みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回はこの赤いコンパクトカメラ、SELBY AM-Dについて話します。
Contents
SELBY AM-Dの外観・スペック
レンズ:35mm F3.8(銘なし)
シャッター:単速 実測でおそらく1/125秒
巻き上げ:電動 自動巻き上げ
露出:感度設定により絞りが2段に可変
カウンター:順算式、自動復元
フォーカシング:固定焦点
電源:単3電池 x2
ファインダー:逆ガリレオ式 フレームなし
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉、オートローディング
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1980年代中頃(1983年~)
発売時価格:不明
製造元:不明
販売元:岩田エンタープライズ?
SELBY AM-Dについて
このカメラなのですが、詳細不明です。
検索によるとSELBYというブランドは岩田エンタープライズという商社のもので、同じブランドでトイカメラがいくつも出ているようですね。
[1]「ある意味予想を裏切らない「SELBY 35TL」の写り:-コデラ的-Slow-Life- – ITmedia … Continue reading
外観からみるにおそらく1980年代中頃のものかと思います。
機能的には非常に単純なカメラです。
レンズ
スペックを見ていくと、
まずレンズは35mm F3.8。
ファインダーの周りが一見するとAFっぽいデザイン処理なのですがこれは見た目だけで、ピントは固定です。
35mm F3.8の固定焦点ということでたぶん3群3枚のトリプレットだと思いますが、このスペックなのである程度の写りは保証されていることになりますね。
今回モノクロですがちょっとだけ撮影したのですが、まあ普通に写っていました。
作例はあとでもっと流します。
レンズにはスライド式のレンズカバーがついています。
シャッター
シャッターはたぶん単速です。
簡易シャッターテスターで測ってみたところ、多少ブレはあるものの1/125秒くらいだと思います。
絞りと感度設定
絞りは感度設定によって変化します。
一応ファインダー脇に受光窓っぽいものがあるのですが、デスクライトにかざしてみた感じでは、光量によって絞りが自動で変化することはありませんでした。
暗所だとファインダー脇の赤LEDが点灯するので、ストロボ使用警告専用だと思われます。
感度設定はISO100、200、400、1000の4段階です。
ただ絞り自体は2段階しか変化しないようで、ISO100と200、ISO400と1000はそれぞれ同一です。
じつは、感度にISO1000があるということがこのカメラの発売年代の手がかりになります。
1983年にKodakからISO1000のKodacolor VR1000が出たので、その直後くらいのものということになる[2] … Continue readingのでしょうね。
電動巻き上げ・電動巻き戻し
巻き上げと巻き戻しは電気モーターによる自動です。
フィルム装填はオートローディングですが、巻き上げ軸の突起をパーフォレーションに引っ掛けて装填する方法です。
巻き戻しも電動です。
ただしフィルムが終わったとき自動では巻き戻し開始しなくて、REW.スイッチを手動でスライドする必要があります。
巻き上げと巻き戻しの速度はそれなりです。
あと音は大きいです。
ファインダー
ファインダーは逆ガリレオ式ですが、この年代のカメラなのにアルバダ式のブライトフレームなどは一切ありません。
こういうあたり、この機種がかなり廉価なラインのものだったことを反映していますね。
ストロボ
もちろんストロボがついています。
ストロボのON-OFFは前面のスイッチのスライドです。
このスイッチですがレンズカバーのスライドとは連動していなくて、個別に電源を切る必要があります。
電源
カメラ自体の電源は、本体もストロボも共用で、単3乾電池を2本使います。
普通の・平均的な・ユーザーが求めていたカメラ
さて。
このカメラは自動巻き上げと巻き戻しこそついていますが、固定焦点で、露出設定も簡易的なものでカメラが好きな人には響かないカメラなのは間違いないです。
でも、こういうカメラが普通に存在して売られていたということ自体から、興味深いことがわかると思うんです。
一般ユーザーが求めていた機能
それが、当時の一般的なユーザーにとって、どんな機能が訴求力があったのかということです。
1980年代から1990年代にコンパクトカメラを使うユーザーにとって、まず最低限備えてほしい機能とはなんだったのか。
ということを考えると、お金をある程度出してカメラを買うなら、自動巻き上げ・巻き戻しであることが第一の条件だった思うんですよ。
手で巻き上げなくていい=ちゃんとしたカメラ
わたしはフィルムカメラの最後の時期しか知りませんが、写ルンですのような簡易的でしょぼいと当時思われていたカメラと「お金を出して買うに値するちゃんとしたカメラ」の違いは、指でジコジコ回さなくていいということでした。
そう、1980年代から1990年代、カメラ好き以外の人にとっては、手動巻き上げのカメラというのはそれだけで安物、もしくはアナクロなものに感じられていたはずです。
実際には、このカメラは固定焦点だし露出も完璧には合わせることができないので写りはそれなりです。
でも、手動巻き上げでピントが任意にMFで合わせられるカメラよりも当時の購入層への訴求力は強かったと思います。
マニア視点だと一般ユーザーはわかってないな、となりがちですが、実際問題として、求められていたのはそこだったのだと思います。
作例
さて、最後にモノクロですが作例です。
使用フィルムはFomapan 400、パロディナールの1:50希釈で現像しました。
ほんとうに適当に撮影したカットしかないのですが、思ったよりも全然写っているんですよ。
もちろん、昼間に絞り込まれているので当然といえば当然なのですが、やっぱり35mm F3.8というスペックは素性が良いです。
さて、このレンズは固定焦点なのですが、このカットを見るとだいたいどのへんにピントが合うように作られているかわかります。
ちょっとフレアがすごいのですが、遠景のタワーマンションはボケていて、近くの電柱はピントがきている。
ようするに、よくある2~3mくらいにピントを固定した設計ですね。
ただ、近接での撮影は案外可能な印象です。
昼間で絞り込んだ状態なら、こんな感じでL判のプリントなら全然実用的な写りをしています。
ではさらに寄ってみると、このカットは長巻を詰め替えたラストカットで右側が白いのですが、まあここまで近いとボケてしまいますね。
ということで本当に適当に撮った写真なのですが、一応はちゃんと写るカメラで、たぶん当時のユーザーは十分満足したんじゃないかと思います。
まとめ
ということで今回はSELBY AM-Dのお話でした。
その時代時代にカメラが売られたということは買ったユーザーがいたわけですが、ユーザーが求めていたスペックというのも時代時代で異なったわけですよ。
1980年代から1990年代にかけて、最低条件として求められていたのは自動巻き上げ・巻き戻しだったんじゃないか。
このことは以前から感じていたのですが、実際に当時カメラを買っていたマニア以外の人がどう感じていたのか気になります。
マニア以外の視点でカメラや写真がどう扱われていたかはかなり気になるテーマなので、今後もちょっとずつ触れていきたいと思います。
ありがとうございました。
御部スクラでした。
脚注
↑1 | 「ある意味予想を裏切らない「SELBY 35TL」の写り:-コデラ的-Slow-Life- – ITmedia ビジネスオンライン」(2022年10月12日閲覧) https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1004/29/news001.html |
---|---|
↑2 | awane-photo.comより2017年5月21日の記事 「ACROSがなければ,FUJIBROで撮ればいいじゃない~撮影日記」(2022年10月12日閲覧) https://diary.awane-photo.com/2017/170521.htm |