韓国製カメラについての文献 覚え書き

佐藤成夫さんが同人誌で韓国製カメラについて扱っていることに関連して、少し自分でも韓国製カメラについて調べてみました。

その覚え書きです。

Korea Scienceに掲載のpdf

韓国科学技術情報研究院(Korea Institute of Science and Technology Information、한국과학기술정보연구원)が運営しているKorea Science http://www.koreascience.or.kr/ というサイトで、さまざまな科学技術関連の雑誌がpdfで公開されています。

サイト内検索も可能ですが、どうやら1980年代後半以降しかヒットしないため、Googleのサイト指定検索(site:http://www.koreascience.or.kr/ で検索)を行ったほうがカメラ関係の古い情報は見つけやすそうです。

少し探して見つかった、フィルムカメラ関係の古い情報としては……

「우리나라의 光學工業」(我が国の光学工業)

「우리나라의 光學工業」(我が国の光学工業)

http://www.koreascience.or.kr/article/JAKO197865771673332.pdf

URLを見る限り、1978年の記事のようです。

たった3ページの短い記事ですが、日本国内において韓国のカメラ産業についての文献がほぼ存在しないため、韓国の国策としてどのように光学産業が立ち上げられたかという概略を知ることができるだけでも貴重だといえます。

タイトルの「우리나라의」はそのまま、我が国の(우리나라:ウリナラ、의:助詞)という意味です。

The Optical Journalのpdf

韓国光学工業会(Korea Optical Industry Association、한국광학기기산업협회)の紀要もしくは会報?です。

https://www.koreascience.or.kr/publisher/koia.1ff8page

1989年以降のpdfが公開されており、たとえばカメラマニア視点ではフォトショーソウルの記事にサムヤンやサムスン、GoldStarなどの韓国企業製カメラ製品が紹介されているのが興味を引きます。

また、当時の韓国から見た日本の光学業界についてのレポートなどもあります。

例:サムヤン光学工業 Super Zoom 90の紹介レポート

サムヤン光学工業 Super Zoom 90の紹介レポート

Volume 3 Issue 16 Serial No. 16より(以下URL最下部に目次とpdfへのリンク)
https://www.koreascience.or.kr/journal/GHGHBF/v3n16s16.1ff8page

上記をOCRで読み取り、機械翻訳をもとに多少ゴミ取りをしたもの(企業紹介部分のみ)

サムヤン光学工業(株)
〇代表:ホン·ジュンヨン
住所:本社及び工場:慶尚南道馬山市陽徳洞974-6
海外営業部 : ソウル特別市 永同浦区 汝矣島洞 10-4 テヨンビル 1002号
国内営業本部 : ソウル特別市 鍾路区 楽園洞 284-6 (楽園 B/D 330号)
〇電話:
本社 – (0551)92-9971 / 3
営業本部 – (02)743-6036
海外営業部 – (02)784-9961 / 3
〇 会社紹介
馬山(マサン)輸出自由地域に位置する三洋(サムヤン)光学工業(株)は、韓国でも日本のように高級カメラを作ってみるという一念で1972年、日本の光学メーカー。 WAKO社と合弁で韓国WAKO株式化社率を設立した。
その後、1974年に韓国CHINON(株)に商号変更をし、1979年末に日本CHINON持分をオプ買収して現在の三洋光学工業(株)に商号変更することになり、その後、韓国で初めて付設光学研究所を設立した。
1987年には交換レンズの世界シェアが30%に達し、光学専門終艦企業として独自に蓄積したノウハウを基に発展を続けている。

※サムヤンの漢字表記が三洋で合っているかは不明

NAVER NEWS LIBRARY

『佐藤評論 番外編』の紹介記事に書いたことと同内容です)

韓国のNAVERでは1995年以前の韓国国内の新聞を公開していて、それを掘るだけでもかなりの情報を得ることができそうです。
例:佐藤成夫さんのTwitterに貼られた、アイレスの前身、ヤルー光学の創業に関わった金谷相吉(通名)氏の本名が金相吉であるということなど。

わたしは韓国語が読めないのでOCRと自動翻訳に頼るしかないのですが、少し時間を掛けただけで相当な新情報が見つかっています。
韓国語がわかる方なら一瞬で韓国製カメラについての知見が書き換わると思います。

NAVER NEWS LIBRARYはこちら

https://newslibrary.naver.com/search/searchByDate.naver

フリーワード検索が非常に有用に機能しています。
日本語と韓国語は共通の単語が多いので、自動翻訳で日本語→韓国語に翻訳して検索欄にコピペするだけでかなり記事がヒットします。

山下泰平氏(@kotoriko、『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』の著者)が韓国では戦前の日本語新聞が無料でネット公開されているという記事をblogに書いていますが、
同様に韓国では新聞をアーカイブとして無償公開することがかなり広く行われているようです。

【これは古い情報 NAVERのアーカイブのほうがいいです】東亜日報の紙面

韓国の日刊紙、東亜日報が過去の紙面をネットで公開しています。

https://www.donga.com/archive/newslibrary

縮小版だけなら無料、ログイン不要で閲覧できます。
拡大するには1ページあたり(おそらく)500ウォンが必要とのことで、たぶん韓国国籍がないと難しいのではないでしょうか。ただ、縮小版でも広告を調べるには十分なのでかなり使えます。

2021年12月5日追記、これを使うよりも、NAVERが公開しているニュースライブラリーのほうが拡大できてよいです。

たとえば……

大韓光学(Kobica)の広告

大韓光学(Kobica)の広告

「社員募集」と書いてある、大韓光学について調べるとよく出てくる広告が載っているのは、東亜日報1976年6月5日の7面です。
※リンク先で左右にスクロールすると出てきます。

https://www.donga.com/archive/newslibrary/view?ymd=19760605

PENTAXの広告

PENTAXの広告

ほかにもカメラの広告はあるようで、たとえば1988年11月4日の16面にはPENTAX P30の広告が掲載されています。
おそらく探せば他にもカメラ関連の広告はあるはずです。

https://www.donga.com/archive/newslibrary/view?ymd=19881104

韓国の国立中央図書館、国会図書館

韓国の国立中央図書館や国会図書館も使えると思います。

国立中央図書館(韓国)
https://www.nl.go.kr/

国会図書館(韓国)
https://www.nanet.go.kr/main.do

国立中央図書館の検索で気になった本としては『光學産業 30年』(ソウル光学産業 編?)というものがありました。
https://www.nl.go.kr/NL/contents/search.do?pageNum=1&pageSize=10&srchTarget=publisher&kwd=%EC%84%9C%EC%9A%B8%E5%85%89%E5%AD%B8%E7%94%A3%E6%A5%AD

韓国語文献を調べるには

わたしは韓国語はできませんが(ハングルの初歩だけかじった)、それでもそれなりに検索することは可能です。

コツとしては

自動翻訳がけっこう使える

よく知られているように、日本語と韓国語は文法がかなり似通っていて、共通の語彙も多いです。
そのため、自動翻訳がそれなりに実用になります。

(カメラ関連の用語の誤訳がマニアならある程度推定できるだろう、ということが前提ですが)

古い文献は漢字でも検索可能

今回見た限りでは、1980年代までの文献は、漢字ハングル混じり文になっていたため漢字でも検索にヒットしました。

OCRが実用になる

ハングルの入力方法がわからないため、古いpdfを日本語に自動翻訳するためにOCRを使いました。
具体的にはGoogle Driveに文献のpdfや画像をUPして、右クリック→アプリで開く→Goodleドキュメント と操作すると自動で文字起こししてくれます。

漢字に比べるとハングルのOCRは精度が高く実用性が高いです。

ただし、以下は手作業が必要です。

2段組は手動で1段組に変換

2段組は正常に読み取られないため、スクリーンショットをつなげるなどして手動で1段組に直しました。

OCR後、自動翻訳前に手動でゴミ取りが必要

日本語へ自動翻訳を行なう前に、もとのpdfと見比べて明らかな間違いの修正は必要です。
たとえばハングルの中に混じったアルファベットの固有名詞や数字、括弧などの記号に読み取りミスが散見されました。

ハングルの初歩だけかじると便利

身もふたもないですが、今回こういうことを調べることができたのは、以前、韓国語入門書をかじったからというのは大きかったです。

日本人にとってハングルとか、他にもタイの文字などは意味不明な記号のように感じられてしまうと思いますが、ハングルの字形や発音は覚えていなくても、どういう法則で文字が組み立てられているのかを知っているだけで心理的な障壁がかなり減ると思います。

(ハングルをかじったのは、アルファツイッタラーのすきえんてぃあ先生という言語学クラスタの方の影響なのでした)

韓国語版のGoogleで検索する方法

通常、他国語版のGoogleにアクセスしても勝手に日本語版に飛ばされてしまうのですが、以下から韓国語版で検索できます。

https://www.google.com/?gl=kr&hl=ko&gws_rd=cr&pws=0

以下のページ「日本からアメリカのGoogle (google.com) で英語で検索する方法」を参考にしました。
https://www.suzukikenichi.com/blog/how-to-search-on-google-com-in-english-from-japan/

具体的には
glのあとのパラメータ(国)はISO 3166-1 alpha-2の国別コードなので韓国はkr。
hlのあとのパラメータ(言語)はISO 639-1なので韓国語はko。
なので上記のようになります。

(参考)英語版Google検索

ちなみに英語は
https://www.google.com/?gl=us&hl=en&gws_rd=cr&pws=0
です。
(英語版Googleは頻繁に使うので、わたしはブックマークバーに常時入れています)

余談

余談ですが、大韓光学のKobicaといい、香港のHalina(Haking)L80という謎の一眼レフといい、佐藤成夫さんの掘る対象がどれもカメラ趣味の中でも情報がもっとも少ない部類なので凄いな、と思うのでした。
わたしはなんだかんだで過去に文献があるものばかり扱っているので。