以上のことはないです。

実用のための二眼レフを買うなら、ヤシカフレックスというのは最適な選択肢だと思います。
やっぱり、売れた製品には売れた理由があるんですね。

ベストセラーのカメラ、判官びいきしないで使ってみるといろいろ発見があるな、と思ったのでした。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

脚注

脚注
1, 2 『昭和10~40年 広告にみる国産カメラの歴史』1994年、朝日ソノラマ、p.409