OLYMPUS L-1 ホールディング良好なL型ボディのフィルムカメラ(iS-1000 / L-1000)

OLYMPUS L-1 ホールディング良好なL型ボディのフィルムカメラ(iS-1000 / L-1000)

みなさんこんにちは!
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は、オリンパスのフィルムカメラ。
OLYMPUS L-1について話します。

OLYMPUS L-1

OLYMPUS L-1の外観とスペック

OLYMPUS L-1

OLYMPUS L-1

レンズ:OLYPUS LENS ZOOM 35-135mm F4.5 – 5.6 15群16枚
シャッター:縦走りフォーカルプレーンシャッター B、15秒~1/2000秒
巻き上げ:自動
露出計:中央重点? スポット測光使用可
カウンター:液晶に表示
フォーカシング:AFとパワーフォーカス。AFポイントは中央1点。
電源:CR123 x2個
ファインダー:一眼レフレックスファインダー
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉、裏蓋内へのオートローディング
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1990年
製造元:オリンパス光学工業

※動画作成時に参考としたpdfが削除されていたため、記事内容をもとに表を作成。

OLYMPUS L-1について

OLYMPUS L-1

OLYMPUS L-1は1990年に発売した製品で、海外ではiS-1000やL-1000と名乗っていました。

見ての通り、レンズとカメラ本体が一体になったカメラで、1990年のカメラとしては先進的な見た目をしています。

※発売年についてはオリンパス公式サイトを参照。

ブリッジカメラ

レンズとカメラ本体が一体になったカメラ

ちょうどこのころ、1990年くらいに「ブリッジカメラ」というジャンルがあったんですね。
ブリッジカメラというのは、ざっくりといえばオートフォーカスのコンパクトカメラと、レンズ交換式の一眼レフカメラの間に位置するカメラのことです。

コンパクトカメラでは機能が物足りないけれど、レンズ交換式の本格的な一眼レフカメラは難しそうで不安。
ブリッジカメラはそういうユーザーをターゲットにした製品でした。

そして、そういったブリッジカメラの代表格が、このOLYMPUS L-1をはじめとするLシリーズだった、というわけです。

(ほかに、RICOH MIRAI、OLYMPUS IZM、CHINON GENESIS、MINOLTA APEXなどが有名です)

構造的には一眼レフカメラ

ブリッジカメラというのは、じつは製品のマーケティング上の事情で生じたジャンルにすぎません。
たんにブリッジカメラといっても、カメラ自体の構造には、一眼レフカメラをもととしたものと、コンパクトカメラから発展したものが入り混じっているんです。

では、このOLYMPUS L-1はどちらなのかというと、本質的にはフォーカルプレーンシャッターの一眼レフカメラです。
裏蓋を開けると、このように縦走りのシャッター幕が見えます。

縦走りのシャッター幕

カタログスペック

では、まずは数字に現れる性能についてざっくりと見ていきます。

スペックについては、オリンパス米国法人のサイトにある英語版説明書を参考にしました。

【2021年12月22日追記】公式サイトから削除されてしまったようです。
説明書はこちら
「OLYMPUS iS-1 INSTRUCTIONS」
https://www.olympusamerica.com/files/oima_cckb/IS1_english.pdf

シャッターはバルブと15秒~1/2000秒。

低速側 15秒

高速側 1/2000秒

1990年ということで一般的なスペックですね。

ファインダーは、焦点距離50mmのとき0.75倍、視野率は85%とのこと。

ファインダー

撮影モードですが、基本的にはプログラムAEと絞り優先、マニュアルの3モードのカメラです。

絞り優先

シャッター優先AEはついていませんが、必要十分でしょう。
ただ基本的にはプログラムAEで使うことが前提だとは思います。

シーンモードもある

シーンモード

英語版説明書のスペック表には、4つ目のモードとして夜景モード、5つ目のモードとしてポートレートモードが挙げられています。

ようするにシーンモードもあるということですね。

ただ、ちょっとこれは、プログラムや絞り優先と同列に並べられるものではないのでは、とも感じます。

また、シーンモードへの切り替えボタンには、ズームメモリーという、ボタン一発で特定の画角にズームする機能も割り振られています。

ストロボ

ストロボ

ペンタプリズムの上の一般的な位置にストロボが内蔵されています。
通常のオートストロボのほかに、赤目軽減、後幕シンクロ、夜景モードではスローシンクロを使うことができます。

フィルム感度設定はDXコードのみ

フィルムの感度設定はDXコードで、説明書を読んだ限りでは手動設定はできないようです。
DXコードのないフィルムはISO25になります。

じつはここ、ピンポイントでハマりました。
DXコードが読み取れないとき、他社のカメラではISO100(=中庸感度)になることが多いので、ISO100なら大丈夫かと思い、DXコードのない、ADOX Silvermax 100を入れたんですよね。
そうしたら、一枚目の撮影時に明らかに露出がおかしく、ISO25になっていることに気がついたのでした。
(フィルムは1枚目だけで巻き戻して取り出しました)

ここについては、フェイルセーフということを考えるとISO100のほうが無難だと思うのですが、なぜISO25にしたのでしょうか
(4年後に発売したL-10でも、説明書によると最低感度のISO25になってしまうようです)

レンズ

OLYPUS LENS ZOOM 35-135mm F4.5 - 5.6

レンズはOLYPUS LENS ZOOM 35-135mm F4.5 – 5.6
15群16枚。

日本語のオリンパス公式サイトでは「EDレンズを用いた高性能4倍ズームレンズ」と真っ先に紹介されていて、このカメラのウリだったようです。
ただ、致し方ないところですがちょっと暗いと感じます。

ズームはシーソーボタンで行う

シーソーボタン

レンズのズームは鏡筒のシーソーボタンで行います。

反応は悪くありません。

パワーフォーカス

レンズにピントリングはありませんが、じつはマニュアルフォーカスも可能です。
裏蓋の液晶右上のPFボタンを押すと、鏡筒のシーソーボタンを使って電動のパワーフォーカスで手動のピント合わせが行えます。

液晶右上のPFボタン

ただ、これはちょっとオマケ程度の機能かもしれないです。
系譜的にはOM3桁機の影響下にあるといえますね。

マクロ機能

もうひとつレンズについてですが、マクロ機能もついています。
この時代のズームということであまり寄れないのですが、液晶の下のフラップを開けてMACROボタンを押すと、望遠端のマクロモードと、広角端のマクロモードに切り替えることできます。

マクロ機能

こちらはかなり実用的です。
今回の撮影時も、望遠側と広角側で実際に撮影に使用してみました。

望遠側の通常時とマクロ比較

通常時

望遠側通常時

マクロ時

望遠側マクロ時

広角側の通常時とマクロ比較

通常時

広角側通常時

マクロ時

広角側マクロ時

構造面の特徴:裏蓋へのフィルム送り

さて、このOLYMPUS L-1には構造面で大きな特徴があります。

それが、裏蓋側にフィルムを送るということです。

裏蓋の中にフィルムを巻き上げる

フィルムが入った状態で裏蓋を開けると、このように、フィルムの先端がカメラの本体側ではなく、裏蓋のなかへ引き込まれているんです。

裏蓋の中にフィルムを巻き上げる

カメラを上から見ると、ファインダーの下、液晶の部分が大きく出っ張っていますが、これはこの中にフィルムを巻き取っているからなんですね。

ファインダーの下が大きく出っ張っている

この機構の目的は、オリンパス公式サイトに「L型ボディーを実現するためのフィルム巻き取り機構」とあるように、このカメラのデザインありきのものです。

という言い方をすると見た目先行のカメラのように聞こえるかもしれないのですが、このカメラを実際に触ってみて、そうではないということがわかりました。
L型ボディには必然性があります(詳細は次節)。

撮影に使用した印象

では、OLYMPUS L-1を撮影に使用して感じたことについて話していきます。

ホールディング

まず、ホールディングは非常によいです。
右手側も左手側も、普通に持つだけで操作部品に指先が触れる、理想的な形状をしています。

ホールディングは非常によい

じつは、このホールディングの良さを実現するのに必要なのが、L型のボディ形状だったんだと思うんです。

カメラをどうやって構えますか?

一眼レフカメラを持つときって、どうやって持ちますか?
わたしはカメラマニアなので、こうやって左手でカメラを下から支えます

左手で下から支えて

右手でシャッターを切る

たぶん、カメラに慣れている多くの方はそうすると思います

でも、カメラに慣れていないと、こうやってカメラを左右から掴んでしまう人が多いみたいなんですよね。

カメラに慣れていないと左右から掴んでしまう

左右から掴む持ち方をすると、シャッターを切ったときブレやすいです。

理想的な持ち方のために

このことを防ぐためには、そもそも、左手側を横から掴めないようにしてしまえばいいのです。

左手側を横から掴めないようにしてしまえばいい

これは完全にわたしの想像なのですが、一眼レフに慣れていない人でも必ず理想的なホールディングができる形状として導き出されたのが、このL型ボディだったんだと思うんですよね。

一眼レフに慣れていない人でも必ず理想的なホールディングができる形状

「デザイン」というのはもともと、見た目のことだけを表す言葉ではありませんが、オリンパスL-1は、まさに本来的な意味でのデザインが行われたカメラなのだと感じました。

機能面では少し物足りない部分も

ただ、カメラそのものの性能については、時代的な限界も感じました

1990年のズームレンズということで、撮影した写真は当時の単焦点レンズに比べると少し劣ります。

またオートフォーカスの性能も少々物足りないです。
AFポイントが中央1点なのは時代的に仕方のないところ。

AFポイントが中央1点なのは時代的に仕方のないところ

ですがそれにしても、少し薄暗くなったり、少しコントラストが低かったりするととたんにAFが迷い出すんですよね。
このあたり、レンズ交換式のAF一眼レフから早い時期に撤退したOLYMPUSの限界だったのかな、とも感じました。

それから難点として、このカメラかなり重いです。
形だけ見るともっと後の時代のデジタルカメラくらいの重量を想像するのですが、サイズの割にかなり重量感があります。

重い

このカメラの立ち位置を考えると、ちょっとこれはマイナスポイントかな、と思いました。

後に続いたカメラであることが最大の価値

さて、OLYMPUS L-1についていろいろと話してきましたが、荒削りな点もあるとはいえ、このカメラは歴史上エポックメイキングな機種だったことは間違いないと思います。

なぜそういえるのかというと、右手側にグリップのついた、レンズ固定式で、L型のフォルムのカメラ、というパッケージングが後の時代に続いていったからです。

オリンパスL-1のパッケージング

フィルムカメラの時代にもOLYMPUS Lシリーズは後継機種が続いてきますが、むしろこういう形状のカメラは、デジタルカメラの時代になってから花開いたといえます。
1990年代後半から2000年代前半、コンパクトデジタルカメラの時代に同様の形をしたカメラが広く用いられたのはもちろんのこと、スマートフォンが普及してコンパクトデジタルカメラというジャンルが衰退している2021年になっても、同様の形状のカメラは各社から販売されています

OLYMPUS L-1のすごさ、Lシリーズのすごさというのは、高倍率のズームレンズがついた、レンズ固定式カメラのパッケージングの最適解を導き出したことである。
正解へと至ったカメラであることが、このカメラの最大の価値だったのではないか、と思います。

OLYMPUS L-1で撮った写真

最後に、OLYMPUS L-1で撮った写真をまとめて見ていきましょう。

撮影に使用したフィルムはKodakのColorPlus200です。

OLYMPUS L-1で撮った写真

OLYMPUS L-1で撮った写真

よく晴れた日で、撮影の条件としては悪くなかったとは思うのですが、どうしても1990年のズームレンズっぽさを強く感じます。
ただ、当時はほとんどの場合、L判のプリントで写真を鑑賞していたと思うので、実際には問題なく使えていたと思うのですよね。

OLYMPUS L-1で撮った写真

OLYMPUS L-1で撮った写真

広角側と望遠側を同じ場所で使うとこんな感じになります。

↓広角端35mm

広角端

↓望遠端135mm

望遠端

望遠側の135mmって、レンズ交換式の一眼レフカメラで考えるとそこまで長いレンズという感じがしませんが、こうやって使うと案外望遠だと感じたので、OLYMPUS L-1のパッケージングというのは成功していたのだと思います。

たぶん、このカメラの望遠側の主な用途は運動会で子供を撮影する、とかだったのだと思いますが、上を見ればきりがないものの、一般的な目で見れば過不足のないスペックだったんだと思いますね。

OLYMPUS L-1関連書籍

商業出版された書籍には挙げられるものがありません。

アサヒカメラのニューフェース診断室をまとめたムック『オリンパスの軌跡』でLシリーズが完全に無視されていることに気がついて、正直いって驚きました。

それだけに佐藤成夫さんの同人誌「佐藤評論Vol.9 ブリッジカメラとは何だったのか」が非常に重要な書籍となるといえます。

まとめ

ということで、オリンパス L-1について話してきました。

こういう形状のカメラはのちには珍しくなくなってしまうので、その凄さというのがわかりにくいのですが、1990年という時代にこうやってまとめ上げたのは、とても意義のあることだったのだと思います。
L型の形状にデザイン的な合理性があったということは、今回動画を作らないと気がつくことができなかったですね。

ブリッジカメラについては、佐藤評論の佐藤成夫さんが歴史をまとめようとされているとのことで、非常に期待しています。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

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参考文献

「L-1:Lシリーズ:カメラ製品:オリンパス」(2021年9月4日閲覧)
https://www.olympus.co.jp/technology/museum/camera/products/l-series/l-1/
「Olympus iS series – Camera-wiki.org」(2021年9月4日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/Olympus_iS_series
「Olympus iS-1000 – Camera-wiki.org」(2021年9月4日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/Olympus_iS-1000
「OLYMPUS iS-1 INSTRUCTIONS」p.71-72 (OLYMPUS 米国法人Webサイトより取扱説明書pdf、2021年9月4日閲覧)
https://www.olympusamerica.com/files/oima_cckb/IS1_english.pdf