みなさんこんにちは!
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は「カメラ・オブスクラ」について話します。
Contents
カメラ・オブスクラとは
わたし、御部スクラ(おぶすくら)を名乗っていますけど、これは「カメラ」の前身になった器械「カメラ・オブスクラ」から取った名前なんです。
カメラ・オブスクラ(Camera Obscura)。
ラテン語で「暗い部屋」という意味です。
(Camera:部屋 Obscura:暗い)
具体的にどういうものかっていうと、
光の入らない箱の片側にレンズをつけて、反対側に像を結ぶようにした、というもの。
↑図版出典 Wikimedia Commonsより
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:1646_Athanasius_Kircher_-_Camera_obscura.jpg
レンズではなくて小さい穴、ピンホールでも可能です。
そもそも、小さい穴を通った光が像を結ぶということは東洋でも西洋でも古代から知られていました。
それを道具として使われるようになったのは、15世紀ヨーロッパでのことのようですね。
↑レオナルド・ダ・ヴィンチによるカメラ・オブスクラのスケッチ
https://www.codex-atlanticus.it/ より
Codex Atlanticus(アトランティコ手稿) 0005v
最初は、暗い「部屋」というように部屋の壁に投影していたのですが、
箱の片側をすりガラスにして外に持ち出すということが考案されます。
このすりガラスに投影された像を筆記用具でなぞることで、絵を描くことを補助する道具として用いられるようになるわけです。
そして、このカメラ・オブスクラが元となって、写真を撮るための「カメラ」へと発展していくというわけです。
表記について
Camera Obscuraの日本語表記については、カメラ・オブスクラとカメラ・オブスキュラの2つがみられますが、今回はオブスクラのほうを用いています。
ちなみにわたしの名前がスキュラではなくスクラなのは、響きを重視したからです。
カメラ・オブスクラを作ってみた
と、言葉で説明してもわかりにくいので実際に作ってみました。
材料はこれだけ。
ダンボール箱。
トレーシングペーパー。
そして百円ショップで買ったルーペです。
※作り方は動画を参照してください。
カメラ・オブスクラを使ってみた
というわけで、外に持ち出して風景を投影してみました。
明るすぎるとトレーシングペーパーに写る風景がわかりにくいので、遮光性のある布(今回は大判カメラ用の冠布)をかぶせています。
このように、レンズを通った光がトレーシングペーパーの面に像を結んで見えるのです。
よく見ると、高速道路を走っている自動車が動いているのが見えますね。
動画でどれだけ伝わるかわからないのですが、キラキラとした光が像を結ぶ様子、とても美しいんです。
このカメラ・オブスクラの原理ですが、小学校の理科の授業でやったレンズの原理そのものです。
レンズを通った光がちょうどトレーシングペーパーの面に像を結んでいる、というわけです。
トレーシングペーパーの上をペンでなぞると、19世紀以前に実際に使われていたように、カメラ・オブスクラを使って絵を描くことが可能なのですが、ちょっと難しいですね。
(実際のカメラ・オブスクラではトレーシングペーパーではなくすりガラスだったり、中に反射鏡が入っていたりして、もっと使いやすくなっています)
そう、カメラ・オブスクラはあくまでも絵を描くことを補助してくれるだけで、
うまく絵を描くにはやっぱり絵心がいるんです。
結局は自分が絵を描かないといけないので、絵が下手だとどうにもならないんですね。
カメラ・オブスクラと写真の発明
そこで。
カメラ・オブスクラの像を自動的に記録できないか、と考えた人がいました。
19世紀に写真を発明した人たちです。
フランスのニエプスやダゲール。
イギリスのタルボット。
↑画像出典 Wikimedia Commonsより
ニセフォール・ニエプス肖像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Joseph_Nic%C3%A9phore_Ni%C3%A9pce.jpg
ダゲール肖像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Louis_Daguerre_2.jpg
タルボット肖像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:John_Moffat_-_William_Henry_Fox_Talbot,_1864.jpg
とくに、イギリスのウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットという人は、絵が下手で、カメラ・オブスクラを使ってもうまく絵が描けなかったので写真を発明しようと思い立ったことが知られています。
これらの写真の発明者たちは、カメラ・オブスクラをもととした器械を使って写真の撮影に成功します。
カメラ・オブスクラがそのまま「カメラ」になっていくわけです。
実際、最初期のカメラはカメラ・オブスクラそのものです。
今回わたしが段ボール箱で作ったカメラ・オブスクラでも写真を撮ることができます。
ちょっと乱暴ですがトレーシングペーパーに穴をあけて、そこにミラーレス一眼カメラをあてがいます。
すると
このように写真が撮れます。
※YouTubeの動画には、同様に撮影した動画も掲載しています。
もちろん、レンズ自体が1枚レンズ、単玉なのと、光が漏れてきているので写りは悪いですけどね。
でも、カメラの原理というのはたったこれだけです。
カメラ・オブスクラとカメラの歴史
実際、カメラというのは、カメラ・オブスクラの構造が起点となってスタートしていきました。
ただの箱だったカメラが、
蛇腹を使って軽く、幅広いピントを合わせられるようになり
持ち運びやすいように小型になり
ガラスの湿板、乾板からロールフィルムになり、
ピント合わせの方法がさまざまに考案され
小型のカメラでは蛇腹も使わなくなり
電気を使って露出やピントが自動化され
フィルムではなくデジタルのイメージセンサーが使われるようになる。
こうやって順番に見ていくと、ただの箱だったカメラ・オブスクラと、現代のデジタルカメラとはまったく同じものだとわかると思います。
ミラーレス一眼カメラだろうが、一眼レフだろうが、スマホのカメラだろうが、監視カメラだろうが、カメラというものは、基本的に暗い箱の前後に、レンズと感材を置いたものということに変わりはないんです。
その基本があったうえで、いろいろなレンズが発明されたり、いろいろな感光材料やイメージセンサーが発明されたりしてきた。
それがカメラなのです。
カメラ・オブスクラという物と言葉
というわけで、カメラ・オブスクラについて話してきました。
カメラ・オブスクラというのは、カメラのはじまりとなった道具です。
また、カメラ・オブスクラがなければ、写真というものが生まれることはありませんでした。
だから、カメラや写真が好きな人は、カメラ・オブスクラというもの、そしてカメラ・オブスクラという言葉に対して思い入れを持っていることが多いんですよね。
わたしが御部スクラという名前を名乗っているのも、だからです。
写真関連のお店とか、写真関係の文章でも引用されることが多くて、
吉祥寺にはbook obscuraっていう写真集専門の本屋さんがあるし、
ロラン・バルトの写真論のタイトルは「camera lucida」、暗い部屋に対する「明るい部屋」なんですよね。
まあ、難しいことはさておき、この動画で紹介したように、カメラ・オブスクラはルーペとトレーシングペーパーがあれば作ることのできるとても簡単な構造のものです。
トレーシングペーパーに写る像を見るだけでもとても美しくて楽しいので、夏休みの工作とか自由研究のテーマにもうってつけかもしれないですね。
カメラのはじまり、カメラ・オブスクラ。
ぜひあなたも作ってみませんか?
カメラや写真の歴史への理解が深まるかもしれません。
わたし、御部スクラのYouTubeチャンネルでは、写真史についても動画を作っていきたいと思います。
ぜひ今後ともよろしくお願いします。
ありがとうございました。