ミノルタのファンタジーカード&MINOLTA α-8700i簡単な解説

ミノルタのファンタジーカード&MINOLTA α-8700i簡単な解説

みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回はMINOLTA α-8700iを使って、ミノルタが一時期のαシリーズに用意した拡張機能、インテリジェントカードのひとつである「ファンタジーカード」について紹介します。

「ファンタジーカード」

インテリジェントカードとは

インテリジェントカードというのは、こういうカードです。

インテリジェントカード

サイズはだいたいSDカードと同じくらいで、
カメラのグリップ部分にこうやって挿入して使います。

カメラのグリップ部分に挿入

1988年のα-7700iで初めて導入されて[1]「αヒストリー | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー」より「カスタマイズ」の項目(2022年12月17日閲覧)
https://www.sony.jp/ichigan/history/2-4.html

MINOLTA α-7700i スマートなα第2世代一眼レフ (Dynax / Maxxum 7000i)

通称iシリーズとxiシリーズ(α-7xiなど)に主に搭載、

α-7xi

1993年のα-707siが最後の機種になりました[2]佐藤成夫 『佐藤評論 総集編』2022年より「ミノルタα7番機の軌跡」pp.2-19~2-39

α-707si

ここからの解説は佐藤成夫さんの『佐藤評論』をもとにしているのですが
なにができるかというと「使用者が目的に応じて機能を追加する」(引用元:『佐藤評論 総集編』2022年より「ミノルタα7番機の軌跡」p.2-24)ということです。

インテリジェントカードの種類

たとえば以下のような種類があります。

以下参考文献:『佐藤評論 総集編』2022年より「ミノルタα7番機の軌跡」pp.2-24~2-25

フォトテクニックカード

アイコンが青い「フォトテクニックカード」ではさまざまな撮影シーンごとの機能を追加。

アイコンが青い「フォトテクニックカード」

たとえばCL:クローズアップカードでは接写に適した設定を自動で行ってくれます。

CL:クローズアップカード

のちに各社のカメラに搭載されるようになったシーンモードのようなものですね。

スペックアップカード

アイコンが赤いスペックアップカードは、カメラに機能を追加するカードです。

スペックアップカード

たとえばこのブラケットカード2は段階露光が可能になりますし、

A/S MODEカードは、

A/S MODEカード

そのままではプログラムAEとマニュアルしかないα-5700iに絞り優先AEとシャッター優先AEを追加することができます。

MINOLTA α-5700i 外観写真(故障品)

今回主に紹介するファンタジーカードも、このスペックアップカードのひとつです。

カスタムカード

アイコンが黄色いカスタムカードは、カスタムファンクションや機能登録を行うカードです。

カスタムカード

ファンタジーカード

数年後にはこういう機能を全部載せにしたカメラが普通になってしまったのでインテリジェントカードは失敗作とされる場合も多いのですが、いま振り返ってみると面白い機能もあるんです。

なかでも一番有名なのが、今回紹介するファンタジーカードなんです。

ファンタジーカードとは

ファンタジーカード

ファンタジーカード(FANTASY)は、露光中にオートフォーカスを駆動することでソフトフォーカスレンズのような効果を得ることを狙ったカードです。

ソフトフォーカスって、主にポートレートで長らく用いられてきましたよね。
戦前の(固有名詞としての)芸術写真、写真館でのポートレート。
製品としても定期的に登場しています。

ファンタジーカードの挙動

ファンタジーカードの挙動は以下のようなものです。

液晶の右下に「CARD」と出ている状態にすると

液晶の右下に「CARD」と出ている状態

スローシャッターかつ絞り込まれた状態になります。

スローシャッターかつ絞り込まれた状態

そしてシャッターを切ると、露光中にAFが動きます。

シャッターを切ると露光中にAFが動く

※文章だと説明が難しいので、ぜひ動画もご覧ください。

ソフトレンズは収差を積極的に利用することでそういう描写を得ているわけですが、ファンタジーカードで用いているのはピントの移動。
ではどういう効果になるのでしょうか?

さっそく見てみましょう。

ファンタジーカードの作例

モノクロですが、今回撮影していちばん効果を実感できたのがこのカットです。

ファンタジーカードの作例

山手線に貼られた「アークナイツ」の等身大の広告ですね。

メインの被写体にピントはしっかり来ているのですが、ふんわりとソフトフォーカスのような写真になっています。

いっぽう、失敗したカットはたくさんあります。
というかほとんどが効果を活かせなかった失敗カットでした。

たとえばこの写真。

ファンタジーカードの作例

アークナイツの広告が貼られていた山手線の電車が発車したところですが、単にブレているかピンボケなのと見分けがつかない写真になってしまいました。

ほかにはこのあんかけチャーハンの写真。

ファンタジーカードの作例

ソフトフォーカスとはちょっと違う写真になってしまっています。

この、駅の表示の写真も、まるで露光間ズームのようになってしまっています。

ファンタジーカードの作例

どうやら光の点があると本物のソフトフォーカスではないとだとバレやすくなるようです。

人間以外の被写体、たとえば文字を撮ったらネタ写真になるかと思ってこういうどうでもいい被写体を撮ってみたりしたのですが完全に滑りました。

ファンタジーカードの作例

ちょっと面白かったのはこの「豚」の写真で、これは周辺部が完全に黒く潰れているので、集中線のような見た目にならなかったのがプラスに働いたのだと思います。

ファンタジーカードの作例

ようするに、このファンタジーカードが向いている被写体ってポートレートなんですよね。
今回は実際のポートレートは撮っていませんが、このアークナイツの広告は等身大のイラストなのでほぼポートレートといえる被写体です。
そういう明確にメインとなる被写体に使ってこそ映える。
という点で、このファンタジーカードはたしかに、ソフトレンズと使い所が似ているのだと思います。

ファンタジーカードの難点

さて。
このファンタジーカードを使って感じた難点があります。

使用できる露光条件がシビアすぎる

まず、露光条件がシビアすぎるということ。

今回なにも考えずにISO400の高感度フィルムを入れてしまったのですが、ISO400だとすぐに露出オーバーになってしまい撮影不能になってしまうのですよね。
ちょっとでも露出オーバーだとこのように液晶に「HI」と表示され、シャッターが押せなくなります。

露出オーバーだと液晶に「HI」と表示されシャッターが押せなくなる

ようするに日中に1/4秒や1/8秒のスローシャッターを切る必要があるので、これをちゃんと使うならISO100を入れる必要があります。

ただ、いまフィルムを入れずに動画素材を撮っているのでカメラの感度設定はISO100なのですが、それでもHIが出るので、ISO100だとしてもピーカンだとたぶんHIが頻出するんじゃないですかね……

カラーじゃないと面白さが伝わらないかも……

そして、本当はカラーじゃないと面白さが伝わらないんじゃないかということ。

今回、モノクロで作例を撮ったのは単純にコストの問題です。
2022年になってカラーネガの値段が1本1300円くらいになって、気軽にカラーでフィルム撮影がしづらくなりました。
(わたしはモノクロ自家現像インフラがあるので、モノクロはそれなりに贅沢な使い方ができるのですが)

で、このファンタジーカードのソフトフォーカス近似の効果って、たぶんカラーのほうがより魅力が伝わると思うんですよ。
でも、ちょっとこのネタのためにカラーネガを使うのはすでに金額的にキツく感じます。

ちょっとこのネタは、取り上げるのが1年くらい遅かったのだと思います。

フィルム1本だけで使いこなせる機能とはとても思えないので、誰か、お金のある人ぜひ動画で紹介してみませんか?

デジタルでこそ活きる機能では?

で、この機能はそれこそ何枚でも撮影できるデジタルでこそ本当の意味で生きる機能だと思うんですよ。
実装自体も全然可能だと思います。
やるとしたらSONYになるのでしょうが、SONYがこの機能を入れてくれることってありうるんですかね?

α-8700iについて

最後に、今回使用したカメラのMINOLTA α-8700iとレンズについて簡単に紹介します。

α-8700iの外観とスペック

MINOLTA α-8700iの外観

MINOLTA α-8700iの外観

MINOLTA α-8700iの外観

MINOLTA α-8700iの外観

MINOLTA α-8700iの外観

MINOLTA α-8700iの外観

MINOLTA α-8700iの外観

※アクセサリーベースAB-800を取り付けています

レンズマウント:MINOLTA Aマウント
シャッター:縦走りフォーカルプレーンシャッター B、30秒~1/8000秒(実機で確認)シンクロ速度は手元にデータなし
巻き上げ:自動 巻き上げ速度は手元にデータなし(参考:α-7700iは毎秒3コマ)
露出計:TTL開放 多分割測光 スポット測光可能
カウンター:液晶に表示
フォーカシング:TTL位相差検出方式 AFポイントは3点
電源:2CR5 x1
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1990年[3]「ミノルタの歩み 1990 | コニカミノルタ製品アフターサービス – … Continue reading
発売時価格:-
製造元:ミノルタカメラ

α-8700i 紹介

α-8700i

ミノルタα-8700iは1990年2月に発売した一眼レフカメラで[4]「ミノルタの歩み 1990 | コニカミノルタ製品アフターサービス – … Continue reading、以前紹介したα-7700iの上位にあたるモデルです。

基本的にはα-7700iのスペックをアップしたモデルで、α-7700iでは1/4000秒までだったシャッター速度が1/8000秒までに。

シャッター速度が1/8000秒までに

左手側にはシンクロソケットも設けられました。

シンクロソケット

ただ、モデル名が9ではなく8から始まることからもわかるように、あくまでもプロではなくハイアマチュアをターゲットとした機種になっています。

このガンメタリックの通常カラーのほかに、旧ソ連の宇宙ステーション、ミールに搭載されたことを記念した白色ボディの限定モデルもあります。

この機種にありがちな不具合として、ファインダー内の液晶表示が液漏れしやすいようです。
このα-8700iもこのように、下部の露出表示がかなり見えなくなっています。

ファインダー内の液晶表示が液漏れしやすい

AF一眼レフについてのコンテンツの先駆者「プラカメだって生きている。ような気がする。」さんの記事でも報告されていて、かなり発生しやすいようです[5]「プラカメだって生きている。ような気がする。 Minolta α-8700i」(2022年12月17日閲覧)
http://lebes.blog.fc2.com/blog-entry-43.html

AF ZOOM 35-105mm F3.5-4.5 New

AF ZOOM 35-105mm F3.5-4.5 New

今回使用したレンズはAF ZOOM 35-105mm F3.5-4.5 Newです。

Aマウントレンズとしては二世代目にあたるもので、初代の35-105mmに比べてかなり小型・軽量化されました。

写りですが、ファンタジーカードを使っていない写真だとこんな感じです。

AF ZOOM 35-105mm F3.5-4.5 New 作例

AF ZOOM 35-105mm F3.5-4.5 New 作例

まあ、こんな感じかな、といったところです。
普通の写りですね。

このレンズのいいところとしては、これくらいの年代のAFレンズ、メーカーによっては曇ってダメになってしまっているものも多いようですが、このレンズについてはカビさえなければジャンクでも使えるものが多い印象があります。

グリップについて

ミノルタのAF機といえばグリップが経年劣化で崩壊することが知られています。

以前α-7700iを補修したときは直接パテを盛り付けてグリップを整形したのですが、今回のα-8700iでは、ボディ側にテープを貼り付けて、その上にパテを盛り付けたあとに、パテ部分を剥がしてヤスリで整形してみました。

画像はα-7xiのものですが同じ方法です。

ミノルタα-7xiのグリップ補修

ミノルタα-7xiのグリップ補修

ただ、わたしの家はスプレー塗装ができる環境がないので、塗装はプララッカーを筆塗りしただけです。
あんまり見た目はよくないです。
これもしかすると、少し小さめに造形してビニールなどの素材で覆ったほうがいいのかもしれないですね。

まとめ

ということでミノルタのファンタジーカードとα-8700iのお話でした。

ミノルタのインテリジェントカード、コンセプトとしてはちょっと滑った感はあります。
ただ、このファンタジーカードについてはデジタルカメラにソフトウェア的に組み込んでみたら面白いんじゃないかと思うんですが、どうなんですかね。
いまだとソフトウェアフィルターでどうにでもなってしまうので意味ないかもしれませんが……。

ほかのメーカーにはない機構なので、ぜひ試してみてくださいね。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

脚注

脚注
1 「αヒストリー | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー」より「カスタマイズ」の項目(2022年12月17日閲覧)
https://www.sony.jp/ichigan/history/2-4.html
2 佐藤成夫 『佐藤評論 総集編』2022年より「ミノルタα7番機の軌跡」pp.2-19~2-39
3, 4 「ミノルタの歩み 1990 | コニカミノルタ製品アフターサービス – 株式会社ケンコー・トキナー」(2022年12月17日閲覧)
https://www.kenko-tokina.co.jp/konicaminolta/history/minolta/1990/1990.html
5 「プラカメだって生きている。ような気がする。 Minolta α-8700i」(2022年12月17日閲覧)
http://lebes.blog.fc2.com/blog-entry-43.html