Canon FTb 中級機でも手抜き一切なしのMF一眼レフ

Canon FTb 中級機でも手抜き一切なしのMF一眼レフ

みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回はCanonの一眼レフカメラ、Canon FTbについて話します。

Canon FTbの外観・スペック

Canon FTbの外観

Canon FTbの外観

Canon FTbの外観

Canon FTbの外観

Canon FTbの外観

Canon FTbの外観

レンズマウント:Canon FDマウント
シャッター:横走り 布幕フォーカルプレーンシャッター B、1秒~1/1000秒、シンクロ速度1/60秒
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ(分割可能)
露出計:CdS受光素子、部分測光
カウンター:順算式、自動復元
電源:MR9水銀電池 x1個
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1971年
発売時価格:35,000円(ボディ)
製造元:キヤノン

※スペック出典:「FTb – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月12日閲覧)

Canon FTbについて

Canon FTb

Canonカメラミュージアムによると、Canon FTbは1971年3月の発売[1]「FTb – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月12日閲覧)
https://global.canon/ja/c-museum/product/film79.html

Canonが総力を上げて開発したプロ用一眼レフカメラのF-1(旧F-1)と同時に登場したカメラですね。

プロ用のF-1よりひとつ下のグレードにあたるわけですが、Canonカメラミュージアムには「35mm一眼レフカメラの中堅高級機種」とあるように、けっして手が抜かれていない非常にクオリティの高いカメラに仕上がっています。

値段はボディが35,000円だったということです。

また、1973年にはマイナーチェンジ版された後期型、FTb-Nが登場しています[2]「FTb-N – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月12日閲覧)
https://global.canon/ja/c-museum/product/film87.html

(CanonカメラミュージアムにはFTb-Nと表記。ニューFTbと呼ばれることもある気がします)

Canon FTbのスペックと機能

それでは、Canon FTbのスペックや機能について見ていきます。

Canon FTb自体は至ってオーソドックスな機能の、マニュアル操作かつ開放測光の35mm一眼レフカメラです。

シャッター

シャッター速度はBと1秒から1/1000秒という標準的なもの。
シャッター幕は布幕、横走りのフォーカルプレーンシャッターです。

シャッター

シャッター幕もそうなのですが、ダイキャストのフレームや露出計の連動機構など、基本的な構造はそれまでのFLマウントのカメラのものを受け継いでいます。

これは以前動画にしたCanon PELLIXを分解したときの写真なのですが、

PELLIXの内部

↑PELLIXの内部

FTbの内部

↑FTbの内部

PELLIX内部とFTb内部を並べる

↑内部画像を並べる

比べてみるとご覧のように内部の構造が本当にそっくりです。

露出計とファインダー

露出計は追針式、ファインダー内の四角い表示部分を測光する部分測光です。

追針式・部分測光

FDマウントなので開放測光になっています。
ファインダーはとてもクリアで見やすく、ピント合わせもしやすいです。
ただ、自分のものは大丈夫だったのですが保管状態によってはプリズムに腐食が生じているものもあるようですね。

スクリーンはマイクロプリズムとマットです。
スクリーン交換はできません。

マイクロプリズムとマット

ファインダーの表示は露出計の指針だけです。

マイナーチェンジされた後期型(FTb-N)ではさらに、ファインダーの左下にシャッター速度が表示されるようになります。

マイナーチェンジされた後期型(FTb-N)ではさらに、ファインダーの左下にシャッター速度が表示

露出計の電源はMR9水銀電池です。

電源はMR9水銀電池

巻き上げ

巻き上げはレバー巻き上げで分割巻き上げができます。
あとで話しますが、この巻き上げレバー、感触がとてもよいです。

レンズマウント

レンズマウントはFDマウント。

FDマウント

ミラーは大きく動作もスムーズですね。

絞り込み・ミラーアップ

正面から見て左側にはセルフタイマーレバーがあります。
このレバーは絞り込みレバーやミラーアップの機能を兼用しています。

内側に押し込むと絞り込み。

内側に押し込むと絞り込み、Lで固定

その状態で下部のノブをLの位置まで回すと絞り込み状態で固定されます。

さらにノブを左端のMまで回すとミラーアップします。

Mまで回すとミラーアップ

ミラーアップがついているというのが、このFTbが単なる下位機種ではないことを象徴していますね。

F-1は明確にプロ向けの機種ですが、このFTbも正直、ペンタックスSPやミノルタSR系機種よりも上のグレードのカメラとして作られているということを感じます(ミノルタSRにはミラーアップはついていますが)。

Canon FTbの印象

さて。

このCanon FTbを使った感想ですが、とにかく想像以上に高く評価できるカメラだと思いました。

とにかく質がよい

1960年代から70年代前半にかけてのマニュアル操作の機種、ニコンとペンタックス、オリンパスあたりしか使い込んだことがなかったのですが、ニコンは別格として、ペンタックスやオリンパスに比べると使用感も安心感もずっと上だと思います。
このFTbはいつものように自分でジャンクをある程度いじったものなのですが、シャッターの動作に安心感がありますし、シャッターの精度も、露出計の精度もネガなら全然問題ないレベルです。

Canonというメーカーのすごさを本当に思い知った気がします。

巻き上げの感触がよい

感覚的な部分ですごいな、と思ったのは巻き上げの感触です。
巻き上げレバーの感覚がとてもなめらかで軽い。

巻き上げの感触がよい

しかも、フィルムが入っていない空打ちのときと、フィルムを入れて実際に使うときで感触がぜんぜん変わらないんですよ。
この感触もまた、FTbというカメラの安心感につながっていると思います。

巻き戻しクランクもひっかかりが全然なくてするすると回ります。
全体的にとても精密で精度がとても高い。
それでいてニコンのような硬い感じがなくて、やわらかくしっとりとしているけど精度が高いことがわかる。

Canonというメーカーはシャッターの音など感覚を大事にするメーカーだと思っているのですが、1971年の時点ですでにそうだったのだな、ということがわかったのでした。

電装系がタフ

それから、キヤノンのカメラってメンテナンスされてなくても露出計がそれなりに動く印象があります。
電装系がタフです。

大きく重いのはマイナス

いっぽう弱点としては、とにかく大きくて重いです。

わたしはカメラ好きなのでそこは気にせず使ってしまうのですが、これからフィルムカメラを触るよ、という方にとってはマイナスになると思いますね。

ただ、わたしの手元にあるFDマウントの機種というとほかにAE-1があるのですが、重さには250gもの差があります。

FTbとAE-1の重量比較

でも軽いAE-1はやっぱり華奢なんですよね。

どちらが好きかといえば、わたしは信頼できるFTbのほうを選ぶと思います。

QLは使いにくい

あと、フィルム装填はこの時代のキヤノン特有のクイックローディングですが、これはほかの動画でも毎回同じ感想ですが、クイックローディングはカメラに慣れている人ほど使いにくいと感じる機構で正直好きではありません。

QLは使いにくい

あくまでも、のちの時代のオートローディングで解決されるまでの過渡期の機構ですね。

作例

それでは、このCanon FTbで撮影した写真を見ていきましょう。

使用レンズはFD 50mm F1.8、

FD 50mm F1.8

フィルムはLomography Earlgray 100(Fomapan100)をParodinalで現像しました。
(現像データ:Parodinal 1:50 20℃ 8min)

Lomography Earl Gray 100

秋葉原での作例

はい。

撮影場所は秋葉原です。
今回はモノクロでの撮影なのですが、まあ普通に写っています。

秋葉原での作例

秋葉原での作例

FD 50mm F1.8、1971年のレンズではあるのですが、さすがFDレンズだけあって全然モダンな写りという感じがありますね。
ただしレンズ自体は少しクモリが生じているのでベストなものではないです。

秋葉原での作例

秋葉原での作例

さて。
Canon FTbのボディ自体が影響する部分についていうと、こういう日陰での写真。

秋葉原での作例

基本的に今回は露出計通りに撮影していますが、とりあえず間違いのない値を示していることがわかります。

なんだかんだで古いカメラでも露出計って、ネガなら案外どうにか使えるものなんだな、と思いました。

尾久での作例

ここからはけっこう暑い時期のピーカンでの撮影なので描写をどうこういえる写真ではないのですが、なかなか降りることのない駅、尾久駅で降りたときの写真です。

尾久での作例

尾久での作例

まあ普通に問題ない写真が撮れているかな、という感じです。

尾久での作例

尾久での作例

とにかく、無難に、普通に撮れるカメラだな、という印象があります。

尾久での作例

まとめ

Canon FTbの紹介と使い方解説でした。

Canon FTb、さすがは大手メーカーのCanonの製品といえる、とても感触のよいカメラです。
Canonというとその後電気製品のようなカメラを作るというイメージになってしまいましたが、この年代だとまだまだ機械としての精密さが十分に保たれていると感じます。

電気製品のようなカメラがけっして悪いものではないですが、機械式カメラがまだまだ時代の先端だった最後の時期ならではの上質さ、みたいなものを感じられる。
Canon FTbはそんなフィルムカメラでした。

Canonってほんとうにいいカメラを作りますね。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

脚注

脚注
1 「FTb – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月12日閲覧)
https://global.canon/ja/c-museum/product/film79.html
2 「FTb-N – キヤノンカメラミュージアム」(2022年12月12日閲覧)
https://global.canon/ja/c-museum/product/film87.html