みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。
今回は二眼レフカメラのリコーフレックスについて話します。
リコーフレックスというと、日本製の二眼レフカメラを代表する機種のひとつで、時代を象徴するカメラだといえるでしょう。
当時の他のカメラに比べて値段がとても安くて、一時はプレミア価格で取引されたとまでいわれるのですが、それだけ有名なカメラなのに、じつは、わたしいままで使ったことなかったんですよ。
フィルムカメラについて話すのにリコーフレックスを使ったことがないのはまずい!
そう思って今回動画を作りました。
Contents
RICOHFLEX VI型
RICOHFLEX VI型のスペック
レンズ:RICOH ANASTIGMAT 80mm F3.5 / RICOH VIEWER 80mm F3.5
シャッター:RIKEN B、1/25秒、1/50秒、1/100秒
巻き上げ:ノブ巻き上げ、赤窓式
カウンター:赤窓
フォーカシング:ギア連動によるピント合わせ
ファインダー:ウエストレベルファインダー
使用フィルム:120フィルム
発売年:1954年
発売時価格:6,800円
製造元:理研光学
RICOHFLEX VI型について
いま写っているリコーフレックスは、1954年(昭和29年)に発売したリコーフレックスVI型というものです。
リコーフレックスというカメラは戦前から存在するのですが、今回取り上げるVI型のような、上下のレンズがギアで連動してピントを合わせる仕組みのリコーフレックスは、戦後の1950年(昭和25年)に登場した、リコーフレックスIII型からになります。
『クラシックカメラ専科No.4 名機の系譜』という本に書いてある記述の引用になるのですが、
1954年に出たこのVI型と、同じく1954年に出たVII型が販売された頃が、このようなギア連動式のリコーフレックスというカメラの最盛期だった、ということです。
リコーフレックスというカメラは売れに売れて、プレミア価格がついて取引されたというのもこの時期のことらしいですね。
※ちなみにVI型とVII型の違いは、VII型にはピントフードにコンツールファインダーという機能がつきました。
リコーフレックスが売れた理由
では、どうしてリコーフレックスというカメラが売れたのかというと、安くてちゃんと写真が撮れるカメラだったからです。
1954年当時の広告を見ると、リコーフレックスVI型とVII型の定価は6,800円。
いっぽうで同じくらいの年代に、前板繰り出し式という高級な機構のついた二眼レフは10,000円から15,000円くらい、
リコーフレックス同様のギア連動の二眼レフでも、前の年、1953年の暮れの時点で8,500円くらいの値段がつけられてるものがあるんですよね。
「ちゃんとしたメーカー」のカメラ
しかもリコーフレックスを作ったリコーというのはちゃんとしたメーカーなんですよ。
1950年代の日本では、俗に四畳半メーカーといわれるような小さいカメラブランドが乱立しましたけど、リコーフレックスに類似した二眼レフの多くは、そういう四畳半メーカー製でした。
それに比べて、リコーフレックスは、シンプルなつくりながらきちんとしたつくりをしていて、機能は限られているけど、撮影に最低限必要なスペックを備えているんです。
安いけど、ちゃんとしたメーカーがちゃんとした品質で作ったカメラというのが、リコーフレックスが人気を集めた理由なんだと思います。
リコーフレックスはどうして安く作ることができたの?
リコーフレックスを安く販売することができた理由は、構造がとても合理的だからです。
たとえばレンズとシャッターがついている前板は、ネジを4本外すだけで分離できます。
同じように、ネジを4本抜くとピントフードと裏蓋も外すことができます。
このように、組立がとても簡単なので廉価に量産することができたんですね。
また、このVI型は機能の面でも最低限必要なものだけに削ぎ落とされていて、シャッター速度はバルブと1/25秒、1/50秒、1/100秒だけです。
ただ、シャッターについてはさすがに機能が限定されすぎたようで、セイコーシャやシチズンのもっと幅広いシャッター速度を選べるものがついたモデルも発売されています。
いっぽう、撮影に必須の機能については妥協していません。
リコーフレックスの特徴である、2つのレンズをギアで連動させたピント合わせですが、このように、しっかりとピントグラスでピントが合っていることを確認して撮影することができます。
当時、二眼レフが流行した理由は、ピントが合った写真が撮れるからだと思うんですよね。
同じように廉価だったスプリングカメラは、連動距離計を内蔵するとどうしても値段が高くなってしまいます。
かといって、中判カメラで目測だと、焦点距離が75mmくらいなので被写界深度が浅くてピンボケする可能性が高いです。
いっぽう、1954年くらいの時点だと、まだまだ35mmのフィルムカメラは一般に普及しているわけではありませんでした。
というわけで、しっかりとピントが合った写真をしっかりと撮ることができるカメラとして、リコーフレックスは最低限必要な機能を備えているのです。
リコーフレックスで撮った写真
リコーフレックスVI型で撮った写真を見ていきます。
このリコーフレックスVI型はシャッターの最高速が1/100秒までしかないですが、10年くらい期限が切れたトライXを、感度ISO200くらいのつもりで使って撮影しました。
現像データ:Parodinal 1:50 20℃ 13min
このように、ちゃんとピントが合った写真が撮れているんです。
こちらの写真↓は少しピントがずれたように見えます。
↑の写真の失敗の要因は、ルーペを使ってピントを合わせたあと、ルーペを畳んで全体の構図を整えたので身体が少し動いてしまったからですね。
今回はできるだけ近距離で撮影することを意識したのでそういうこともありましたが、このカメラが当時撮影した被写体ってたぶん、家族の集合写真とか、行楽地の風景とかだと思うんですよ。
そういう用途だと、このリコーフレックスで撮った写真がピンボケになることってほとんどなかったんじゃないかと思います。
いっぽう、レンズの写りについてはなんだか懐かしい感じです。
動画の映像で気づいた方もいるかもしれませんが、このリコーフレックスは前玉の周辺部の汚れが撮れなかったので、レンズ自体はベストな状態ではありません。
なのでリコーフレックスの性能を最大限発揮したものではない可能性もあるのですが、こういうちょっとフレアっぽい感じの写真って、昔の白黒の家族写真とかでよく見る気もするんですよね。
もしかしたら、そういう家族写真って、リコーフレックスで撮られたものなのかもしれません。
ストラップについて
リコーフレックスのストラップ金具は、このように丸い形をしていて、そのままでは一般に使われるカメラ用ストラップを通すことができません。
カメラが好きな人は各自工夫をしていて、いくつか方法があるのですが、
たとえば3Dプリンタで作った取り付け部品を販売している方がいたり、
わたしは今回は、革のハギレを使って、見た目はいまいちですがストラップをつけるためのアクセサリーを自作しました。
他にも100円ショップの用品でストラップ金具を自作している人などもいるので「リコーフレックス ストラップ」で検索すると、いろいろな工夫を見つけることができますよ。
RICOHFLEXの関連書籍
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最後に
というわけで少し長くなりましたけど、リコーフレックスのお話でした。
リコーフレックス、本当に最低限の機能しかないカメラなのですが、わたし、こういう切り詰められたカメラって好きなんですよね。
ほんとうに設計に一切無駄がなく合理的なカメラです。
もちろん、一枚一枚撮影するのに手間はかかりますけど、リコーフレックスは大量に売れたカメラで中古の値段がとても安いので、中判カメラ入門にもよいかもしれないですね。
ただし、整備されたものでないと実用できないのは当然ですが。
カメラが好きなのにリコーフレックスを使ったことがなかったので、今回実績をひとつ解除したような気分です。
これからもいろいろなカメラを紹介していくのでよろしくお願いします!
ありがとうございました。
御部スクラでした。
参考文献
『クラシックカメラ専科4 名機の系譜』、1984年、朝日ソノラマ
p.136-139 リコーフレックスの項
『昭和10~40年 広告にみる国産カメラの歴史』、1994年、朝日新聞社
p.140 シルバーフレックス広告
p.167-168 ビューティフレックス広告
p.206 リコーフレックスVI・VII広告