アイレス写真機製作所の社長であった金相吉(金谷相吉)氏はのちに韓国初のカメラメーカー、大韓光学を立ち上げるのですが、
『レッドデータカメラズ』の記述や佐倉かゑでさんの研究により、その間に倒産後のアイレスがマミヤの下請けを行い、その流れで韓国でもマミヤ系のカメラを製造していくことになったのではないか、ということがわかってきました。
そこで本記事では同系統の機種である、
- Mamiya 35 Ruby 2.8
- Rank Mamiya 4B
- KOBICA 35 BC-1
の内部構造などについて比較画像をUPしたいと思います。
Contents
各機種外観・スペック
Mamiya 35 Ruby F2.8
レンズ:MAMIYA-SEKOR T 48mm F2.8
シャッター:COPAL SVK 1秒~1/500秒&Bulb
巻き上げ:レバー1回巻き上げ(分割巻き上げの可不可についてはチェック忘れ)
カウンター:順算式、手動リセット
フォーカシング:連動距離計を内蔵、前玉回転
ファインダー:採光式ブライトフレーム(近接指標のみ)
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉
露出計:セレン受光素子、シャッター・絞りに連動する追針式
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1959年[1]『昭和10~40年広告にみる国産カメラの歴史』朝日ソノラマ、1994年、p.403
価格:17,000円(アサヒカメラ1959年11月号広告)[2]『昭和10~40年広告にみる国産カメラの歴史』朝日ソノラマ、1994年、p.288
製造元:マミヤ光機
前玉回転のマミヤとしては廉価なラインの製品。
このセコール48mm F2.8付(1959年)のほかに、SEKOR 48mm F1.9のついた「マミヤ35ルビーF1.9」(1960年)、日東光学製のMAMIYA KOMINAR 48mm F2のついた「マミヤ35ルビースタンダード」がある。
※シリアルナンバーが消されているのはジャンク購入時より
Rank Mamiya 4B
レンズ:MAMIYA-SEKOR 40mm F2.8
シャッター:SEIKOSHA 4秒~1/250秒&Bulb
巻き上げ:レバー1回巻き上げ(分割巻き上げの可不可についてはチェック忘れ)
カウンター:順算式、手動リセット
フォーカシング:連動距離計を内蔵、前玉回転
ファインダー:採光式ブライトフレーム(近接指標のみ)
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉
露出計:セレン受光素子、シャッターダイヤル部の窓に表示された番号を手動で設定する方式
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:不明
価格:不明
製造元:マミヤ光機?(下請けのアイレスの可能性も考えられる?)
※本機は『国産カメラ図鑑』(すぎやま本)に掲載なし
前玉回転の廉価な製品。
本機はMamiya 4Bの英国輸出仕様でRankとのダブルネームとなっている(下記英語記事によるとオーストラリアへも輸出されたらしい)。
この英語記事「Rank Mamiya – What’s in a name?」によると、Rank社は英国の映画関係の会社とのこと。
本機「Rank Mamiya 4B」は日本製だが、同系だが名称の異なる「Rank Aldis」は背面にMade in Koreaの刻印があり、大韓光学製(VERIX 35の別ネーム)である。
Mamiya 4Bは日本国内にはあまりないが、海外のWebサイトは容易に情報が見つかる。
低めのスペックも含め、おそらくは輸出を主とした機種だったのだろう。
KOBICA 35 BC-1
レンズ:KOREA OPTICAL TESSAR LENS 40mm F2.8
シャッター:COPAL 1秒~1/500秒&Bulb
巻き上げ:レバー1回巻き上げ(分割不可、予備角なし わずかに予備角あり)
カウンター:順算式、裏蓋開閉で自動リセット
フォーカシング:連動距離計を内蔵、前玉回転
ファインダー:採光式ブライトフレーム(近接指標のみ)
フィルム装填:蝶番による裏蓋開閉
露出計:なし
使用フィルム:35mmフィルム
寸法:幅 134mm
高さ 84mm
奥行 566mm
重量:約586g(実測586.4g)
発売年:1976年
価格:55,000ウォン(1978年)[3]朝鮮日報1978年5月3日 7面 掲載広告より
https://newslibrary.chosun.com/view/article_view.html?id=1755919780503m10728&set_date=19780503(2021年12月30日閲覧)[4]1978年当時のレートは1$=200円前後、480韓国ウォン(韓国ウォンは当時固定レート)
製造元:大韓光学(대한광학,Korea Optical)
マミヤの下請けとして? 製作したVERIX 35を下敷きに純韓国産とした連動距離計レンズシャッター機。
詳しくはこちらの記事で解説。
各部の比較
3機種の底部を比較
底部の内部構造。
右から
- Mamiya 35 Ruby 2.8
- Rank Mamiya 4B
- KOBICA 35 BC-1
の順。
Mamiya 35 RubyからRank Mamiya 4Bの間で設計がかなり変わっている印象。
いっぽうRank Mamiya 4BとKOBICA 35 BC-1はぱっと見では似通っている(細部はけっこう異なる)。
三脚穴をレンズの真下に持ってきたのはKOBICAの改良点か。
Rank Mamiya 4BとKOBICA 35 BC-1のトップカバー内部
KOBICA 35 BC-1を分解した際、距離計ユニットの横に、明らかに露出計が入っていたであろう空間がぽっかりと空いていた。
Rank Mamiya 4Bのトップカバーを外したところ、実際にそのスペースにぴったり露出計が入っていた。
Rank Mamiya 4Bの露出計はトップカバー側に取り付けられている構造。
Rank Mamiya 4BとKOBICA 35 BC-1のトップカバー互換性
↑Rank Mamiya 4BにKOBICA 35 BC-1のトップカバーを取り付けたところ。問題なくつく。
↑KOBICA 35 BC-1にRank Mamiya 4Bのトップカバーを被せたところ。こちらはアイレットが干渉するので完全には入らない。ただし露出計の部材は干渉しない。
Rank Mamiya 4BとKOBICA 35 BC-1の前板部比較
↑Rank Mamiya 4Bはレンズシャッターのネジ止めが緩んでいたので分解した。上の画像は前板を外したところ。
↑上2枚はKOBICA 35 BC-1を整備したときの画像。ほぼ同様の構造をしている。
Mamiya 35 RubyとRank Mamiya 4Bの外観比較
関連記事
脚注
↑1 | 『昭和10~40年広告にみる国産カメラの歴史』朝日ソノラマ、1994年、p.403 |
---|---|
↑2 | 『昭和10~40年広告にみる国産カメラの歴史』朝日ソノラマ、1994年、p.288 |
↑3 | 朝鮮日報1978年5月3日 7面 掲載広告より https://newslibrary.chosun.com/view/article_view.html?id=1755919780503m10728&set_date=19780503(2021年12月30日閲覧) |
↑4 | 1978年当時のレートは1$=200円前後、480韓国ウォン(韓国ウォンは当時固定レート) |