FUJICA AX-3 / EBC X-FUJINON 50mm F1.6 DM (フジカAX-3)

FUJICA AX-3 / EBC X-FUJINON 50mm F1.6 DM (フジカAX-3)

みなさんこんにちは!

フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は富士フイルムの一眼レフカメラ。
FUJICA AX-3について話します。

FUJICA AX-3の外観とスペック

FUJICA AX-3

FUJICA AX-3

FUJICA AX-3

FUJICA AX-3

レンズマウント:FUJIFILM Xマウント
シャッター:横走り 布幕フォーカルプレーンシャッター B、2秒~1/1000秒、シンクロ速度1/60秒(AE時の低速は不明)
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ ワインダー取付可能
露出計:TTL開放測光(おそらく中央重点?)素子はSPDと思われます。
カウンター:順算式、自動復元
フォーカシング:マニュアルフォーカス
電源:4LR44 x1個
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1980年
発売時価格:-
製造元:富士写真フイルム

FUJICA AX-3とは

FUJICA AX-3

富士フイルム FUJICA AX-3は日本では1980年に発売しました。

この機種、日本製の一眼レフカメラとしては、かなりマイナーなものと言って差し支えないと思います。

交換レンズのマウントは、バヨネットマウントの「Xマウント」。
同じ名前のマウントがミラーレス一眼カメラにもありますけどまったく異なるものです。

このフジカXマウントの一眼レフは1985年のSTX-2を最後に消えてしまったので、本当にマイナーな規格だったということになります。

マイナーな機種

フジカAX-3の作例

ともあれ、マイナーなカメラで話がマニアックになってしまうので、まずはこのカメラで撮った写真を見ていきましょう。

EBC X-FUJINON 50mm F1.6 DM

撮影に使ったレンズは、EBC X-FUJINON 50mm F1.6 DMです。
使用フィルムは富士フイルム業務用100です。
(下記、FUJICOLOR 100と同等品)

さて、このフジカAX-3をはじめとするAXシリーズは、カメラ自体はとてもマイナーなのですが、ついているレンズはとてもいいものなんですよ。

富士フイルムのEBCフジノンはとても性能の評価が高いです。

フジカAX-3の作例

こうして撮影した写真を見ても、とてもいい感じに写っているのがわかると思います。
いま映しているのは絞り込んだカットですが、ほんとうに雰囲気ある写りをしていますよね。

フジカAX-3の作例

フジカAX-3の作例

ただ、今回写したフィルム、ちょっと色が転んでいる感じがあってもったいなかったです。

次に、開放寄りのカットです。
今回、たまたま通りがかった新大久保の街を通り抜けながら撮影したのですが、人物が写っているとさすがに動画で使うわけにはいかないので、人以外にピントを合わせて、人物がアウトフォーカスになるような写真を意識して撮影してみました。

フジカAX-3の作例

フジカAX-3の作例

フジカAX-3の作例

フジカAX-3の作例

フジカAX-3の作例

わたしはそこまでボケ味に詳しくはないのですが、なかなかにきれいな、うるさくないボケだといえるんじゃないでしょうかね。
富士フイルムはフィルムメーカーなので、フィルムの性能を発揮できるような、自然な写りをするレンズを作ったのかもしれません。

この木の枝を撮影したカットなんて、まさにとろけるようなボケをしています。

フジカAX-3の作例

フジカAX-3が登場した経緯

と、こんなふうになかなか魅力的な写真が撮れるフジカAX-3という一眼レフカメラなのですが、はじめに話したように、マイナーな機種だったんですよね。

では、どうしてマイナーなカメラになってしまったのでしょうか。

結論からいうと、1980年代、一眼レフを作るメーカーの競争が激しくなって、富士フイルムは競争から脱落してしまったんです。

M42マウントからバヨネットマウントへの移行

富士フイルムはもともと、ペンタックスと同じくM42マウントの一眼レフカメラ(STシリーズ)を作っていたのですが、ペンタックスが1975年にKマウントに移行したあとも、M42マウントの機種を作り続けていたんですよね。

M42マウント

なのですけどM42マウントはスクリューマウントというネジでレンズを付け外しする古い形式だったので、さすがに改良には限界がありました。

そこで1979年に、バヨネットマウントのXマウントに切り替えます。

バヨネットマウントのXマウント

さきほども話したように、ミラーレス一眼カメラ用のXマウントとは名前は同じですが無関係です。
カメラの名前から、フジカAXマウントという通称で呼ばれることもあります。

なんですけど、さすがに後発すぎたのでしょうね。
結局は1980年代のうちに、富士フイルムの35mm一眼レフはなくなってしまったのでした。

海外市場を優先していたと思われる

フジカAX-3ですが、日本国内では1980年の3月発売ですが、海外だと1979年の12月に発売していて、海外の方が早いんです。

出典:富士フイルム公式Webサイトより 「50年のあゆみ カメラでも新機種を – 全自動カメラの発売」(2021年4月10日閲覧)
https://www.fujifilm.co.jp/corporate/aboutus/history/ayumi/dai5-05.html

たぶんこれは、富士フイルムの一眼レフは海外市場を優先していたということなのでしょう。
そう考えると、旧式であるM42マウントの一眼レフを作り続けたことも納得できます。
海外市場だと多少旧式でも値段が安い機種の需要が多かったというのはよく指摘されるところです。

ただ、ペトリやミランダ、トプコンもそうでしたが、海外を主な市場としていた一眼レフメーカーはどこも1970年代の後半以降、カメラから撤退したり、会社自体が倒産してしまったりするので、富士フイルムも本業のフィルムやコンパクトカメラでは強くても、一眼レフを作り続けるのは難しかったのでしょう。

海外を主な市場としていた一眼レフメーカーはどこも1970年代の後半以降、カメラから撤退したり、会社自体が倒産

ミランダ:1976年倒産
ペトリ:1977年倒産
トプコン:1981年カメラ事業から撤退
マミヤ:1984年倒産、再建するも35mmカメラからは撤退

機構的なこと

フジカAX-3は、機能的にはオーソドックスな絞り優先AEとマニュアルが使える一眼レフカメラです。

海外では1979年、日本では1980年に発売された兄弟機種として、
プログラムAEと絞り優先、シャッター優先、マニュアルが使えるフルモード機のフジカAX-5。
そして絞り優先専用のフジカAX-1があります。

シャッターは布幕の横走り。

布幕の横走り

絞り優先なので電子制御で、電池は4LR44を使います。
電池はボディの前面に入れますが、蓋は開けると外れてしまうので紛失に注意が必要です。
マイナー機種なので、一度なくすと入手は難しいと思います。

電池は4LR44

シャッター速度は最高速が1/1000秒。

シャッター速度は最高速が1/1000秒

スロー側はマニュアル設定だと2秒まで。

スロー側はマニュアル設定だと2秒まで

AE時も、資料はないのですがレンズキャップをつけて、アイピースシャッターを閉めてシャッターを切っても2秒くらいで閉じるので、2秒までだと思います。

ダイヤル形状

かわったところとしては、シャッター速度の設定はシャッターボタンの周りを回転させて操作します。
シャッターボタンの周りを回すと、ボディ上面の窓に表示されたシャッター速度表示が回転します。

シャッター速度の設定はシャッターボタンの周りを回転させて操作

このあたり、1978年発売のCanon A-1あたりの影響を感じる、1970年代後半の「最先端」っぽさがありますね。
ダイヤルは、AEとAELのところにロック機構があります。

ファインダー

ファインダー内の表示はLEDです。
絞り値直読窓もあります。

ファインダー内の表示はLED

下位機種のAX-1では1/125と1/250が同じLEDで表示されるというように表示が省略されてしまっていたらしいのですが、
こちらのAX-3は、さすがに中級機種だけあって全部の速度、シャッター速度が表示されます。

※AX-1でのファインダー内表示省略について
awane-photo.com様より
撮影日記「手抜きの下手なフジカAX-1でX-フジノンレンズを楽しもう」
(2021年4月10日閲覧)

http://diary.awane-photo.com/2015/150419.htm

トップカバーはプラ製

構造的には、今回トップカバーと底蓋を外したのですが、トップカバーはプラスチック。
底蓋は金属製です。
トップカバーなのですが、フィルム感度設定ダイヤルの噛み合う部分が、トップカバーそのものにモールドされている構造がかなり割り切られていて面白いところです。

感度設定部分

今回ファインダーの接眼部がカビているので清掃しようと思ったのですが、アイピース部分を外すには電気関係をかなり外さなくてはならなくて、壊す可能性が高いので清掃は諦めました。

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FUJICA AX-3のトップカバー分解

いっぽうスクリーンはマウント側から外れるので、こちらは清掃可能です。

アイピースシャッター等

あとは細かい装備として、ファインダーにはアイピースシャッターが装備されています。

アイピースシャッター

ペンタックスとかにはない装備なので、非常に真面目なつくりですよね。

それから裏蓋にはフィルム確認窓があります。

フィルム確認窓

フィルムメーカーの富士フイルム製だけあって、この機能はかなり早い時期の採用だといえます。

EBC-X FUJINON 50mm F1.6 DM

今回ついているレンズ、EBC-X FUJINON 50mm F1.6 DMですが、F1.6という開放値が面白いレンズです。

EBC-X FUJINON 50mm F1.6 DM

ただ、フジカXマウントのレンズについてはネット上にあまり情報がないんですよね。
このXフジノン50mm F1.6DMは、いろいろな記事を見る限りどうやら一般的なダブルガウスタイプらしいですが、ほかに55mm F1.6というクセノタールタイプのレンズもあるらしいです。

撮影に使用しての感想

今回撮影に使ってみての感想は、絞り優先AEの一眼レフカメラとしてはとても標準的な操作性で、とても使いやすかったです。
他の絞り優先機、たとえばニコンFEとかオリンパスOM-2やOM10、そのあたりのカメラに使い心地は負けていないと思います。
サイズ的にも持ちやすくて、巻き上げの感触はペンタックスME系のカメラよりも気持ちがいいと思います。

ただですね。
最大の問題がマイナー機種だということで、壊すのが怖くてあまりガンガン使えないんですよね。
たとえばニコンFEが壊れても業者に頼んで修理できる可能性は高いですが、フジカAXシリーズは電装系の部品があるかわからないので……。
そういう意味でマイナー機種の悲しさというのを感じます。

FUJICA AX-3のケース(下部のみ)

ケースを下部のみ持っているので画像を貼っておきます。

FUJICA AX-3のケース

FUJICA AX-3のケース

関連書籍

まとめ

というわけで、マイナーな機種なのでいろいろと細かく取り上げてみました。

全体的に見て、機能や使い心地の面では同時代の他のメーカーの絞り優先機にけっして劣っていないカメラだと思いました。
つくりもいいです。

ただ、フジカXマウントがいかんせんマイナーすぎるんですよね。

歴史にifは禁物とはいいますが、同じM42マウントを使っていたペンタックスに追従して、富士フイルムもKマウントを採用していたらどうなったんだろう、と考えてしまうのでした。
本当につくりがいいので、もったいないカメラだなーと思いました。

というわけで、フジカAX-3のお話でした。
ありがとうございました。
御部スクラでした。