みなさんこんにちは!
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は、旧ソ連で作られた一眼レフカメラ、ZENIT-19について話します。
Contents
ZENIT-19のスペックと外観
ボディ外観
ケース・ストラップ
※ストラップの金具部分はオリジナルではない
スペック
レンズマウント:M42マウント
シャッター:電子制御の縦走りメタルフォーカルプレーンシャッター B、1秒~1/1000秒
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ(分割不可)
露出計:TTL絞り込み測光(おそらくCdS受光素子)
カウンター:順算式、自動復元
フォーカシング:マニュアル
電源:RC-53 x2(MR9水銀電池互換?)
使用フィルム:35mmフィルム
製造開始年:1979年
製造元:クラスノゴルスク機械工場
参考文献:「ZENITcamera: ЗЕНИТы-19」
http://www.zenitcamera.com/archive/zenit-19/index.html
ZENIT-19
このカメラなのですが、「ZENIT Camera」というロシア語の、愛好家が作ったWebサイトによると、1979年から1987年まで製造されたモデルということです。
参考文献:「ZENITcamera: ЗЕНИТы-19」
http://www.zenitcamera.com/archive/zenit-19/index.html
背面にプリントがありますが、ZENITということで、クラスノゴルスク機械工場で作られたものです。
シリアルが83から始まっているので、たぶん1983年製なのでしょうね。
旧ソ連の35mm一眼レフといえばZENIT、というのは間違いないところですが、このZENIT-19は比較的珍しいモデルといえるんじゃないでしょうか。
このZENIT-19はたまたまメルカリにボディだけ出ていたのですが、ヤフオクやメルカリでもなかなか見かけるものじゃないと思います。
もちろんジャンクでの購入で、電子カメラなのは知っていたのでダメ元だったのですが、電池を入れたらなんと動いてしまったのでした。
ZENIT-19の特徴
それでは、このカメラの特徴を見ていきましょう。
ZENIT-19はM42マウントの一眼レフカメラです。
最大の特徴は、シャッターが電子制御だということ。
シャッター速度は高速側が1/1000秒。
低速側は1秒までなのですが、電子制御なのでスローガバナーの音はありません。
シャッターは縦走りのメタルフォーカルプレーンシャッターです。
今回、トップカバーを外してファインダー周りを清掃しただけで、シャッターの具体的な構造を見てはいないのですが、シャッター羽根の形状が東ドイツのプラクチカとは明らかに違うので、旧ソ連で独自に開発されたものなのではと思います。
電源は、MR-9水銀電池を2つ使います。
今回は互換品のPX625を使いました。
「ZENITcamera」の記事ではRC-53という電池が指定されていますが、どうやらMR-9と同じものを指しているようです。
ちなみに電池を入れていないとシャッターは1/1000秒しか切れません。
電子制御ですが、露出はマニュアル露出のみです。
兄弟機種としてZENIT-18というものもあって、そちらは絞り優先AEが可能なようです。
ZENIT-19の内部
さて。
電子制御のカメラといいますが、実際のところ旧ソ連の電子制御シャッターってどんなものなのでしょうか。
上下のカバーを開いたので画像を出すのですが、だいたいこんな感じです。
まずこれが、底部の基板。
感度設定ダイヤルのあたりです。
旧ソ連のカメラだからといってけなすようなことはあんまり言いたくないのですが、それでもちょっと、これは怖くて使えないな、という感じはあります。
配線の線材もちょっと、素人目に見ても品質的にキツいです。
それじゃあトップカバーの側はどうなってるかというと、実はこのカメラ、上側にはバッテリーチェックを除いて基板はないんですよね。
メーターとCdSに配線が伸びてるだけです。
シャッターダイヤルはご覧の通り、太い軸で伸びてきているだけです。
ただしこのあたり、明らかにスペースが空いているので、絞り優先がついているZENIT-18ではAE関連の部品が入っている可能性もあると思います。
ファインダーのモルト
次にファインダーなのですが……
いまトップカバー内部を見せたのでお分かりのことかと思いますが、このカメラ、ファインダー周りに異常にモルトが使われています。
この画像はトップカバーを外した直後、一切いじっていないときに撮影したのですが、いくらなんでもこの使い方はないだろう、という感じです。
もちろん全部加水分解してボロボロです。
当然、ファインダーも相当汚かったので清掃して、モルトを除去して代わりの素材を貼り付けたのですが……
ボディ内部にモルトのかすが落ちていたようで、気づかないうちにまたファインダー内にモルトが侵入してしまっていました。
これ、ミラーボックスを下してちゃんと清掃したほうがいいのはそりゃそうなのですが、正直、現状品で一応は動いているものを下手にいじって壊したくないので、とりあえず今回は、動いているうちに動画で紹介することを優先しました。
もし清掃するとしても、この動画の制作が完了したあとにしたいと思います。
ファインダー表示
さて、ファインダーですが、右側に露出計の指針があります。
露出計は定点合致式です。
あとで作例を出しますが、露出計の出た目で撮影したところそれっぽい値を示してはいたので、使えなくはないと思います。
ただし、針の振れ方はかなり大味です。
また、ファインダーは明らかに色が青みがかっています。
これは新品のときからそうなのか、経年変化で青くなったのかはわかりません。
ファインダー視野の四隅が丸くなっているのは珍しいですね。
スクリーンは中央がマイクロプリズムになっています。
周辺のフレネルがちょっと粗くて目立つ感じはあります。
レンズマウント
レンズマウントはM42マウントです。
露出計のスイッチが、正面から見てマウントの左下についていて、押し込んでいる間だけレンズの絞りピンが押されて、露出計のスイッチが入るようになっています。
レンズですが、ZENITということで本来はHeliosが標準レンズだったと思うのですが、いま持っていないのでとりあえず東側のレンズ、Carl Zeiss JenaのTessarを付けて撮影しました。
その他の点
そのほかですが、巻き上げはレバー巻き上げ。
分割巻き上げはできません。
巻き戻しはクランクです。
アクセサリーシューはホットシューになっていて、それとは別にシンクロコード接点もついています。
上部のボタンでバッテリーチェックができます。
内部の電装系がちょっと危なっかしい
さて、このカメラを使ってみた感想なのですが……
あんまり、これはひどい、とか迷カメラ、みたいな煽った言い方はしたくないんですよ。
でもちょっと、このカメラについては相当無理をしていて、怖くて使えないな、という感じがあります。
現状品、一応は動いているのでじつはタフなカメラである可能性もあるのですが、内部の電装品を見てしまうと、ちょっとこれはなぁ……という気持ちになります。
いっぽうで、ダイキャストフレームや金属幕のシャッター、そのほか機械的な部分についてはけっして品質は悪くないです。
旧東側は西側に電気・電子分野で差を付けられたということを聞いたことがありますが、たぶんこのカメラも、そういうことだったのだと思います。
逆にいえば、旧ソ連がカメラの電子化を精一杯に頑張った結果がこのZENIT-19だということもできるかもしれないですね。
ミラーショックが非常に大きい
使用感なのですが、こちらもはっきりいってよくないです。
35mmの一眼レフのなかでも、とくにミラーショックが大きいです。
プラクチカMTL5Bを使ったときもミラーショックが大きいと感じたのですが、比べ物にならないくらいです。
シャッターの感触を言葉で表すと、ドカンドカンという感じです。
あと、カメラの全体的なスタイリングについては、他に似ているものがなく、けっこう好ましいとさえ感じます。
ただ、見た目の印象から感じるよりもけっこう大きなカメラです。
外装はプラスチックですが、中身は金属の塊なので、640gと重さもけっこうあります。
作例(Tessar 50mm F2.8)
では、レンズは旧ソ連製ではないのですが作例を見ていきましょう。
レンズは東ドイツ製のTessar 50mm F2.8。
フィルムはFomapan 200です。
(Parodinal 1:50 20d 9min)
ここまでいろいろと言ってきましたが、このカメラ、メカとしてはちゃんと動いているんですよ。
まずこのカット。
電車が走っていますね。
駅が近いとはいえ、たぶん遅くとも時速70kmは出ているんじゃないでしょうか。
それを横から撮ってぴたりと止まっている。
ということで、このカメラで最高速の1/1000秒を切っているのですが、ご覧の通り露出にムラもなく、ちゃんと写っています。
少なくとも、メカの部分については、きっちりと信頼性を備えているわけです。
金属部分の精度についても、こうして絞りを開放にして、近接で撮影すると、ちゃんとピントが合った写真が撮れています。
電装系とか、使用したときの気持ちよさとか、そういった部分に難はありますが、少なくともカメラとして最低限の部分はちゃんと押さえている。
そこが満たされてなくてどうするんだよ、と思うかもしれないですが、「このカメラは写真が撮れるんです」をきちんと満たすのって、それだけでも非常に難しいことなんですよね。
実際、電子制御のシャッターも新品のときはそれなりに信頼して使えたと思うので、やっぱりなんだかんだいっても、ソビエト工業の底力、というのはあったのだと思います。
ということで、今回の作例は、カメラのボディの精度やつくりが関連するところを重視して撮ってみたのでした。
まとめ
ZENIT-19のお話でした。
ほんとうに、あんまりカメラのことを下げたくないのですが、電装系、モルト、そしてミラーショックについては、ちょっと厳しいカメラだな、と思いました。
ただ、シャッターや巻き上げのメカ、ダイキャストの精度については全然問題ないのですよね。
このあたり、旧ソ連のカメラでもわたしが普段実用しているZorkiにはそもそも電装部品がないわけで、電装系と機械部分にかなりの差を感じました。
その点で、1979年時点のソ連の最新カメラがおかれた状況を、非常によく表しているなぁ、と感じたのでした。
旧ソ連製のカメラ、情勢もあってちょっと語りにくさもあるのですが、他にも持っているので今後も扱っていきます。
ありがとうございました。
御部スクラでした。