『フォトライフ四季』(カメラのキタムラのフリーペーパー)の見どころ

カメラのキタムラが去年の冬まで出していたフリーペーパー「フォトライフ四季」のバックナンバーが1992年の創刊号から2020年の休刊号まですべてpdf公開されていたので、全号ざっと目を通して気がついたことを書き残します。

(当記事は2021年5月の連続ツイートをもとに加筆修正したものです)

フォトライフ四季
https://www.kitamura.jp/photo/seasons/

※2021年5月現在閲覧できますが、今後消される可能性があります。

フォトライフ四季の概要

『フォトライフ四季』は、1992年から2020年にかけてカメラのキタムラが刊行していたフリーペーパーです。

基本的にいわゆるネイチャーフォトや家族写真tipsの内容が多いのですが、1990年代後半~2000年代前半にやたらとマニアックな時期があります。

また、その時代その時代の広告が掲載されていて、その点でも資料価値が高いです。

タイトルは
1~19号は「写友缶」
20号~115号(終刊)まで「フォトライフ四季」

pdfはVol.6のみ欠号のようです。

各号見どころ

では興味深いところを書いていきます。

Vol.12 1995春:キタムラがアグフアOEMで販売した自社ブランドフィルム「四季物語」の紹介

Vol.18 1996秋:完全保存版フィルム大全 1996年時点での富士・コダック・アグフアのフィルム製品が一覧されています。このあたりの号、各社の開発者インタビューもあり

19 1996冬:保存版三脚特集 ほかにも三脚の製品紹介はあるのですが、まとまっているのは珍しい。

22-23 1997秋-1997冬:南伸坊インタビュー この後しばらく路上観察関連の記事が頻繁に掲載されます。ブームを感じる。

23 1997冬:初のデジタルカメラ特集。この号からWeb同時掲載が開始。

24-25 1998春-1998夏:赤瀬川原平インタビュー

26 1998秋:田中長徳インタビュー 当時のキタムラの中古買取相場一覧表掲載

27-29 1998冬-1999夏:田中長徳 「カメラはライカ」連載:内容はライカの通史で目新しい内容があるわけではないのですが、クラカメブームを色濃く感じます

31 1999冬:林丈二寄稿 この号から路上観察学会の連載が始まります。

32 2000春:藤森照信寄稿(路上観察学会連載)

33 2000夏:松田哲夫寄稿(筑摩書房常務、路上観察学会連載)

34 2000秋:赤瀬川原平寄稿(路上観察学会連載、最終回)

35-38:2000冬-2001秋 田中長徳「日本のカメラよもやま話」連載

27-35号まで:裏表紙広告はずっとフジのチェキ広告(滝沢秀明)

39-42 2001冬-2002秋: 「サンダー平山のまじめなポートレート講座」連載

40 2002春:「保存版 インターネットでらくちんプリント デジカメプリント活用術」 初の本格的な一般向けデジカメ記事が掲載。終わりの始まり感があります。2002年くらいから徐々にデジタルカメラが浸透しはじめます。

42 2002秋:前号まで表見返しはしばらくミノルタα-7(フィルム)の広告だったが、今号からDiMAGE 7i(44号まで)に。オリンパスだけは早期からデジカメの広告を出していたのですが、他社も今号から広告が切り替わっていきます。

43 2002冬:京セラの広告がCONTAXからコンデジ(Finecam S5、S3L)になる

43-46 2002冬-2003秋 :「サンダー平山のデジカメで撮るストリートスナップ講座」連載

45 2003夏:表見返広告 DiMAGE Xt サンダー平山連載の記述「最近ではほとんどのコンビニにデジカメプリントの機械が置いてある」

46 2003秋:ペンタックス広告が、広角側24mm~のESPIO 24EW、オリンパス広告はμ-III 150と、末期AFコンパクトの内容

47 2003冬:表見返しミノルタDiMAGE A1
オリンパスはE-1、PENTAXは*istD広告となり、デジタルに。
Canonは依然としてEOS7、NikonはF80・U2・Usでフィルム機を広告
スタジオマリオ広告が載りはじめる(もっと早い号から載っているかも?)

47-48 2003冬-2004春:
田中長徳 チョートクの「デジカメをもっと楽しもう」連載(2回のみ)
それまでの数年は冬号~秋号の全4回連載のパターンが続いていたが2回で終わる。おそらくここで編集方針が変わったのだろう。実際、次号以降マニアックな内容が一気に減少。クラカメブームの終わり?

49 2004夏:デジタル一眼レフカメラ入門1 掲載

50 2004秋:Nikon広告がD70になる。フィルム機広告はEOS7sのみ。 裏表紙広告はベルビア(前号までスーペリアヴィーナス)

51 2004冬:デジタル一眼レフカメラ入門2。表見返しがα-7Digital広告に。E-300、*istDSも。裏表紙ベルビア、裏見返しEOS7s

52 2005春:デジタル一眼レフカメラ入門3 「こだわり自分流のためのRAW現像」 掲載。
今号からついに京セラ広告が消え、代わりに同じ位置にSONY広告が掲載されるようになる。
Canonの広告がEOS20Dになりフィルム機広告は終了。
裏表紙の富士広告はベルビア。

53 2005夏:今号のpdfはp.26-27が脱落している。
裏見返し広告はEOS Kiss DN、裏表紙広告はフジクロームフォルティアSP。

54 2005秋:今号からオリンパス広告がなくなる。同じ位置はHAKUBAに差し替わる(終刊号まで)。
理由は不明。その後もオリンパス機自体はニュース欄に載ることがある。

56 2006春:表見返しのコニカミノルタ広告がなくなり、以後タムロンの広告が載るようになる。 裏表紙は依然としてベルビアで、フィルムの広告が載る。

58 2006秋:SONY α100広告 裏表紙はプロビア400X。

59 2006冬:Nikon D80(キムタク)、PENTAX K10D、Canon EOS Kiss Xなど広告。裏表紙の富士広告はクラッセW。
もうフィルム機の広告はないだろうと思ったので驚き。

60 2007春:裏表紙 フジ フォルティアSP 以降、春・秋はポジの広告、夏冬はフィルム機の広告掲載のパターンとなる。

65 2008夏:前号まで表見返し広告はタムロンだったが今号からニコンに。
ニコンはそれまで中ページの半段広告だった。
両社の広告位置は入れ替わるが、上段だったニコンの位置にソニーが繰り上がり、空いた下段にタムロンが入る。
この広告位置は終刊号まで継続。

66 2008秋:ベルビア50 春秋シーズンのリバーサルフィルム広告はついに本号が最後となる。
ネイチャーフォト層へのポジの広告が成り立つのはこれくらいの時期までだったということか。

67 2008冬:裏表紙はクラッセ

68 2009春:裏表紙フジGF670。まだフィルム機の広告を継続。

78 2011秋:裏表紙「富士フィルムフォトコンテスト フジコン大賞新設」この号でついにフィルムカメラ・フィルムの広告が途切れる。
ただし次号以降はまだ数号クラッセとGF670の広告が載る。

80 2012春:裏表紙GF670W。今号まで裏表紙の富士フイルム広告は上記の78号を除きクラッセとGF670で回していたが、ついにこの号が最後になる。

81 2012夏:裏表紙広告フジ X-Pro1になる。これ以降フィルム機の広告はない。
ちょうど富士のフィルム縮小・値上げ開始と軌を一にしていて、いまおもえばおそらくこの時期に富士はフィルムを見切ったのだろう。

88 2014春: 「スマホ写真」という単語が出る。

106 2018秋 :カメラの買い方記事で「人気があるのは、ミラーレス一眼カメラです」と明言される。

115 2020冬 最終号:「話題のVlogをはじめませんか?」という記事あり。
裏表紙広告が開始したVol.14以来継続していた裏表紙の富士フイルム広告がなくなる(新宿 北村写真機店広告が掲載)
富士の広告出稿終了が廃刊の要因では?
さらにその原因はいうまでもなく新型コロナウイルスである。

気がついたこと

途中から広告の話ばかりになっていますが、
48 2004春号で田中長徳の連載が打ち切られたあと、読み物などのマニアックな内容はほとんどなくなってしまいます。
というよりむしろ2000年前後の数年が異常だったのでは……

なんだかんだで、他社広告が完全にデジタルに切り替わった(52 2005春)以降もず~っとフィルム・フィルム機の広告を出し続けていた(80 2012春まで)富士フイルムは偉い、という気持ちになりました。

広告位置の変遷

広告位置は14号で増ページしてからほとんど固定。

14 1995秋~:
表見返し:ミノルタ・コニカミノルタ
中ページ1:上ニコン / 下京セラ
中ページ2:上オリンパス / 下PENTAX
裏見返し:Canon
裏表紙:富士フイルム

52 2005春~:
表見返し:ミノルタ・コニカミノルタ
中ページ1:上ニコン / 下SONY
中ページ2:上オリンパス / 下PENTAX
裏見返し:Canon
裏表紙:富士フイルム

54 2005秋~:
表見返し:ミノルタ・コニカミノルタ
中ページ1:上ニコン / 下SONY
中ページ2:上 HAKUBA / 下PENTAX
裏見返し:Canon
裏表紙:富士フイルム

56 2006春~:
表見返し:タムロン
中ページ1:上ニコン / 下SONY
中ページ2:上 HAKUBA / 下PENTAX
裏見返し:Canon
裏表紙:富士フイルム

65 2008夏~:
表見返し:ニコン
中ページ1:上 SONY / 下 タムロン
中ページ2:上 HAKUBA / 下PENTAX
裏見返し:Canon
裏表紙:富士フイルム

115 2020冬 最終号
表見返し:ニコン
中ページ1:上 SONY / 下 タムロン
中ページ2:上 HAKUBA / 下PENTAX
裏見返し:Canon
裏表紙:自社(新宿 北村写真機店)

まとめ

以上となります。

広告位置のフォーマットが20年以上固定されていること本当に驚いた(紙媒体ってそういうものなんでしょうか?)

全号通しで読み終わったときは、思えば遠くへ来たものだという気持ちになりました。

付録 全号通読時のメモ 生データ

テキストエディタで書いたメモをそのまま貼ります。
内容は上記と被っています。

通読時メモ

https://www.kitamura.jp/photo/seasons/

全体的に広告が非常に貴重

タイトルは
1~19号は「写友缶」
20号~「フォトライフ四季」

6は欠号
12 1995春 アグフアOEMのキタムラオリジナルフィルム 「四季物語」
18 1996秋 完全保存版フィルム大全
19 1996冬 保存版三脚特集
22-23 1997秋-1997冬 南伸坊インタビュー
23 1997冬 デジタルカメラ特集(初) この号からWeb同時掲載
24-25 赤瀬川原平インタビュー
26 1998秋 田中長徳インタビュー キタムラの中古買取相場表
27-29 1998冬-1999夏 田中長徳 「カメラはライカ」連載:内容はライカの通史だが、クラカメブームを色濃く感じる
31 1999冬 林丈二寄稿(路上観察学会連載)
32 2000春 藤森照信寄稿(路上観察学会連載)
33 2000夏 松田哲夫寄稿(筑摩書房常務、路上観察学会連載)
34 2000秋 赤瀬川原平寄稿(路上観察学会連載、最終回)
35-38 2000冬-2001秋 田中長徳「日本のカメラよもやま話」連載
27-35号まで 裏表紙広告はずっとフジのチェキ広告(滝沢秀明)
39-42 2001冬-2002秋 「サンダー平山のまじめなポートレート講座」連載
40 2002春 「保存版 インターネットでらくちんプリント デジカメプリント活用術」:初の本格的な一般向けデジカメ記事 終わりの始まり
42 2002秋 前号まで表見返しはしばらくミノルタα-7の広告だったが、今号からDiMAGE 7i(44まで)
43 2002冬 京セラの広告がCONTAXからコンデジ(Finecam S5、S3L)になる
43-46 2002冬-2003秋 「サンダー平山のデジカメで撮るストリートスナップ講座」連載
44 2003春 裏表紙広告富士フイルム スーペリアヴィーナスになる(前号まではずっとズームマスター800) 最末期のカラーネガ、オーパーツ感があり悲しい
45 2003夏 表見返し広告 ミノルタ DiMAGE Xt サンダー平山連載の記述「最近ではほとんどのコンビニにデジカメプリントの機械が置いてある」
46 2003秋 ペンタックス広告が、広角側24mm~のESPIO 24EW、オリンパス広告はμ-III 150と、末期AFコンパクトに
47 2003冬 表見返しミノルタDiMAGE A1 オリンパスE-1、PENTAX *istD広告 スタジオマリオ広告が載る Canonは依然としてEOS7、NikonはF80・U2・Us
47-48 2003冬-2004春 チョートクの「デジカメをもっと楽しもう」連載(2回のみ):ここで編集方針が変わったことがわかる。
49 2004夏 デジタル一眼レフカメラ入門1
50 2004秋 Nikon広告がD70になる 裏表紙広告はベルビア(前号までスーペリアヴィーナス) フィルム機広告はEOS7sのみ
51 2004冬 デジタル一眼レフカメラ入門2 表見返しα-7Digital広告 E-300、*istDS 裏表紙ベルビア、裏見返しEOS7s
52 2005春 デジタル一眼レフカメラ入門3 「こだわり自分流のためのRAW現像」 今号から京セラ広告が消えSONY広告が掲載 CanonもEOS20D広告 裏表紙はベルビア
53 2005夏 p.26-27が脱落 裏見返しEOS Kiss DN、裏表紙広告はフジクロームフォルティアSP
54 2005秋 今号からオリンパス広告がなくなり同位置はHAKUBAに。理由は? 裏表紙広告はフジクロームフォルティアSP
55 2005冬 表見返し αSweetD 「クラシックカメラの魅力」 HAKUBA広告継続 裏表紙はベルビア
56 2006春 表見返しのコニミノ広告が消失、タムロンに。 裏表紙はベルビア
57 2006夏 裏表紙はプロビア400X。後世の人間としてはまだフィルム広告が継続していることに驚き。
58 2006秋 SONY α100広告 裏表紙はプロビア400X。
59 2006冬 Nikon D80(キムタク)、PENTAX K10D、Canon EOS Kiss X広告。裏表紙はフジ クラッセW。
60 2007春 裏表紙 フジ フォルティアSP
61 2007夏 裏表紙 クラッセW コピーは「ますます、フィルムへ。」
62 2007秋 裏表紙 フジ フォルティアSP
63 2007冬 Nikon D300、SONY α700広告 裏表紙クラッセW
64 2008春 K20D EOS40D 裏表紙はベルビア50
65 2008夏 前号まで表見返しはタムロンだったが今号からニコンに。タムロンは前号までのニコンの広告ページに(ただし上下入れ替わり、SONYが上に) 裏表紙クラッセW
66 2008秋 ベルビア50 春秋シーズンのリバーサルフィルム広告は本号が最後
67 2008冬 表見返しD700 SONYα900 PENTAX K-m 裏表紙はクラッセ
68 2009春 表見返しD90 裏見返し5DMk2 裏表紙フジGF670
69 2009夏 表見返しD5000 PENTAX K-7 裏表紙GF670
70 2009秋 裏表紙GF670
71 2009冬 裏表紙クラッセ (まだいくの!?)
72 2010春 裏表紙クラッセ
73 2010夏 GF670
74 2010秋 SONY NEX-5広告 裏表紙GF670
75 2010冬 GF670
76 2011春 GF670
77 2011夏 GF670W
78 2011秋 震災の写真修復ボランティアの小記事 裏表紙「富士フィルムフォトコンテスト フジコン大賞新設」ついにフィルムカメラ・フィルムの広告が途切れる
79 2011冬 代官山北村写真機店オープンのニュース 裏表紙 GF670・GF670W
80 2012春 裏表紙GF670W
81 2012夏 裏表紙フジ X-Pro1 フジ初のデジタルカメラ広告 ちょうどこのあとフジのフィルム縮小・値上げが始まるので時期が同じ
88 2014春 SONY α7広告 「スマホ写真」という単語
106 2018秋 「人気があるのは、ミラーレス一眼カメラです」と明言
107 2018冬 「最新フルサイズミラーレス機、どれを選ぶ?」 まったく同じページ構成・フォーマットを踏襲したままここまで来たことに感無量
115 2020冬 最終号 「話題のVlogをはじめませんか?」 Vol.14以来継続していた裏表紙の富士フイルム広告がなくなり新宿 北村写真機店広告に。富士の広告出稿終了が廃刊の要因では? さらにその原因はいうまでもなく新型コロナウイルスである。

広告の位置は初期から基本的に固定されている。