COSINA CT1 Super 機械式フィルム一眼レフカメラ解説

COSINA CT1 Super 機械式フィルム一眼レフカメラ解説

みなさんこんにちは。

フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は、コシナのフィルム一眼レフカメラ、CT1 Superについて話します。

Cosina CT1 Super

Cosina CT1 Super スペック

Cosina CT1 Super

レンズマウント:Kマウント
シャッター:縦走り メタルフォーカルプレーンシャッター B、1秒~1/2000秒、シンクロ速度1/125秒
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ(分割不可)
露出計:TTL開放測光(参考:CT1系がもととなったBESSAFLEX TMはSPD受光素子、中央重点測光)
カウンター:順算式、自動復元
フォーカシング:マニュアルフォーカス
電源:LR44 x2個
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1983年?
発売時価格:-
製造元:コシナ

参考:コシナ公式WebサイトよりBESSAFLEX TMの解説(pdf)(2021年12月22日閲覧)

Cosina CT1 Superについて

Cosina CT1 Super

コシナCT1系の機種というのは何種類もあるのですが、camera-wikiによれば、CT1 Superは1983年登場とされています。

参考:camera-wiki.org「Cosina」(2021年6月3日閲覧)
http://camera-wiki.org/wiki/Cosina

コシナというのは日本の長野県にあるカメラメーカーで、2021年現在はVoigtlanderなどのブランドでレンズを作っています。
また、すでに販売が終了してしまいましたが、1999年からライカマウントなどのレンズ交換式連動距離計カメラを作っていました。

Voigtlander BESSAのもととなった機種

今回紹介するこのコシナCT1 Superは、そういった、Voigtlander BESSAなどのレンジファインダーカメラの母体となったカメラであることが知られています。

2002年に刊行された『季刊クラシックカメラ No.15 特集 フォクトレンダー 二つの時代』によれば、レンジファインダーカメラのベッサが開発されるきっかけになったのは、このCT1 Superと同系統のボディであるCT1 EXをもとにファインダーを省略したボディをOEM供給したことだということです。
そして、シャッターや巻き上げ、フレームなどの構造をもとに、まずは距離計のないベッサL、そして連動距離計を内蔵したベッサRへと展開していくわけです。

参考:「クラシックカメラ*インタビュー 小林博文 フォクトレンダーはいかにして現代に甦ったか?」
『季刊クラシックカメラ No.15 特集 フォクトレンダー 二つの時代』 双葉社、2002年、pp.6-9。

OEMとして多くのメーカーへ供給

さて、ファインダーを省略したボディをOEM供給した、ということに触れましたが、
そもそも、このコシナCT1 Superをはじめとするコシナの一眼レフは、ロゴだけを変えたものから機能や外装をカスタマイズしたものまで、非常に多くのメーカーへOEMが行われた製品でした。

camera-wiki.orgの記事だけでも、MirandaやVivitar、Exaktaなどのブランドが挙げられていますが、有名無名併せて本当に数多くのOEMが行われています。
参考:camera-wiki.org(それぞれ2021年6月3日閲覧)
「Cosina CT1 Super」
http://camera-wiki.org/wiki/Cosina_CT1_Super

「Cosina CT1EX」
http://camera-wiki.org/wiki/Cosina_CT1EX

大手メーカーでは、
NikonのFM10、オリンパスのOM2000、Canon T60、RICOH XR-8などが挙げられます。
FM10では外装がニコンの他の製品にかなり似せられていたり、オリンパスOM2000ではスポット測光が内蔵されていたりと、それぞれのメーカーに合わせたカスタマイズも行われています。

参考:camera-wiki.org(それぞれ2021年6月3日閲覧)
「Nikon FM10」
http://camera-wiki.org/wiki/Nikon_FM10
「Olympus OM2000」
http://camera-wiki.org/wiki/Olympus_OM2000
「Canon T60」
http://camera-wiki.org/wiki/Canon_T60
「Ricoh KR-5 Super II」 ※RICOH XR-8の海外製品名
http://camera-wiki.org/wiki/Ricoh_KR-5_Super_II

わたしの手元にはOEMされた機種がないので紹介はできないのですが、コシナCT1系のOEM製品を集めた方の日本語Webサイトが存在しているので、興味があるかたはぜひ検索してみてください。

オリジナルのCT1系機種はKマウント

さて、OEM製品ではニコンFマウントやオリンパスOMマウント、Canon FDマウントなども使われていますが、
大元となるコシナ製のボディは、ペンタックスKマウントを採用しています。

ペンタックスKマウント

なので、ペンタックスをはじめKマウントのさまざまなレンズが装着可能です。
今回は、PENTAX Kマウントのレンズ、SMC PENTAX 50mm F1.4を付けて、フィルムを1本通してみました。

CT1 Superで撮った写真

少し、実際に撮った写真を見てみましょう。
使用フィルムはARISTA EDU 100です。

CT1 Superで撮った写真

CT1 Superで撮った写真

基本的に内蔵の露出計に合わせて撮影したのですが、おおむね適正露出で撮れています。
今回使ったCT1 Superは、ジャンクを買ってきて自分で分解したもので、ちょっと使っていて危うげな感じがあったのですが、まあ写真としては見られる感じになっていると思います。

CT1 Superで撮った写真

CT1 Superで撮った写真

レンズのSMC PENTAX 50mm F1.4は少し曇り始めていて状態があまりよくないのですが、日中、基本的に順光で撮ったので、まあ普通に写っていますね。

CT1 Superで撮った写真

CT1 Superで撮った写真

レンズはほかのメーカーの製品なので、今回は作例は控えめにしたいと思います。

機構解説

さて、このCosina CT1 Superをはじめ、コシナCT1系のボディは、基本的には機械式シャッター、マニュアル露出専用になっています。

※コシナの一眼レフには絞り優先AEを採用した機種もあります。

今回、シャッターユニットまで分解してみたのですが、シャッターユニットはコパル製の縦走りシャッターが使われています。
板橋区立郷土資料館の図録、『板橋と光学 Vol.3』によれば、このシャッターはコパルスケヤCMSという種類のようですね。

コパルスケヤCMS

参考:『板橋と光学 Vol.3』 板橋区立郷土資料館、2020年、p.84。

シャッターはバルブと1秒~1/2000秒まで。
巻き上げ、巻き戻しは手動。分割巻き上げはできません。

機構解説

ファインダー内は赤と緑の露出計表示だけで、シャッター速度や絞りは確認できません。

ファインダー内

使ってみた感想

実際に使った感じなんですけど……
こういったコシナの機械式一眼レフって、機械式ということで評価されているところはあると思うんですよ。
実際、このCT1 Superも状態がかなり悪かったのに、一応は動く状態まで持っていくことはできました。

ただ、ですね。
当時、かなり安い製品だったこともあって、つくりは値段なりだな、と感じるところもありました。
たとえば、フィルムを入れると巻き上げはかなりゴリゴリとしています。
同じくらいの年代の、ペンタックスの一眼レフ、Super-Aあたりと比べてみると快適性にかなり差があります。

PENTAX Super A 動画紹介 / SMC PENTAX 55mm F1.8作例

あと、分解して思ったのですが、プラスチックの部品が多いので、壊れるときは壊れるカメラだな、と思いました。
たとえばシャッターダイヤルが取り付けられている軸がプラスチックで、ダイヤルを外すとき、折れてしまうんじゃないかと冷や冷やしたんですよね。

それから、このCT1 Superはそうならない構造になっていたのですが、コシナの一眼レフは、機種によってはミラーの接着がゆるんでずれてしまうようです。

いっぽう、よいところを挙げるとすれば、軽くて小さいということですね。
Kマウントの小さい一眼レフというとペンタックスMXが有名ですが、MXは状態の悪いものも多いので、状態の悪いMXと比べるなら、ちゃんと動くコシナの一眼レフのほうがまだいいんじゃないかと思います。

ただし、ボディが軽いので、たとえばペンタックスKマウントの初期のレンズみたいに重いものをつけると、ストラップで下げたときあまり安定しません。
わたしの手元にあるレンズだと、このリコー XR RIKENON 50mm F2の後期型のように、プラ外装のレンズだと重量バランスがよい印象です。

プラ外装のレンズだと重量バランスがよい

まとめ

というわけでコシナCT1 Superのお話でした。

このカメラは、一眼レフで写真を撮る層を広げたこと。
そしてさまざまなカメラの元となったということで、非常に歴史的意義のあるカメラだと思います。

実際問題として、さすがに整備されていないと実用するのは難しいと思いますが、CT1系のカメラは息の長い製品だったので、もっと製造年代が新しい機種、たとえばCT1EXとかC1sとかなら、全然使えるかもしれないですね。

■追記
播磨屋市蔵さん twitter:@afcamera_mania より
「スプールフリクションの弛みで巻き上げ不良が起こります。最晩期のC1sでも頻出なので、ぼちぼち全機種要メンテナンス期」との指摘をいただきました。
ですので、動画内では新しいものは使えるのではと話しましたが、やはりメンテナンスが必要なようです。

機械式カメラだからといって質感が伴うとは限らない、というのは本当に難しいところだな、と感じました。

ありがとうございました。
御部スクラでした。