クリストファー・ボナノス 『ポラロイド伝説』(2013年、実務教育出版)を読んだ。
原著は2012年、”INSTANT THE STORY OF POLAROID”。
基本的には読み物だが、戦前の偏光フィルターの発明から、インスタント写真の発明、最盛期、衰退と破綻、2000年代におけるポラロイドの再評価までがうまくまとまっている。
ただ、原著が2012年ということもあって、再評価については基本的に明るい話題としてしか書かれておらず、あくまでも延命にすぎないことについては触れていない。
個人的に重要と感じたのはコダックとの訴訟についての部分である。
写真技術の歴史に詳しい人にとっては既知のことと思うが、コダックのインスタントカメラの販売の差し止めなどについて、恥ずかしながら知らなかった。
なかでも、コダックとの訴訟の裏でおこなれた富士フイルムとの取引がもっとも興味深かった(p.184)。
磁気テープなどの技術を提供するバーターで、富士フイルムはポラロイドからインスタント写真の技術を得たという。
フォトラマ、Instaxの誕生である。
2021年現在においても独自の地位を保っているチェキは、このことがなければ生まれなかったわけだ。
また、いまなお富士フイルムが銀塩の感材を生産できているのは、チェキの需要があるからとも聞く(真偽は知らないが)。
富士フイルムの感材が残っている遠因がこのことにあるとすれば、非常に面白いことだ。
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