ASAHI PENTAX KM / SMC PENTAX 50mm F1.4 解説と作例

ASAHI PENTAX KM / SMC PENTAX 50mm F1.4 解説と作例

みなさんこんにちは。
フィルムカメラ系VTuberの御部スクラです。

今回は旭光学の一眼レフカメラ、ASAHI PENTAX KMについて話します。

ASAHI PENTAX KM 外観とスペック

ASAHI PENTAX KM 前

ASAHI PENTAX KM 前(レンズを外したところ)

ASAHI PENTAX KM 後

ASAHI PENTAX KM 天

ASAHI PENTAX KM 底部

ASAHI PENTAX KM 裏蓋をあけたところ

レンズマウント:PENTAX Kマウント
シャッター:横走り 布幕フォーカルプレーンシャッター B、1秒~1/1000秒、シンクロ速度1/60秒
巻き上げ:レバー式、1回巻き上げ(分割可能)
露出計:CdS受光素子、平均測光
カウンター:順算式、自動復元
電源:G-13酸化銀電池(SR44) x1個
使用フィルム:35mmフィルム
発売年:1975年
発売時価格:42,500円(ブラックは3000円高)
製造元:旭光学工業

※スペック出典:『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.24

ASAHI PENTAX KMについて

ASAHI PENTAX KM

PENTAX KMの発売は1975年の6月[1]『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.24
旭光学がレンズのマウントをM42マウントからKマウントに変えたとき、最初に出た3台のうちの一つですね。

そのときに出たのは、絞り優先AE機のK2、マニュアル露出の機械式でSPD受光素子と絞り直読窓がついたKX、そしてこのKM、なのですが、そのなかでも機能はいちばんシンプル、ベーシックな機能だけを備えたのがこのKMとなります。

機能解説

ではさっそく、スペックや機能について見ていきましょう。
ひとことでいうと、このPENTAX KMはいたってベーシックな35mmの一眼レフカメラです。

シャッター

シャッターは横走りのフォーカルプレーンシャッターで、バルブと1秒から1/1000秒。

横走りのフォーカルプレーンシャッター

数字のうえでも一般的ですが、カメラの構造としても、ベストセラー機種のペンタックスSPから続く構造を踏襲しています。
というかシャッター回りの構造はペンタックスSP系の機種そのものです。

また、巻き上げレバーの根本にあるフィルムカウンターもペンタックスSPそのままですよね。

フィルムカウンター

レンズマウント

このPENTAX KMから刷新されたのがレンズマウントです。
レンズマウントはKマウント。

Kマウント

2022年現在のペンタックス製デジタル一眼レフに至るまで、電気接点やAFカプラなど機能を追加しつつ受け継がれています。

露出計はPENTAX SPFゆずり

露出計は開放測光。
ねじマウントのM42マウントでは構造上開放測光が難しかったところ、旭光学はペンタックスESやSP Fでたくみに開放測光を実現したわけですが、Kマウントは当然ながら最初から開放測光を前提とした構造となっています。

ただ、このペンタックスKMは、露出計自体の性能面ではM42マウントのペンタックスSP Fのものをほぼそのまま受け継いでいます。
露出計自体は平均測光[2]『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.24
同時に発売したPENTAX KXでは当時としては新しいSPD受光素子を採用していましたが、このKMはそれまでの機種同様CdSを使用。
また、ペンタックスSP Fの特徴だったフォトスイッチによる露出計のオンオフも受け継がれています。

このフォトスイッチによるオンオフというのは、ようするにカメラ自体には明確に露出計のスイッチがなく、レンズキャップをしておけば露出計が作動しないようになっている、というものです。
これ、理屈はわかるけど不安、というカメラ好きからの意見を見たことはありますが実際どうだったんでしょうね。
今回は電池の残量が問題になるほど使わなかったので、この動画では判断がつきません。

露出計の表示自体は至って普通の定点合致式です。

定点合致式

ファインダーの右側に針で表示されます。

絞りプレビュー

あとは、機能面で目立ったところというと、これくらいベーシックなカメラではありますが、ちゃんと絞りのプレビューもついています。
マウントの脇、正面から見て左側のボタンを押し込むと絞りが絞り込まれて被写界深度が確認できます。

絞り込みボタン

ただし、ペンタックスのほかの多くの機種同様、ミラーアップはついていません。

そのほか、セルフタイマーももちろんついていますね。

電池

電池は参考文献のクラシックカメラ専科によれば、G-13、つまりSR44酸化銀電池が指定されています[3]『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.24
ただ今回はアルカリ電池のLR44を使ってしまいました。

よい意味でベーシックなカメラ

さて。

このペンタックスKMなのですが、ここまでベーシックなカメラだと話してきたように特徴がないのが特徴、といえばそうなんですよ。

ただそれは長所でもあって、それくらいシンプルなカメラでいい、という人に対してはとても訴求力があったはずです。
実際、このKMをベースにより機能を省いたPENTAX K1000は、もともと海外向けの廉価機種でしたがフルメカのシンプルなカメラが欲しいユーザーのために日本国内でも販売されるようになりましたよね[4]『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.28
実質的にはKMの再発売なわけです。
具体的には天体撮影などのユーザーに需要があったといわれていますよね。

カメラの上にシャッターダイヤルがあって、レンズの根本に絞りリングがあって、レバー巻き上げで、フルメカニカルで、というマニュアルフォーカスの一眼レフといえばこういう形! をしているカメラって、あるようでなかなかないんですよね。
とくに開放測光の露出計がついているものだと。
ペンタックスだとこのKMのほかにKX、MX。
あとはNikonのFMやNew FM2でしょうか。

とにかく普通。
普通であることが特徴。

ザ・普通のカメラこそがこのペンタックスKMなのだと思います。

案外そこまで大きくないのでは?

あと、ペンタックスKシリーズというとボディが大型化してしまった失敗作だと言われますけど、今回KMを触ってみて、じつは案外小型のカメラだと感じたんです。

最近わたしが買って使っているカメラというとNikon F、動画のネタのために撮影したカメラにはCanon FTbがありますけど、そのあたりの機種に比べるとPENTAX Kシリーズって十分に小さくて軽いんですよね。

とくに厚み方向に薄く感じます。

案外小さいのでは?

なまじOM-1やCanon AE-1と比べるから分が悪いのであって、Kシリーズ自体はよくまとまったカメラだと思います。

まあ、わたしはかつてペンタックスユーザーだったので、やっぱりペンタックスのカメラが手になじんでいるというのはあるのでしょうけどね。

SMC PENTAX 50mm F1.4

SMC PENTAX 50mm F1.4

今回取り付けているレンズはSMC PENTAX 50mm F1.4。
KMをはじめKシリーズと同時に登場した、標準レンズのフィルター径が52mmのいわゆるKレンズです(Kレンズは正式名称ではない)。

クラシックカメラ専科のNo.30によると構成は6群7枚[5]『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.55
SMCタクマーの50mm F1.4と光学系は同じだということです。

じつは、わたしが初めてジャンクではなくきちんとした中古カメラ屋さんで買ったのも、このレンズと同じSMC PENTAX 50mm F1.4だったんですよね。
それはとっくの昔に売ってしまって、いま映っているのはまったく別のものなんですけど。

なので、ヘリコイドを回したときの感触とか鏡筒の太さとか、とにかく手によく馴染む感じがあります。

ただしこの50mm F1.4はバルサム切れしています。
強い光にかざさなければいい感じに抜けているようにも見えるのですが、ライトで照らすともう完全にダメです。
1970年代以降のペンタックスのレンズは貼り合わせ面がダメになりがちですよね。

作例

ではこのペンタックスKMとSMC PENTAX 50mm F1.4の作例を見ていきましょう。

フィルムはFomapanの200で、パロディナールで現像しました。

(現像データ:Parodinal 1:50 20d 9min)

モノクロフィルム作例

はい。

まず絞って遠景からなんですが、こうして見ると、まあちゃんと写っているかな、という感じなんですよ。

モノクロフィルム作例

これも絞った遠景のカットです。

モノクロフィルム作例

バルサム切れしてはいますが、空が入っていてもまあなんとか、という感じですよね。
ペンタックスのSMCコーティングのことは個人的にも信頼しているので、ちゃんとしてるな、と思います。

ただ、カットによってはちょっとなんか怪しいな、と感じるのもあるんですよね。
なんだかちょっとボヤボヤしているな、という。

モノクロフィルム作例

このあたり、やっぱりちょっと劣化しているのは影響していると思います。

あと、絞りを開き気味で撮ったカットもいくつかありますが、うーん、なんか難しいなぁ、という感じです。

モノクロフィルム作例

こちらはネガにスリキズが入ってしまっていますがほぼ開放寄り。

モノクロフィルム作例

まあこんなものかな、という感じです。

デジタル(APS-C)作例(K30)

ちょっと趣向を変えて、APS-Cなのでクロップされていますがデジタルのカットも出していきます。
ボディはちょっと古いですがPENTAXのK30です。

まず絞っているカット。

デジタル(APS-C)作例(K30)

まあこうしてみると絞っているときは至って普通、という感じですね。

なんら問題ないと思います。

では絞り開放で撮ってみたときは、というと、こんなふうな写りをします。

デジタル(APS-C)作例(K30)

これ、レンズのもとの写りなのか、内部が曇っているのが原因なのかちょっと判然としないのですよね。

でも、こちらの落ち葉のカット、こういうのを見てもちょっとぼやーっとしてるのでもしかするとクモリのせいなのかもしれません。

デジタル(APS-C)作例(K30)

デジタル(APS-C)作例(K30)

どうしてもペンタックスのレンズ、クモリの影響が出てしまいますね。

まあ雰囲気は悪くないな、と思うのでした。

デジタル(APS-C)作例(K30)

まとめ

ということで、ASAHI PENTAX KMのお話と、SMC PENTAX 50mm F1.4の作例でした。

ぶっちゃけた話をいうと、このKMは状態が悪いんですよ。
見た目はけっこうきれいだしファインダーもクリアーなのですが、シャッターにかなりムラがあって高速側はまったくダメです。

このあたりの経年変化、レンズのクモリもそうですが、やっぱりニコンあたりに比べると弱いところなのかな、と感じたりします。

ミノルタのMF機ほどじゃないですがKマウントも決め手になるカメラがないという感じがあるので、Kマウントのレンズをどうやってフィルムで使っていくかは難しいところです。

ありがとうございました。
御部スクラでした。

脚注

脚注
1, 2, 3 『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.24
4 『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.28
5 『クラシックカメラ専科 No.30 ペンタックスのすべて』1994年、朝日ソノラマ、p.55