みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は旧ソ連で作られた二眼レフカメラ、LUBITEL 166Bについて話します。
Contents
LUBITEL 166B 外観とスペック
※植毛紙がヨレているのはジャンクの証明写真カメラから剥がして流用したため
レンズ:T-22 75mm F4.5
シャッター:B、1/15秒、1/30秒、1/60秒、1/125秒、1/250秒
巻き上げ:ノブ巻き上げ、赤窓式
カウンター:赤窓
フォーカシング:ギアによる連動、前玉回転
ファインダー:ウエストレベル、中央マット部のみフォーカシング可能
フィルム装填:赤窓式
使用フィルム:120フィルム
発売年:1980年頃?[1]Lubitel 166B – Camera-wiki.org – The free camera encyclopedia(2022年12月11日閲覧)
製造元:LOMO(ЛОМО、レニングラード光学器械合同)
LUBITEL 166Bについて
LUBITEL 166BはLOMO(ЛОМО)、レニングラード光学器械合同が製造したカメラです。
camera-wiki.orgによれば、1976年に登場したLUBITEL 166をもとに、1980年頃にセルフタイマーが追加されたもの、ということです[2]Lubitel 166B – Camera-wiki.org – The free camera encyclopedia(2022年12月11日閲覧)。
そもそもこのLUBITELというカメラはフォクトレンダーのフォーカシングブリラントのコピーに始まったカメラとされています[3]ルビテルオリジナル / 二眼レフ総合サイト 二眼里程標(2022年12月11日閲覧)が、いろいろな部分が改変されながら長年にわたって作られ続けた、というわけです。
(ムーブメントとしての)Lomographyで注目
さて、このLUBITELという二眼レフのシリーズは、いわゆるLomographyというムーブメントのなかで注目されたカメラとして知られています。
ボディは基本的にプラスチックで作られていて華奢ですが、逆にそれがいいという層に対して「広い意味での」トイカメラのように受容されたわけですね。
(ムーブメントではなく)企業のLomographyの製品としてほぼ同じカメラのLUBITEL 166+が販売されていましたが、この台本を書いている2022年の12月8日現在では、日本語の通販サイトには掲載されているものの品切れになっています[4]Lomo Lubitel 166+ – Lomography(2022年12月11日閲覧)。
各部解説
それでは、このLUBITEL 166Bについて見ていきましょう。
フォーカシング
はじめに話したようにこのカメラは二眼レフです。
チープな見た目ですがきちんとピント合わせが可能で、リコーフレックス(解説はこちら)のように上下のレンズがギアで連動するようになっています。
このように、それぞれレンズの前玉が回転してピントを合わせるようになっています。
ファインダー
二眼レフということでほかの機種同様ウエストレベルファインダーです。
ただファインダーは、多くの二眼レフのような全面がマットの構造にはなっていません。
ピントフードを開けるとこのように、ファインダーの視野部分は凸レンズになっています。
そして、中央だけが平面のマットになっていて、その部分だけ、ピントを合わせることが可能な構造になっているのです。
じつはわたし、この構造について実物を見るまでよくわかっていませんでした。
中央しかピントを合わせられないなら、もしかしてピントグラスを交換したら全面でフォーカシング可能になるんじゃないか、と思っていたのですが、それは無理そうな構造です。
なぜこんな構造なのか考えてみたのですが、もしかすると、これなら中央部だけ精度を出せばよく、より安いコストでウエストレベルファインダーを作ることができるからかもしれないですね。
あくまで想像なのですが。
ピントルーペ
ファインダーですが、ピントルーペはついています。
ですが非常に小さく、構造も華奢です。
しかもピントルーペを指に引っ掛けて引き出すのが難しいです。
ピント合わせにはルーペを覗くことが必須なので、これはとても不便だと思いました。
スポーツファインダー
また、一応スポーツファインダーもついています。
ピントフードは鉄板を折り曲げて作られています。
レンズ
レンズは、下の撮影用レンズ、テイクレンズにはスペックが書いてあって、T-22 75mm F4.5。
トリプレットですね。
シャッター
シャッターはレンズシャッターで、Bと1/15秒、1/30秒、1/60秒、1/125秒、1/250秒。
以前動画で紹介したSMENA 35と同じように、ボディはプラスチック製ですがレンズシャッターは全体が金属で作られた古風な構造をしています。
シンプルな二眼レフなので当然セルフコッキングではなく、シャッターを切る前には手動でチャージする必要があります。
またシャッターボタンはなく、チャージレバーの下のレリーズレバーでシャッターを切ります。
正面から見て右側面にはセルフタイマーもついています。
巻き上げ
巻き上げは赤窓式です。
赤窓にはツマミを回して開ける蓋がついています。
巻き上げ自体はカメラを構えたとき右手側にあるノブで行います。
巻き上げとシャッターは一切連動しておらず、多重露光防止もありません。
裏蓋ロック
裏蓋はピントフード後側のバネでロックされています。
このバネを持ち上げると裏蓋が開きます。
とくにそれ以上のロック機構はないので、引っ掛けたりして不意に開いてしまう可能性があります。
わたしは今回撮影するときは念のため上からテープを貼っていました。
内部
内部にはとくに内面反射対策はなかったので植毛紙を一応貼りました。
それから、このカメラを使って困った点がありました。
それが、スプールを入れたり、取り出すのが難しいということです。
わたしが入手したこのLUBITEL 166Bだけなのか、すべてがそうなのかわからないのですが、とくに上の巻き上げ側のフィルム室からスプールを取り出そうとすると、引っかかってしまいかなり苦戦します。
これはスプールのメーカーによるサイズの差や個体差によるのかもしれません。
ボディはプラ製
ボディはここまでにも話したようにプラスチック製。
正直、質はよくないと感じます。
どこかにぶつけたり落としたら簡単に割れてしまいそうです。
作例
では作例を見ていきましょう。
使用フィルムはFUJIFILM PRO 160 NSです。
2022年7月 KADOKAWA MUSEUM
まずは2022年の7月に撮った写真です。
ちょっとピーカンで露出オーバーになってしまいました。
でもまあ、絞り込んでいたらこういうふうにかなりシャープに写ることがわかりますね。
このとき、埼玉の東所沢にあるKADOKAWA MUSEUMに行ってきたんですよね。
うだるような暑さで死にそうになっていたのですが、この転びまくっている色からその暑さが伝わるんじゃないかと思います。
このときじつは、建物の中でも写真を撮ろうとしたんですよね。
でもこのカメラのレンズはF4.5、しかもスローシャッターもついていません。
それでも無謀にもバルブを使ってシャッターを開いたら、一応なにかは写っていましたがご覧の通りブレブレでした。
まあこれ、そういう使い方するカメラじゃないですね。
2022年11月 大雄山
続いては2022年11月に、神奈川の大雄山というお寺で撮った写真。
※旅行の様子は以下で紹介
ご覧の通り紅葉です。
背景が空なのですが、まあこのようにちゃんと写っている。
それなりにきれいだと思います。
こちらも明暗差が大きくて難しい写真なのですが、中央部、拡大するとちゃんとシャープにピントも来ています。
こちらのカットは暗いところで絞り開放でピンボケしているのですが、開放ということで周辺部のボケの様子、伝わるんじゃないでしょうか。
すごくトリプレットっぽい。
ぐるんぐるんしています。
最後に、お寺の境内でのちょっとした一枚ですが、無茶な光線状態でなければこういうふうに雰囲気よく写ってくれるんですよね。
今回ピーキーな作例が多かったのでこの一枚があってじつはかなりほっとしました。
これだったら、当時トイカメラ的にこのカメラを使っていたユーザーも、満足できたんじゃないかと思います。
このカメラをマニア以外が使っていたすごい時代があった
ということで作例を見てきたのですが、2本しかフィルムを通していませんが、やっぱりじゃじゃ馬なカメラだなーと思いました。
わたしはカメラマニアなので、ほかにもカメラをたくさん持っていることを考えると、いまはフィルムも高いですしこれにフィルムを通すのには二の足を踏んでしまう。
でも。
このカメラ一台しかフィルムカメラを持っていなかったようなユーザー、カメラマニアと被らない層のユーザーにとっては、十分以上の道具だったということも同時に感じたんですよ。
古い日本製二眼レフカメラを中古で買うには目利きが必要ですが、LUBITEL166系統の機種なら新品や新品に近い機種が手に入る。
マニア的にはこんなものに高い金を払ってもったいないという気持ちになるのもわかりますが、そういう製品があることは大事だったんだと思います。
ただいっぽうで、こういうカメラがマニア層以外にとっての趣味として成立するのは2010年代はじめまでの限られた時期だったんだろうな、ということも思いました。
2010年に20歳の人というと1990年生まれ。
その世代なら子供の頃あたりまえにフィルムが存在していて、フィルムの扱いはなんとなく知っていたはずです。
なので、2022年のいま20歳の人に比べて120フィルムを初めて触るハードルはずっと低かった。
もちろんフィルム自体の値段も安かった。
という時代の状況があってこそ、Lomographyやトイカメラの流行は成り立ったのでしょう。
このLUBITELというシリーズはいわゆるトイカメラよりもずっとしっかりした作りをしています。
使い勝手こそピーキーですが、ちゃんと写真が撮れるカメラです。
でも2020年代のいまとなっては、2010年頃のように文化系のグッズとして扱われるのは難しい。
という難しい立ち位置にあるカメラになってしまったのだろうな、と感じたのでした。
ありがとうございました。
御部スクラでした。
脚注
↑1, ↑2 | Lubitel 166B – Camera-wiki.org – The free camera encyclopedia(2022年12月11日閲覧) |
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↑3 | ルビテルオリジナル / 二眼レフ総合サイト 二眼里程標(2022年12月11日閲覧) |
↑4 | Lomo Lubitel 166+ – Lomography(2022年12月11日閲覧) |